72 / 201
第72話 青木君の呼び出し
しおりを挟む
僕は少し後ろめたい気がして、
サッと視線をそらした。
その後僕は、何だか怖くて
佐々木先輩の方を
振り向く事が出来なかった。
今度は佐々木先輩の事で
頭がグルグルとしていると、
“パーン!”
というピストル音と共に、
びっくりとして気を取り戻すと、
既に第1部の文化部のリレーが始まっていた。
何とか気を取り戻して
チラッと佐々木先輩の
立っていた方を向くと、
もうそこに佐々木先輩は居なかった。
リレーの走者はあっという間に
アンカーになり、
美術部は3位で矢野先輩にバトンが渡った。
僕は、矢野先輩を一所懸命に応援した。
やはり先輩は早かった。
2位とはそこまで差は無かったものの、
大幅に差をつけていた一位の軽音部に追いつき、
あっという間に追い越してしまった。
そして父兄応援席から、
大胆にも大声でハンカチを振り回し、
応援するお父さんの姿が見えた。
それは余りにも目立ったため、
僕の周りで、文化部の応援をしていた
人達の間から、
「あれ誰?」
「誰かの父兄?」
「なんか矢野先輩を応援して無かった?」
「矢野先輩のお父さんじゃ……
無いよね?」
「美術部関係?」
「それにしても変な親父だな」
等の声が上がり始めた。
僕は少し恥ずかしくなり始めて、
他人の振りをしようと決め込んだ。
でもそこに、一番でゴールをした矢野先輩が、
ゴール傍に立つお父さん目掛けて走り出し、
お父さんに抱き着いた。
僕はヒ~と思いながらも、
先輩とお父さんて
本当に気が合うんだな~
と言う様なことを考えていた。
そして肩を組んだ二人が
その後生徒皆に向かって大手を振ったことは、
僕は見なかった事にした。
美術部のリレーが終わり、
僕が生徒の応援席に戻ろうとした時に、
青木君が僕を呼びに来た。
付いて来いという青木君を先頭に、
僕は青木君の後を付いて行った。
そこは出番を待つ運動部のグループで、
青木君が僕を誘導したところは、
佐々木先輩の待つ、リレー選手の控場だった。
佐々木先輩の顔を見た途端、
僕は泣きそうな気持になった。
僕と佐々木先輩と青木君は、
少し皆から離れたところで少し話をした。
「俺、カモフラ~ジュ!」
そう言って青木君が右手を挙げた。
僕が、
「???」
と言う様な顔をしていると、
「まあ、三人で話しているようにみえるだろ?」
という先輩に、“なるほど!” と思った。
そう思って、
「えっ?!」
と声を上げてしまった。
青木君はちょっと気不味そうに、
「あ~いや、先輩と要の事、聞いたよ」
と言った。
「俺がどうしても、出てこれないところがあるから、
誰か見方が居た方が良いと思ってな。
幸い青木とは中良さそうだし、
言っても良いかな?と思ってさ。
浩二を味方につけるのはちょっと癪だったし」
先輩はそう言って少し照れた。
僕は少し呆気に取られていたけど。
「ま、そう言う事だよ!」
と青木君が僕の肩をポンと叩いた。
確かに僕達三人が話をしてるのは、
何の特別な事情ではない様に見えるだろう。
僕は先輩の計らいに感謝しながらも、
やはり、さっきの事は少し先輩に対して
後ろめたい気持ちがあった。
「心配するな。
浩二とは一度腹を括って
話さなきゃとは思っていたんだ。
いい機会だよ」
そう先輩が言った。
「あの……
実は……」
僕がそう言った時、
先輩の顔色が変わった。
先輩の顔色を見て僕は慌てて、
「いえ、違うんです。
先輩と別れようとは思っていません。
実を言うと、矢野先輩には僕から
佐々木先輩と付き合っていると言ったんです!」
と話した。
先輩は僕を見て、凄く嬉しそうに、
「自分から言ったのか?
大丈夫だったのか?
何か言われたか?」
「何かって言うと?」
「例えば、やめておけとか……
祝福するとか……?」
「そう言えば、矢野先輩、
ちょっと不審な感じでした。
どう言ったら良いか
分からないんですけど、
ちょっと説明し難い感じで……
少し変でした」
先輩は何か少し考えたようにして、
「今は時間が無いから、
今夜電話する。
浩二とも話さないといけないし、
お前が俺たちの事
既にばらしたんだったら、
話は早いな。
後は俺に任せておけ」
佐々木先輩がそう言うので、
僕はお願いしますとお辞儀をして、
自分の応援席に戻って行った。
そしてそんな僕達を、
アーチェリー部の
リレー選手の中に居た長瀬先輩が、
すっと伺っていたらしく、
通りすがり、
ずっと僕の事を疑惑の目で追っていた。
サッと視線をそらした。
その後僕は、何だか怖くて
佐々木先輩の方を
振り向く事が出来なかった。
今度は佐々木先輩の事で
頭がグルグルとしていると、
“パーン!”
というピストル音と共に、
びっくりとして気を取り戻すと、
既に第1部の文化部のリレーが始まっていた。
何とか気を取り戻して
チラッと佐々木先輩の
立っていた方を向くと、
もうそこに佐々木先輩は居なかった。
リレーの走者はあっという間に
アンカーになり、
美術部は3位で矢野先輩にバトンが渡った。
僕は、矢野先輩を一所懸命に応援した。
やはり先輩は早かった。
2位とはそこまで差は無かったものの、
大幅に差をつけていた一位の軽音部に追いつき、
あっという間に追い越してしまった。
そして父兄応援席から、
大胆にも大声でハンカチを振り回し、
応援するお父さんの姿が見えた。
それは余りにも目立ったため、
僕の周りで、文化部の応援をしていた
人達の間から、
「あれ誰?」
「誰かの父兄?」
「なんか矢野先輩を応援して無かった?」
「矢野先輩のお父さんじゃ……
無いよね?」
「美術部関係?」
「それにしても変な親父だな」
等の声が上がり始めた。
僕は少し恥ずかしくなり始めて、
他人の振りをしようと決め込んだ。
でもそこに、一番でゴールをした矢野先輩が、
ゴール傍に立つお父さん目掛けて走り出し、
お父さんに抱き着いた。
僕はヒ~と思いながらも、
先輩とお父さんて
本当に気が合うんだな~
と言う様なことを考えていた。
そして肩を組んだ二人が
その後生徒皆に向かって大手を振ったことは、
僕は見なかった事にした。
美術部のリレーが終わり、
僕が生徒の応援席に戻ろうとした時に、
青木君が僕を呼びに来た。
付いて来いという青木君を先頭に、
僕は青木君の後を付いて行った。
そこは出番を待つ運動部のグループで、
青木君が僕を誘導したところは、
佐々木先輩の待つ、リレー選手の控場だった。
佐々木先輩の顔を見た途端、
僕は泣きそうな気持になった。
僕と佐々木先輩と青木君は、
少し皆から離れたところで少し話をした。
「俺、カモフラ~ジュ!」
そう言って青木君が右手を挙げた。
僕が、
「???」
と言う様な顔をしていると、
「まあ、三人で話しているようにみえるだろ?」
という先輩に、“なるほど!” と思った。
そう思って、
「えっ?!」
と声を上げてしまった。
青木君はちょっと気不味そうに、
「あ~いや、先輩と要の事、聞いたよ」
と言った。
「俺がどうしても、出てこれないところがあるから、
誰か見方が居た方が良いと思ってな。
幸い青木とは中良さそうだし、
言っても良いかな?と思ってさ。
浩二を味方につけるのはちょっと癪だったし」
先輩はそう言って少し照れた。
僕は少し呆気に取られていたけど。
「ま、そう言う事だよ!」
と青木君が僕の肩をポンと叩いた。
確かに僕達三人が話をしてるのは、
何の特別な事情ではない様に見えるだろう。
僕は先輩の計らいに感謝しながらも、
やはり、さっきの事は少し先輩に対して
後ろめたい気持ちがあった。
「心配するな。
浩二とは一度腹を括って
話さなきゃとは思っていたんだ。
いい機会だよ」
そう先輩が言った。
「あの……
実は……」
僕がそう言った時、
先輩の顔色が変わった。
先輩の顔色を見て僕は慌てて、
「いえ、違うんです。
先輩と別れようとは思っていません。
実を言うと、矢野先輩には僕から
佐々木先輩と付き合っていると言ったんです!」
と話した。
先輩は僕を見て、凄く嬉しそうに、
「自分から言ったのか?
大丈夫だったのか?
何か言われたか?」
「何かって言うと?」
「例えば、やめておけとか……
祝福するとか……?」
「そう言えば、矢野先輩、
ちょっと不審な感じでした。
どう言ったら良いか
分からないんですけど、
ちょっと説明し難い感じで……
少し変でした」
先輩は何か少し考えたようにして、
「今は時間が無いから、
今夜電話する。
浩二とも話さないといけないし、
お前が俺たちの事
既にばらしたんだったら、
話は早いな。
後は俺に任せておけ」
佐々木先輩がそう言うので、
僕はお願いしますとお辞儀をして、
自分の応援席に戻って行った。
そしてそんな僕達を、
アーチェリー部の
リレー選手の中に居た長瀬先輩が、
すっと伺っていたらしく、
通りすがり、
ずっと僕の事を疑惑の目で追っていた。
0
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
闇を照らす愛
モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。
与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。
どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。
抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。
Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
君がいないと
夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人
大学生『三上蓮』は同棲中の恋人『瀬野晶』がいても女の子との浮気を繰り返していた。
浮気を黙認する晶にいつしか隠す気もなくなり、その日も晶の目の前でセフレとホテルへ……
それでも笑顔でおかえりと迎える晶に謝ることもなく眠った蓮
翌朝彼のもとに残っていたのは、一通の手紙とーーー
* * * * *
こちらは【恋をしたから終わりにしよう】の姉妹作です。
似通ったキャラ設定で2つの話を思い付いたので……笑
なんとなく(?)似てるけど別のお話として読んで頂ければと思います^ ^
2020.05.29
完結しました!
読んでくださった皆さま、反応くださった皆さま
本当にありがとうございます^ ^
2020.06.27
『SS・ふたりの世界』追加
Twitter↓
@rurunovel
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる