33 / 201
第33話 和解
しおりを挟む
佐々木先輩と話した後の、部室への足取りは嘘のように軽かった。
僕の気持ちも、少し前までのモヤモヤは消え、いつの間にかすっきりとしていた。
何時ものように渡り廊下を通りかかったところで、奥野さんとかち合った。
「赤城君、大丈夫?さっき、矢野先輩が赤城君を尋ねて教室まで来たよ。」
「え?矢野先輩が?」
「うん、なんか血相変えて教室に飛び込んできたんだけど、先輩には会えたの?なにか部で問題でも?」と、奥野さんは心配そうに聞いてきた。
僕は首を左右に振って、
「いや、ちょっと先輩と意見の食い違いがあって…でも大丈夫だよ。」と彼女に伝えた。
「本当に大丈夫?ほら、もう教室には誰も居ないから、カバン持ってきたよ。」
そう言って、奥野さんは僕にカバンを渡してくれた。
「あ、もうそんな時間だったんだね。僕、部室によって、まだ先輩が居るか確認してから帰るよ。ありがとう。」
そう言って彼女からカバンを受け取った。
そっか~先輩、あの後僕を見つけに来てくれたんだ~
そう思うと、なんだか心が温かくなった。
やっぱり先輩は先輩のままなんだな。
僕の好きなったのが先輩で本当によっかた!
そう思いながら、旧校舎の階段を3階へと上って行った。
部室までくると、部室のドアは開いたままになっていた。
僕は、ドアの端からそっと顔を覗かせて中を伺った。
そこには、矢野先輩が哀愁を背負ったような後姿をドアの方にさらけ出して座っていた。
僕は少し緊張したけど、スウっと息を深く吸って、静かに吐き、そ~っと先輩の背後に入った。
先輩は考え事をしているのか、僕が近ずいた事にも気付かなかった。
そこで僕は、ありったけの声を出して、「ワッ!」と先輩の肩を叩いたら、
先輩はビクッとして、一瞬椅子から飛び上がったようにして僕の方を向いた。
「先輩、びっくりしました?」そう言うや否や、
「要君、要君、」
先輩は僕の名を立て続けに呼び、僕にしっかりと抱きついてきた。
「先輩~そんなにギュッとしたら痛いですってば~」
と言うと、先輩は泣きそうな声で、
「君が戻って来てくれて良かったよ。もう、口も利いてくれないんじゃないかって、凄く心配したんだ。」と言った。
僕はその言葉を聞きながら、
良かった。
心配していたのは僕だけじゃ無かったんだ。
先輩だって、僕と同じ気持ちだったんだ、と思った。
先輩は僕の両手を取って、
「ここに座って。」
と自分の座っていた椅子の前に僕を座るよう促した。
そして暫くお互いを見合っていたけど、僕が先に、
「あの、先輩…僕…」
と言いかけると、
「シッ」と指を口に当て、
「僕に先に言わせて。」と先輩は言った。
そして、更に僕の手をギュッと握って、
「ずっと要君の気持ちに気付かなくてごめん。凄く傷つけていたんだね。」と、苦しそうに言った。
僕は首を左右に振って、
「気付かなくて当たり前です。僕こそあんな風に告白してすみません。」と答えた。
「要君は悪くないよ。それより僕が色んな事、要君の前で言ったり、やったりして、凄く無神経だったと思う。」
「そんな、先輩は無神経なんかじゃありません。ずっと僕の事を思って、ずっと守ってくれていました。
約束だってちゃんと守ってくれてましたし。僕の方こそ、お礼を言わなくてはいけない立場なのに…」と言うと、
「僕は見返りを求めて、要君と接していたわけじゃないよ。」と先輩が答えた。
「先輩、心配しないで下さい。そこは分かっています。」と僕が答えると、少し沈黙が続いた。
「うん、…可愛いんだ。」と先輩が切り出したので、
僕が「えっ?」と聞き返すと、
「要君の事が凄く可愛いんだ。凄く愛おしいと思う…」と先輩が言ってくれた。
「でもそれって…」
「うん、本当の弟の様に可愛くて、可愛くて、仕方ないんだ。要君の事、ほっとけないんだ。」
「先輩、分かってます。僕の気持と、先輩の気持ちは違うって事ですよね。」そう僕が尋ねると、
先輩はコクンと頷いて、
「要君の気持ちはびっくりしたけど、凄く嬉しかった。本当にうれしかったんだよ。」と言ってくれた。
そして暫く先輩は黙り込んだ後、
「でも、要君の気持には答えられないからと言って、僕から離れないで欲しい。
本当に君が大切なんだ!」と言ってくれた。
それだけで、僕は満足だった。
「僕は先輩から離れたりしません!でも…あの…直ぐに諦めるとかは無理なので、先輩を好きなままでいる事は許してもらえますか?」と精一杯のお願いをした。
「そんな許すとか、許さないとか、僕も、要君にとって、無神経な態度を取ったりすることもあると思うから、もし、知らずにそう言うシチュエーションになってしまったら、許して欲しい。」
「先輩、これは僕の我がままでお願いしてる事なので、先輩は気にしないで下さい!もし僕に好きな人が出来たら、先輩に一番にこっそり教えちゃいます!」と強がりを見せると、
「ハハハ、ありがとう。要君にそう言ってもらえて、僕も嬉しいよ。」と先輩が言ってくれたので、僕はとても救われた気持ちになった。
先輩の答えは恐らくわかっていたけど、僕は一つだけ先輩に質問した。
「先輩…一つだけ聞いても良いですか?」
「何だい?」
「先輩って今、好きな人…いるんですか?」
先輩はギョッとしたようにして僕を見て、
「…いるよ。」と教えてくれた。
そして僕はそれに、
「ありがとうございました。」と答えた。
僕の気持ちも、少し前までのモヤモヤは消え、いつの間にかすっきりとしていた。
何時ものように渡り廊下を通りかかったところで、奥野さんとかち合った。
「赤城君、大丈夫?さっき、矢野先輩が赤城君を尋ねて教室まで来たよ。」
「え?矢野先輩が?」
「うん、なんか血相変えて教室に飛び込んできたんだけど、先輩には会えたの?なにか部で問題でも?」と、奥野さんは心配そうに聞いてきた。
僕は首を左右に振って、
「いや、ちょっと先輩と意見の食い違いがあって…でも大丈夫だよ。」と彼女に伝えた。
「本当に大丈夫?ほら、もう教室には誰も居ないから、カバン持ってきたよ。」
そう言って、奥野さんは僕にカバンを渡してくれた。
「あ、もうそんな時間だったんだね。僕、部室によって、まだ先輩が居るか確認してから帰るよ。ありがとう。」
そう言って彼女からカバンを受け取った。
そっか~先輩、あの後僕を見つけに来てくれたんだ~
そう思うと、なんだか心が温かくなった。
やっぱり先輩は先輩のままなんだな。
僕の好きなったのが先輩で本当によっかた!
そう思いながら、旧校舎の階段を3階へと上って行った。
部室までくると、部室のドアは開いたままになっていた。
僕は、ドアの端からそっと顔を覗かせて中を伺った。
そこには、矢野先輩が哀愁を背負ったような後姿をドアの方にさらけ出して座っていた。
僕は少し緊張したけど、スウっと息を深く吸って、静かに吐き、そ~っと先輩の背後に入った。
先輩は考え事をしているのか、僕が近ずいた事にも気付かなかった。
そこで僕は、ありったけの声を出して、「ワッ!」と先輩の肩を叩いたら、
先輩はビクッとして、一瞬椅子から飛び上がったようにして僕の方を向いた。
「先輩、びっくりしました?」そう言うや否や、
「要君、要君、」
先輩は僕の名を立て続けに呼び、僕にしっかりと抱きついてきた。
「先輩~そんなにギュッとしたら痛いですってば~」
と言うと、先輩は泣きそうな声で、
「君が戻って来てくれて良かったよ。もう、口も利いてくれないんじゃないかって、凄く心配したんだ。」と言った。
僕はその言葉を聞きながら、
良かった。
心配していたのは僕だけじゃ無かったんだ。
先輩だって、僕と同じ気持ちだったんだ、と思った。
先輩は僕の両手を取って、
「ここに座って。」
と自分の座っていた椅子の前に僕を座るよう促した。
そして暫くお互いを見合っていたけど、僕が先に、
「あの、先輩…僕…」
と言いかけると、
「シッ」と指を口に当て、
「僕に先に言わせて。」と先輩は言った。
そして、更に僕の手をギュッと握って、
「ずっと要君の気持ちに気付かなくてごめん。凄く傷つけていたんだね。」と、苦しそうに言った。
僕は首を左右に振って、
「気付かなくて当たり前です。僕こそあんな風に告白してすみません。」と答えた。
「要君は悪くないよ。それより僕が色んな事、要君の前で言ったり、やったりして、凄く無神経だったと思う。」
「そんな、先輩は無神経なんかじゃありません。ずっと僕の事を思って、ずっと守ってくれていました。
約束だってちゃんと守ってくれてましたし。僕の方こそ、お礼を言わなくてはいけない立場なのに…」と言うと、
「僕は見返りを求めて、要君と接していたわけじゃないよ。」と先輩が答えた。
「先輩、心配しないで下さい。そこは分かっています。」と僕が答えると、少し沈黙が続いた。
「うん、…可愛いんだ。」と先輩が切り出したので、
僕が「えっ?」と聞き返すと、
「要君の事が凄く可愛いんだ。凄く愛おしいと思う…」と先輩が言ってくれた。
「でもそれって…」
「うん、本当の弟の様に可愛くて、可愛くて、仕方ないんだ。要君の事、ほっとけないんだ。」
「先輩、分かってます。僕の気持と、先輩の気持ちは違うって事ですよね。」そう僕が尋ねると、
先輩はコクンと頷いて、
「要君の気持ちはびっくりしたけど、凄く嬉しかった。本当にうれしかったんだよ。」と言ってくれた。
そして暫く先輩は黙り込んだ後、
「でも、要君の気持には答えられないからと言って、僕から離れないで欲しい。
本当に君が大切なんだ!」と言ってくれた。
それだけで、僕は満足だった。
「僕は先輩から離れたりしません!でも…あの…直ぐに諦めるとかは無理なので、先輩を好きなままでいる事は許してもらえますか?」と精一杯のお願いをした。
「そんな許すとか、許さないとか、僕も、要君にとって、無神経な態度を取ったりすることもあると思うから、もし、知らずにそう言うシチュエーションになってしまったら、許して欲しい。」
「先輩、これは僕の我がままでお願いしてる事なので、先輩は気にしないで下さい!もし僕に好きな人が出来たら、先輩に一番にこっそり教えちゃいます!」と強がりを見せると、
「ハハハ、ありがとう。要君にそう言ってもらえて、僕も嬉しいよ。」と先輩が言ってくれたので、僕はとても救われた気持ちになった。
先輩の答えは恐らくわかっていたけど、僕は一つだけ先輩に質問した。
「先輩…一つだけ聞いても良いですか?」
「何だい?」
「先輩って今、好きな人…いるんですか?」
先輩はギョッとしたようにして僕を見て、
「…いるよ。」と教えてくれた。
そして僕はそれに、
「ありがとうございました。」と答えた。
0
お気に入りに追加
136
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
闇を照らす愛
モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。
与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。
どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。
抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
記憶喪失の君と…
R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。
ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。
順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…!
ハッピーエンド保証
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる