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第134話 矢野先輩が消えた
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矢野先輩の一大決心の告白の後、
流石に直ぐに連絡するのは
無神経だと思い、暫く間を置くことにした。
丁度入試の合格発表が10日後に控えていたので、
それを期に、その日に連絡をしてみようと思った。
10日間は凄く待ち遠しかったけど、
入試までの会えない日々を考えると、
その日は直ぐにやって来た。
僕はドキドキしながら、
矢野先輩にラインを送った。
でも先輩からの返事は来なかったと言うか、
先輩はラインを退会したようだった。
「え? まさか……」
僕は直ぐに先輩の携帯に電話をした。
「現在この電話番号は使われておりません。
ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツー………」
「え? え?」
僕は半ばパニックになり始めた。
もう一度掛けたけど、結果は同じだった。
「嘘でしょう?
先輩、また会えるって言ったよね?
僕だけ?
先輩に通じないの僕だけ?」
僕は震える手で携帯を持ち直すと、
佐々木先輩にすがるように電話を掛けた。
「よう要!
グッドタイミングだったな。
T大、合格したぞ!」
「……」
「要?」
「……」
「おい?
そこに居るのか?
どうしたんだ?」
僕は震える声で先輩に話しかけた。
「矢野先輩に……
連絡が取れない……」
「浩二か?」
「ラインも、携帯も解約されてて
連絡が取れない……
どうして?
僕だけなの?
先輩はちゃんとつながる?」
「落ち着け!」
「先輩、僕、落ち着いてなんて居られないよ!
だって、矢野先輩が……矢野先輩が……」
「お前、浩二から聞いて無いのか?」
「え?」
「浩二、留学したぞ」
「え? 僕聞いてません。
卒業式の夜に会った時も何も言われませんでした。
先輩、笑ってて…… また会えるって……
何時ものように分かれて……」
「今、家か?」
「はい、両親は仕事でいませんが、
僕は家に居ます」
「分かった、直ぐに行くから、
待ってるんだぞ?」
「先輩、早く来てくださいね。
早くですよ」
僕はそう言って携帯を切った。
僕の頭は真っ白で、
何も考えることが出来なかった。
手の震えは相変わらず止まらず、
先輩がやって来るまでが永遠のように感じられた。
玄関のインターホンが鳴り、
僕は飛びつくようにドアを開けた。
ドアを開け、佐々木先輩がそこに立っている姿を見て、
先輩に飛びついた。
「先輩、留学なんてどういうことですか?
僕、何も聞かされてないんですけど!」
「落ち着け、まずはリビングにいって座るぞ」
先輩は僕をリビングに誘い、そこに腰かけた。
「お前、本当に浩二から何も聞いて無いのか?」
佐々木先輩が先に話し始めた。
「聞いてないです……
携帯も繋がらないし、
ラインもメッセージもエラーになっちゃうし……」
「ああ、暫く戻らないからって携帯も解約するって言ってたな。
まさかラインも退会してるとはな……
俺も聞いたのは卒業式の後だったしな。
てっきりお前にも話してるもんだと思っていたよ……」
「でも…… ちゃんと先輩と同じT大受けたんですよね?
なぜ黙って僕を置いて行ってしまっんだろう?
矢野先輩、僕に隠し事はするなって言って、
どうして僕に黙っていなくなったりしたの?」
「おまえ、もう知ってるんだろう?
あいつの気持ち……」
「……」
僕は言葉なく佐々木先輩を見上げた。
「その様子じゃもう知ってるみたいだな」
そう言って先輩は大きくため息を付いた。
「察してやれよ。
もうギリギリだったんだよ」
「……え?……」
「お前も知ってると思うけど、
あいつ基本的には恋愛に関しては情熱的な奴なんだよ。
感情も素直に表現するしさ。
でもお前に関してはてこずってたみたいだな。
やっぱり最初にお前を振ったって言うのが凄い堪えてたみたいだな」
「そんな……」
「俺に相談してきたことがあったんだよ」
「相談?」
「ああ、もしかしたら自分は、
大きな間違いを犯してるんじゃないか?って……」
「間違い……?」
「ああ、多分そこらへん、もう全部浩二から聞いてるとは思うけど、
あいつ、前に俺に相談しに来たんだよ。
自分のお前に対する気持ちが分からないって……
どういう意味だ?って聞いたら、
お前の事が凄く可愛い。
凄く愛しい。
無くしたくない存在だって。
お前の事はずっと弟の様に可愛がってきたって。
あいつ、お前の事、最初は家族愛みたいに思っていたみたいだな。
でも、独占欲が出てきてさ、
まあ、俺も含めてだけど、
お前のまわりに居るやつらにお前を取られたくないって……
自分でも困惑していたみたいだった。
だから俺が指摘してやったんだよ。
それは家族愛じゃ無いって。
それは恋愛の意味だって。
それを聞いたら目から鱗が落ちた様に
すっきりとした顔してたな。
俺、お前がまだ浩二の事好きだって思ってたから、
お前に本心を告げろって言ったんだよ。
俺は正々堂々と勝負を受けて立つって。
でもな、あいつ、
お前の事を混乱させたくないって。
自分の思いは墓場まで持っていくってさ。
ま、墓場まで持っていく前に誰か現れるとは思うんだが……」
そう言って先輩は笑った。
「そうだったんですね。
僕、呑気に色々と先輩に……」
「まあ、俺はお前がまだ浩二に惚れてると思っていたし、
ああいった手前、お前が離れていく覚悟はしてたんだけどな、
お前は一向に俺から離れないし、
浩二も今までと変わらないし、
少し焦ったりしてな。
お前に会えば俺も諦められないから少し距離を置いてみたんだけど、
浩二から告げられたよ。
自分ではお前を幸せにしてあげれないって。
お前は俺に気持ちが向いてるからって」
「確かにあの頃は僕自身も凄く心が揺れていたんです。
でも、佐々木先輩を思う心が日に日に強くなっていって……」
「まあ、あいつは誰よりもお前を大切に思っていたからな。
俺から見ても、嫉妬する位にな。
もし俺が浩二の立場だったら、
周りの事なんて顧みず、お前に告って玉砕して、
お前のその後の苦悩なんて、全然考えなかったんだろなって思うよ。
あいつってさ、αのくせに凄い繊細なんだよ」
「あ、僕もそれ思った事あります。
凄くΩの感性に近いαなんだって」
「今はさ、そっとしといてやれよ。
あいつも簡単な思いでこの選択をしたんじゃないと思うから」
「ねえ先輩、
一体僕は、どう答えを出していたらよかったのだろう?
僕は間違った選択をしてしまったのでしょうか?」
「この結果は浩二が自分で選んだ結果だ。
お前が苦に悩むことは無い。
現にあいつ言ってたよ。
もしかしたら自分の運命は日本にはいないかもしれないって。
あいつらしくて、そう思ったらおかしいよな。
外国で頑張って、運命探しも一からまた頑張ってみるって。
全てを断ち切って一からやり直してみるって。
あいつも頑張ってるんだよ。
あいつの選択はお前にはつらいかもしれないけど、
自分の足で立てるようになった時、
あいつは必ずお前の前に戻って来る!
だから信じて待っていてやれ」
「そうですね、
僕が矢野先輩を信じてあげないと、
先輩も外国の地で頑張れないですよね!」
「どうだ?
少しは落ち着いたか?」
「はい、だいぶ落ち着きはしたんですが、
矢野先輩は一体どこの大学に行ったのですか?
何時日本を発ったのですか?」
「アメリカへは卒業式の次の日に発ったよ」
そんな…… じゃあ、公園で会った直ぐ後に……
「何処の大学かは詳しくは分からないけど、
アメリカで経済を学って言ってたな。
MBA取るまで戻ってこないって。
連絡できる状況にいると頑張れないから、
居場所は教えないって……
まあ、俺もあいつがそう決めたんなら、
それでも良いかって深くは聞か無かったんだよな。
そうだよな。
お前にだったら、更に言わないよな」
「先輩、僕は大丈夫です!
さっきみたいに何も分からない状態じゃないし、
僕は佐々木先輩を信じて、
先輩が一回りも、二回りも大きくなって帰って来るのを待ちます!」
そうは言ったものの、僕はトラウマにも似たような感覚で、
矢野先輩が消えた後は佐々木先輩に依存していった。
何時か、佐々木先輩も、
僕の前から消えるんじゃないかという恐怖と戦いながら、
僕はもう佐々木先輩しか見えなくなっていた。
流石に直ぐに連絡するのは
無神経だと思い、暫く間を置くことにした。
丁度入試の合格発表が10日後に控えていたので、
それを期に、その日に連絡をしてみようと思った。
10日間は凄く待ち遠しかったけど、
入試までの会えない日々を考えると、
その日は直ぐにやって来た。
僕はドキドキしながら、
矢野先輩にラインを送った。
でも先輩からの返事は来なかったと言うか、
先輩はラインを退会したようだった。
「え? まさか……」
僕は直ぐに先輩の携帯に電話をした。
「現在この電話番号は使われておりません。
ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツー………」
「え? え?」
僕は半ばパニックになり始めた。
もう一度掛けたけど、結果は同じだった。
「嘘でしょう?
先輩、また会えるって言ったよね?
僕だけ?
先輩に通じないの僕だけ?」
僕は震える手で携帯を持ち直すと、
佐々木先輩にすがるように電話を掛けた。
「よう要!
グッドタイミングだったな。
T大、合格したぞ!」
「……」
「要?」
「……」
「おい?
そこに居るのか?
どうしたんだ?」
僕は震える声で先輩に話しかけた。
「矢野先輩に……
連絡が取れない……」
「浩二か?」
「ラインも、携帯も解約されてて
連絡が取れない……
どうして?
僕だけなの?
先輩はちゃんとつながる?」
「落ち着け!」
「先輩、僕、落ち着いてなんて居られないよ!
だって、矢野先輩が……矢野先輩が……」
「お前、浩二から聞いて無いのか?」
「え?」
「浩二、留学したぞ」
「え? 僕聞いてません。
卒業式の夜に会った時も何も言われませんでした。
先輩、笑ってて…… また会えるって……
何時ものように分かれて……」
「今、家か?」
「はい、両親は仕事でいませんが、
僕は家に居ます」
「分かった、直ぐに行くから、
待ってるんだぞ?」
「先輩、早く来てくださいね。
早くですよ」
僕はそう言って携帯を切った。
僕の頭は真っ白で、
何も考えることが出来なかった。
手の震えは相変わらず止まらず、
先輩がやって来るまでが永遠のように感じられた。
玄関のインターホンが鳴り、
僕は飛びつくようにドアを開けた。
ドアを開け、佐々木先輩がそこに立っている姿を見て、
先輩に飛びついた。
「先輩、留学なんてどういうことですか?
僕、何も聞かされてないんですけど!」
「落ち着け、まずはリビングにいって座るぞ」
先輩は僕をリビングに誘い、そこに腰かけた。
「お前、本当に浩二から何も聞いて無いのか?」
佐々木先輩が先に話し始めた。
「聞いてないです……
携帯も繋がらないし、
ラインもメッセージもエラーになっちゃうし……」
「ああ、暫く戻らないからって携帯も解約するって言ってたな。
まさかラインも退会してるとはな……
俺も聞いたのは卒業式の後だったしな。
てっきりお前にも話してるもんだと思っていたよ……」
「でも…… ちゃんと先輩と同じT大受けたんですよね?
なぜ黙って僕を置いて行ってしまっんだろう?
矢野先輩、僕に隠し事はするなって言って、
どうして僕に黙っていなくなったりしたの?」
「おまえ、もう知ってるんだろう?
あいつの気持ち……」
「……」
僕は言葉なく佐々木先輩を見上げた。
「その様子じゃもう知ってるみたいだな」
そう言って先輩は大きくため息を付いた。
「察してやれよ。
もうギリギリだったんだよ」
「……え?……」
「お前も知ってると思うけど、
あいつ基本的には恋愛に関しては情熱的な奴なんだよ。
感情も素直に表現するしさ。
でもお前に関してはてこずってたみたいだな。
やっぱり最初にお前を振ったって言うのが凄い堪えてたみたいだな」
「そんな……」
「俺に相談してきたことがあったんだよ」
「相談?」
「ああ、もしかしたら自分は、
大きな間違いを犯してるんじゃないか?って……」
「間違い……?」
「ああ、多分そこらへん、もう全部浩二から聞いてるとは思うけど、
あいつ、前に俺に相談しに来たんだよ。
自分のお前に対する気持ちが分からないって……
どういう意味だ?って聞いたら、
お前の事が凄く可愛い。
凄く愛しい。
無くしたくない存在だって。
お前の事はずっと弟の様に可愛がってきたって。
あいつ、お前の事、最初は家族愛みたいに思っていたみたいだな。
でも、独占欲が出てきてさ、
まあ、俺も含めてだけど、
お前のまわりに居るやつらにお前を取られたくないって……
自分でも困惑していたみたいだった。
だから俺が指摘してやったんだよ。
それは家族愛じゃ無いって。
それは恋愛の意味だって。
それを聞いたら目から鱗が落ちた様に
すっきりとした顔してたな。
俺、お前がまだ浩二の事好きだって思ってたから、
お前に本心を告げろって言ったんだよ。
俺は正々堂々と勝負を受けて立つって。
でもな、あいつ、
お前の事を混乱させたくないって。
自分の思いは墓場まで持っていくってさ。
ま、墓場まで持っていく前に誰か現れるとは思うんだが……」
そう言って先輩は笑った。
「そうだったんですね。
僕、呑気に色々と先輩に……」
「まあ、俺はお前がまだ浩二に惚れてると思っていたし、
ああいった手前、お前が離れていく覚悟はしてたんだけどな、
お前は一向に俺から離れないし、
浩二も今までと変わらないし、
少し焦ったりしてな。
お前に会えば俺も諦められないから少し距離を置いてみたんだけど、
浩二から告げられたよ。
自分ではお前を幸せにしてあげれないって。
お前は俺に気持ちが向いてるからって」
「確かにあの頃は僕自身も凄く心が揺れていたんです。
でも、佐々木先輩を思う心が日に日に強くなっていって……」
「まあ、あいつは誰よりもお前を大切に思っていたからな。
俺から見ても、嫉妬する位にな。
もし俺が浩二の立場だったら、
周りの事なんて顧みず、お前に告って玉砕して、
お前のその後の苦悩なんて、全然考えなかったんだろなって思うよ。
あいつってさ、αのくせに凄い繊細なんだよ」
「あ、僕もそれ思った事あります。
凄くΩの感性に近いαなんだって」
「今はさ、そっとしといてやれよ。
あいつも簡単な思いでこの選択をしたんじゃないと思うから」
「ねえ先輩、
一体僕は、どう答えを出していたらよかったのだろう?
僕は間違った選択をしてしまったのでしょうか?」
「この結果は浩二が自分で選んだ結果だ。
お前が苦に悩むことは無い。
現にあいつ言ってたよ。
もしかしたら自分の運命は日本にはいないかもしれないって。
あいつらしくて、そう思ったらおかしいよな。
外国で頑張って、運命探しも一からまた頑張ってみるって。
全てを断ち切って一からやり直してみるって。
あいつも頑張ってるんだよ。
あいつの選択はお前にはつらいかもしれないけど、
自分の足で立てるようになった時、
あいつは必ずお前の前に戻って来る!
だから信じて待っていてやれ」
「そうですね、
僕が矢野先輩を信じてあげないと、
先輩も外国の地で頑張れないですよね!」
「どうだ?
少しは落ち着いたか?」
「はい、だいぶ落ち着きはしたんですが、
矢野先輩は一体どこの大学に行ったのですか?
何時日本を発ったのですか?」
「アメリカへは卒業式の次の日に発ったよ」
そんな…… じゃあ、公園で会った直ぐ後に……
「何処の大学かは詳しくは分からないけど、
アメリカで経済を学って言ってたな。
MBA取るまで戻ってこないって。
連絡できる状況にいると頑張れないから、
居場所は教えないって……
まあ、俺もあいつがそう決めたんなら、
それでも良いかって深くは聞か無かったんだよな。
そうだよな。
お前にだったら、更に言わないよな」
「先輩、僕は大丈夫です!
さっきみたいに何も分からない状態じゃないし、
僕は佐々木先輩を信じて、
先輩が一回りも、二回りも大きくなって帰って来るのを待ちます!」
そうは言ったものの、僕はトラウマにも似たような感覚で、
矢野先輩が消えた後は佐々木先輩に依存していった。
何時か、佐々木先輩も、
僕の前から消えるんじゃないかという恐怖と戦いながら、
僕はもう佐々木先輩しか見えなくなっていた。
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