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第41話 佐々木君2
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「すまん、待ったか?」
10分遅れで佐々木君がやってきた。
やっばりDNAなのか、
汗をかきながら慌ててやって来る姿も様になっている。
間違える程では無いけど、
でも良く見ればやっぱり矢野君に似ている。
僕はあの夏の日以外の矢野君をあまり知らない。
こんなに仲の良い従兄弟がいる事も知らなかった。
僕は佐々木君を見上げると、
「いいえ、僕もさっき来たとこです。
どうぞ座って下さい」
と手を差し出した。
「ありがとう。夕飯未だだろ?
好きな物注文しろよ。
今日は俺の奢りだ」
そう言って座るなり佐々木君が手をあげてウエイトレスを呼んだ。
「此処のパスタは結構いけるんだぞ。
試して見るか?」
「はい、それでは僕もそれで……」
そう返事をすると、
彼はミートソースを二つ頼んだ。
“矢野君の事だってのはわかるけど、
一体どんな用事で彼は僕を呼んだんだろう?
それに彼は何処まで僕達の事を知ってる?“
僕は少し緊張して佐々木君が話し出すのを待った。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ?
俺らタメだし、敬語なんかも要らないからな」
「え? 同じ歳なの?」
とビックリして尋ねると、
「まあ、少なくともお前が光と同じ歳であればの話だがな。
なんだ? 俺ってそんな老けて見えるか?」
「ううん、凄く落ち着いてて大人っぽいから年上かなって……」
「ハハ、まあ、手の掛かる従兄弟を持つとな?」
そう言って佐々木君がフッと息を吐いた。
「ねえ、佐々木君は矢野家の人なの?」
僕が彼らのプライバシーに切り込んだ。
彼らの家系はプライバシーに立ち入られる事を嫌う様だから
”教えてくれるかな?“
と思ったけど聞いてみた。
「先ずは確認させてくれ。
お前が光の言っていた現恋人の長谷川陽向なんだよな?」
僕は彼の目を見て、
「少なくとも僕はそう思っている」
と答えた。
「分かった。
お前の事は光から定期的に聞いてたよ。
好きな人が出来たってな。
ハッキリ言って俺は反対したんだ」
そう彼が言った時に心がズキンと傷んだ。
「別に誤解しないでくれ。
相手がお前だからと言うわけでは無い」
そう言われ、
「うん、分かってるよ」
そう返したけど、
心はズキズキと痛んでいた。
「でも光の信じた人を俺も信じたい」
「佐々木君は矢野君の事が大切なんだね」
僕がそう言うと、
彼は何かを瞑想すようにして、
「アイツは俺の半身だからな」
と言った言葉に少しドキッとした。
“もしかして禁断の二人?”
ぼくが不安そうに彼を見上げると、
「心配するな。
俺たちの関係はそんな甘い様なんじゃ無く、
家族愛に近い物だ」
そう言われ、フ~っと息を吐いた。
その後彼はフランクに僕の質問に答えてくれた。
「俺たちの関係なんだが、
アイツの高祖母が佐々木の出なんだ。
で、俺の曽祖父と兄弟な」
「えっ? じゃあ等親で言ったら一つ違うよね?
彼らは年が離れてたの?」
「そうだな、俺の曽祖父はどちらかと言うと、
光の大叔母に年が近かったんだよ。
だから結構交流もあって」
「それって一花大叔母さんの事だよね?」
僕がそう言うと、
「あいつ、そこまで話したのか?!」
とビックリした様にして僕を見た。
「うん、一花大叔母さんの事、
たくさん話してくれたよ。
矢野君がどんなに彼女の事を特別に思っていたかとか……
彼女の小さい時の写真まで見せて貰ったんだよ。
凄くお人形さんみたいに可愛くて、
花冠が似合って……」
「そうだな、俺たち良く彼女の所に入り浸って居たんだよ。
彼女は何時も花に囲まれてて……
一花大叔母さんは良く彼女の両親の話をしてくれたんだよ。
俺にとっても彼らの話は凄く興味のある事柄だった」
「うん、聞いてる。
矢野君は彼女に人愛する事を学んだって言ってた」
「じゃあ、あの場所も知ってるのか?」
「もしかしてホテルサンシャインの近くにある秘境?」
僕がそう言うと、
「秘境?」
と佐々木君はビックリした様に聞き返した。
「うん、何だか秘境の地みたいで僕はそう呼んでいたんだよ~
あそこは凄いよね。
何だかパワースポットみたいだし、
湖の色なんかも目が覚める様で……
神様が住んでいそうな所だよね」
ぼくがそう言うと、
佐々木君が目を見開いて
「あ~ 確かに言われればそうだよな。
俺らは小さい時から行ってたからあまり意識した事無かったな」
と呟いた。
僕は
“うん、うん”
と頷いて、
「矢野君も同じ事言ってたよ」
そう言ったら、
「じゃあさ、光の過去の恋人の事は?」
と聞いてきた。
「うん、聞いてるよ。
とても愛した人がいたけど
彼は矢野君のお金目的で近寄ってきてただけだって……
矢野君、僕と会ったばかりの頃は
毎夜うなされてたんだよ……」
そう言うと、
「そうだな。
アイツの悪夢は幾らセラピーを受けても、
中々改善されなかったんだよ。
でもうなされ無くなったって聞いたけど、
お前が原因だろ?」
そう言われ、
「それだったら嬉しいんだけど……」
と答えた。
おこがましかったけど、
僕は本当にあの時は矢野君の力になりたかった。
僕が本当に矢野君の助けになっていたのであれば凄く嬉しい。
「矢野君って本当に何でも君に話してたんだね」
そう言うと、
「まあ、全てが全てがじゃ無いいだがな。
アイツもホラら、頑固だからさ」
彼がそう言ったので、僕はプッと吹き出して
「ホントに!」
と笑った。
「じゃあ、光が不能になった理由は聞いてるのか?」
と来たので、
”え?“
と思った。
そう言えば、これ!と言った理由は話して無いかもしれない。
僕が勝手にこれだ!と思い込んでいた節はある。
「それって恋愛に敗れて、そのショックでじゃないの?」
そう尋ねると佐々木君は首を振って、
「いや、違う。
たしかに騙されて酷い仕打ちを受けたのはトラウマになったけど、
光の不能の基本的な原因はそうじゃ無いんだ……
じゃあそこは話してはいないって事なんだな」
そう言って佐々木君は頭を抱えた。
10分遅れで佐々木君がやってきた。
やっばりDNAなのか、
汗をかきながら慌ててやって来る姿も様になっている。
間違える程では無いけど、
でも良く見ればやっぱり矢野君に似ている。
僕はあの夏の日以外の矢野君をあまり知らない。
こんなに仲の良い従兄弟がいる事も知らなかった。
僕は佐々木君を見上げると、
「いいえ、僕もさっき来たとこです。
どうぞ座って下さい」
と手を差し出した。
「ありがとう。夕飯未だだろ?
好きな物注文しろよ。
今日は俺の奢りだ」
そう言って座るなり佐々木君が手をあげてウエイトレスを呼んだ。
「此処のパスタは結構いけるんだぞ。
試して見るか?」
「はい、それでは僕もそれで……」
そう返事をすると、
彼はミートソースを二つ頼んだ。
“矢野君の事だってのはわかるけど、
一体どんな用事で彼は僕を呼んだんだろう?
それに彼は何処まで僕達の事を知ってる?“
僕は少し緊張して佐々木君が話し出すのを待った。
「そんなに緊張しなくてもいいぞ?
俺らタメだし、敬語なんかも要らないからな」
「え? 同じ歳なの?」
とビックリして尋ねると、
「まあ、少なくともお前が光と同じ歳であればの話だがな。
なんだ? 俺ってそんな老けて見えるか?」
「ううん、凄く落ち着いてて大人っぽいから年上かなって……」
「ハハ、まあ、手の掛かる従兄弟を持つとな?」
そう言って佐々木君がフッと息を吐いた。
「ねえ、佐々木君は矢野家の人なの?」
僕が彼らのプライバシーに切り込んだ。
彼らの家系はプライバシーに立ち入られる事を嫌う様だから
”教えてくれるかな?“
と思ったけど聞いてみた。
「先ずは確認させてくれ。
お前が光の言っていた現恋人の長谷川陽向なんだよな?」
僕は彼の目を見て、
「少なくとも僕はそう思っている」
と答えた。
「分かった。
お前の事は光から定期的に聞いてたよ。
好きな人が出来たってな。
ハッキリ言って俺は反対したんだ」
そう彼が言った時に心がズキンと傷んだ。
「別に誤解しないでくれ。
相手がお前だからと言うわけでは無い」
そう言われ、
「うん、分かってるよ」
そう返したけど、
心はズキズキと痛んでいた。
「でも光の信じた人を俺も信じたい」
「佐々木君は矢野君の事が大切なんだね」
僕がそう言うと、
彼は何かを瞑想すようにして、
「アイツは俺の半身だからな」
と言った言葉に少しドキッとした。
“もしかして禁断の二人?”
ぼくが不安そうに彼を見上げると、
「心配するな。
俺たちの関係はそんな甘い様なんじゃ無く、
家族愛に近い物だ」
そう言われ、フ~っと息を吐いた。
その後彼はフランクに僕の質問に答えてくれた。
「俺たちの関係なんだが、
アイツの高祖母が佐々木の出なんだ。
で、俺の曽祖父と兄弟な」
「えっ? じゃあ等親で言ったら一つ違うよね?
彼らは年が離れてたの?」
「そうだな、俺の曽祖父はどちらかと言うと、
光の大叔母に年が近かったんだよ。
だから結構交流もあって」
「それって一花大叔母さんの事だよね?」
僕がそう言うと、
「あいつ、そこまで話したのか?!」
とビックリした様にして僕を見た。
「うん、一花大叔母さんの事、
たくさん話してくれたよ。
矢野君がどんなに彼女の事を特別に思っていたかとか……
彼女の小さい時の写真まで見せて貰ったんだよ。
凄くお人形さんみたいに可愛くて、
花冠が似合って……」
「そうだな、俺たち良く彼女の所に入り浸って居たんだよ。
彼女は何時も花に囲まれてて……
一花大叔母さんは良く彼女の両親の話をしてくれたんだよ。
俺にとっても彼らの話は凄く興味のある事柄だった」
「うん、聞いてる。
矢野君は彼女に人愛する事を学んだって言ってた」
「じゃあ、あの場所も知ってるのか?」
「もしかしてホテルサンシャインの近くにある秘境?」
僕がそう言うと、
「秘境?」
と佐々木君はビックリした様に聞き返した。
「うん、何だか秘境の地みたいで僕はそう呼んでいたんだよ~
あそこは凄いよね。
何だかパワースポットみたいだし、
湖の色なんかも目が覚める様で……
神様が住んでいそうな所だよね」
ぼくがそう言うと、
佐々木君が目を見開いて
「あ~ 確かに言われればそうだよな。
俺らは小さい時から行ってたからあまり意識した事無かったな」
と呟いた。
僕は
“うん、うん”
と頷いて、
「矢野君も同じ事言ってたよ」
そう言ったら、
「じゃあさ、光の過去の恋人の事は?」
と聞いてきた。
「うん、聞いてるよ。
とても愛した人がいたけど
彼は矢野君のお金目的で近寄ってきてただけだって……
矢野君、僕と会ったばかりの頃は
毎夜うなされてたんだよ……」
そう言うと、
「そうだな。
アイツの悪夢は幾らセラピーを受けても、
中々改善されなかったんだよ。
でもうなされ無くなったって聞いたけど、
お前が原因だろ?」
そう言われ、
「それだったら嬉しいんだけど……」
と答えた。
おこがましかったけど、
僕は本当にあの時は矢野君の力になりたかった。
僕が本当に矢野君の助けになっていたのであれば凄く嬉しい。
「矢野君って本当に何でも君に話してたんだね」
そう言うと、
「まあ、全てが全てがじゃ無いいだがな。
アイツもホラら、頑固だからさ」
彼がそう言ったので、僕はプッと吹き出して
「ホントに!」
と笑った。
「じゃあ、光が不能になった理由は聞いてるのか?」
と来たので、
”え?“
と思った。
そう言えば、これ!と言った理由は話して無いかもしれない。
僕が勝手にこれだ!と思い込んでいた節はある。
「それって恋愛に敗れて、そのショックでじゃないの?」
そう尋ねると佐々木君は首を振って、
「いや、違う。
たしかに騙されて酷い仕打ちを受けたのはトラウマになったけど、
光の不能の基本的な原因はそうじゃ無いんだ……
じゃあそこは話してはいないって事なんだな」
そう言って佐々木君は頭を抱えた。
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