セピア色の秘め事

樹木緑

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第28話 兄弟愛

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仁は凄く勘が良いのか頭が良いのか、
僕の状況をいち早く把握した。

「そんなにビックリするなよ」

そう言って胸の前で腕を組んだ。

「え? だって……

どうして……」

少し狼狽えたようにしていると、

「俺達の家系も似た様なもんでさ、
素性調査なんかは日常茶飯事なんだよ」

そう言う仁の方を

“え?”

と言う様な顔をして覗き込んだ。

「ほら、さ?

ボディーガードが付くような
天才科学者を兄に持つとなれば、
トムは愚かその弟である、
サムの周りにいる人物の身辺調査は当たり前の事だろ?」

確かに仁の言う事も最もだ。

「トムがお前の事を弟と呼んだ時にピンと来たよ。

きっと普通では無い家庭の事情が有るんだろうなって……

それに昨夜の強盗といい、
きっとお前が何かトムの研究に繋がるものを持ってるか
家探しされたんじゃ無いのか?

取り敢えずお前はトムに比べると狙い易そうだしな……」

そう言われ、
僕は真っ赤になりながら

「それってどう言う意味?

僕が弱っちいって事?」

そう言い返すと、
仁は鼻で笑いながら、

「まあそんなキィキィするなよ。

取り敢えずは、俺に取っては、
パズルのピースがチョット繋がったってところかな?」

そう言った後、
指を顎に付けて少し考え込むと、

「一つ分からないのが、
何故研究とは関係ないジュンの写真が盗まれたかなんだよな……」

そう言って仁は難しい顔をした。

そう仁に言われ、
僕も確かにそうだと思った。

恐らくこの家探しは僕の研究に関係しているだろうけど、
ジュンの写真は僕の研究とは全然関係無い。

僕は仁の顔を見上げた。

「ねえ、こんな状況に巻き込まれて怖くないの?

夕べの強盗といい、
それと示し合わせたようにやって来たトムといい、
何かが起こっているって思わないの?」

僕のそんな質問に仁は肩をすくめたようなジェスチャーをすると、

「サムのいる状況がどんなものかまだしっかりと把握したわけじゃないけど、
俺のいる立場も足の引っ張り合いだからな。

まあ、昔のお家騒動のように
親や兄弟同士で天下取り合戦ってのは無いけど、
裏の世界とのつながりも無いって訳じゃないからな」

そう言うと、トムの方を向いて、

「俺たちの事はもう調べ尽してるんだろ?

そろそろ君の自己紹介をしてくれるかな?」

もう一度そう尋ねた。

「お前は中々気骨な奴だな。

俺の名はトーマス・ディキンズ。

もうわかっていると思うが、そこに居るサムの兄だ。

それにお前が言う様に大切な弟を守るのは俺の仕事だ。

何処の馬の骨とも分からない輩に
可愛い弟の周りをウロチョロしてもらうわけにはいかない」

トムがそう言うと、

「まあ、ブラコンとまでは言わないが、
兄弟のいない俺には羨ましい兄弟愛だよ」

そう言って仁は僕の方をチラッと見た。

恥ずかしい。
兄達の弟愛は嬉しいけど、
こんな年になってまで
兄達に手を引かれている様を仁に見られたのはとても恥ずかしかった。

僕が少しギクシャクしていると、
トムの方はもう会話を先に進めていて、

「我々は、お前は弟を任せるに足る人間だと判断した。

何かあった時はサムをよろしく頼む」

そう言って右手を仁に差し出した。

僕の事に限っては、
周りにいる人を直ぐに信用しないトムが
仁を最も簡単に信用した事にはびっくりだった。

二人はがっしりと手を取り合って握手し合わすと、
僕が気付いた時には時遅く、
グイッと仁の腕を引っ張って自分の方に引き寄せた。

それは僕の

“あっ!”

と言う言葉も出ない速さで起こったので、
僕は手も足も出ずそこに金縛りにあったように立ち尽くし、
仁がトムの方へ引き寄せられるのをスローモーションのように見ていた。

トムは僕のそんな心を分かってか、
僕の方をチラッと見て不敵に微笑むと、
仁の耳に顔を寄せて耳元で何か囁いた。

仁はそれを真剣に聴くと、
トムの方を向いて、相槌を打った。
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