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第17話 逸る気持ちと第2次性
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裕也との携帯が繋がらなかったときは、
要君は一体どうするだろうと心配したけど、
それは僕の杞憂に過ぎなかった。
彼はそれでもシャンとして、
しっかりと自分の意志を述べた。
僕は彼の成長に、只々目を細めるだけだった。
だから今の時点では、要君の思いを優先させる事にした。
要君と話し終えた後、
僕は前にも増して、
要君との結びつきを感じた。
でも後に、要君が偶然に裕也に再会し、
自分一人ですべてを解決させたと聞いた時には驚いた。
まさか僕の見えない所でそう言う事が起こっていたとは、
到底思いつきもしなかった。
また、そんな態度なんて、
要君は微塵とも見せなかった。
僕も前よりは頼れる男になっていると思っていたので、
要君にはもっと僕に甘えて、
色々と頼って欲しかった。
少しがっかりはしたけど、
やはり一人手で陽一君を育ててきただけはある。
要君は僕が思っていたよりも随分と精神的にも成長していた。
それでもここまで来るのは一筋縄ではいかなかったと思う。
お互いが手探りで、
それでも愛を確かめ合って、
それぞれやり方は違ったけど、
お互いを信じてここまでやって来たのには脱帽した。
これが運命の番と言うものなんだろうか?
こんな深い結びつきや愛を、僕は今まで見たことが無い。
僕にも7年のブランクはあったけど、
そんな彼らの人生に立ち敢えて、
とても誇らしく思えた。
そしてそんな二人は今日結婚した。
要君は佐々木要となり、
陽一君も裕也の籍に入り、
佐々木陽一となった。
これまでの事が走馬灯のように頭の中を巡って、
僕の目頭は熱くなるばかりだった。
それに彼等にはまた、新しい家族が増えるようで、
幸先良い知らせとなった。
まだ要君への気持ちは残っているけど、
清々しい気持ちでおめでとうが言えた。
それは僕に取って進歩であり、
前を向いて歩く再スタート地点となった。
携帯に収めた二人の写真を見ながら、
“何時か僕にも運命の番が見つかるのだろうか?”
そんなことをぼんやりと考えていた。
裕也が羨ましいと言えば、
羨ましい。
何故裕也には見つかって、僕にはと言う気持ちは勿論ある。
今日、要君と裕也を見届けた後は、
その気持ちは何億倍にと膨れあがり、
それと同時にまだ見つからない番に、
情景の様な思いさえ抱くようになった。
それから時は経ち、
2人が結婚して8年の月日が流れていた。
僕にはまだ番は見つかっていない。
何の努力もしなかった訳じゃ無い。
出会いは割と多かった方だと思う。
デートもしたし、いい雰囲気まで行ったこともある。
でも、後の一歩が僕には踏み出せなかった。
色々な出会いをして、経験を通して、
恋愛に対しては割と知識が増えたと思う。
頭では分かっているのに、
どうしても僕の心が付いて行かなかった。
そんなで恋愛に関しては未だおあずけ状態だけど、
その他の事に関しては、
割と順調に進んでいた。
ビジネスの面では、あれから母親より一部の会社を受け継ぎ、
新社長として忙しい毎日を過ごしていたけど、
佐々木家にお邪魔しに行く時間はどんなに忙しても必ず作っていた。
何と言っても佐々木家の子供たちは僕の癒しだった。
結婚式の時に二人目を妊娠していると伝えられた
佐々木夫妻には念願の女の子が生まれ、
里を愛するという意味で、
家族の大切さを何時も覚えていられるようにと、
愛里と名前が付けられた。
佐々木家基、赤城家にとっても
初めての女の子。
勿論、要君のお父さんは、
今までに見ないデレデレぶりだ。
陽一君の時よりもひどい。
でもそれは、要君のお母さんにも言えたことだった。
流石は紅一点。
僕に取っても、これからの佐々木家の成長が楽しみだ。
要君似のおっとり、フンワカした陽一君とは違い、
愛里ちゃんは裕也にそっくりだ。
今では小学校2年生で、
学校では天才児として持て囃されているらしい。
サラサラの黒髪を颯爽と翻し、
スタスタと歩く姿はモデル張りのようだ。
身長も裕也に似て高く、
スレンダー美人だ。
いかにもαといった様な、キリッとした顔立ちをしている。
才色兼備で、8歳なのに小学校高学年の様な貫禄があった。
それにお祖母ちゃんの血が濃かったのか、
彼女はキッズオーケストラに属し、
ビオラを演奏する。
管弦楽器は一通りこなせるようだが、
ビオラの音が一番聞きやすく、
音が体に浸透して気持ちいいと、ビオラを選んだみたいだ。
それに反し陽一君は、
あれから目まぐるしく成長したと言いたいが、
5歳の時からほとんど変わっていない。
変わったのは、背が伸びたかな?
というくらい。
相変わらずのフンワリとした黒髪に、
クリクリの大きな目をしている。
でも、笑うと子犬の様で、本当に天使だ。
クルクルと変わる表情がもう可愛くて、可愛くて、
誰にも見せずに箱の中にしまっておきたい。
これを言う度に裕也に変態扱いされる。
本当に要君の生き写しの様で、
勉強も苦手科目が沢山有るかと思えば、
駆けっこなんかも、歩いた方が早いんでは?というくらい遅い。
音楽も得意ではなさそうだ。
小学校の発表会では何時もフエを吹いていた。
でも、絵の才能もそこまで無さそうだけど、
色彩感覚が凄く良い。
何を隠そう、要君のお父さんと同じ事務所に所属して、
ティーンモデルを始める事になったのだ。
そこでコーディネータの勉強も始めるみたいだ。
兄弟としては対照的な二人だけど、
要君と裕也に愛情をたっぷり注がれて育てられている。
そしてもちろん僕からも。
そんな陽一君も今年から中学1年生。
周りの皆はもうかなり思春期に来て、声変りをしたり、
ニキビが出来たりしている。
でも多分、陽一君は、まだ変声期も来ていない。
顔もつるつるだ。
多分陽一君の肌はそのままだと思う。
要君もそうだった。
精通があったのかは分からない。
まさかそんなことを彼の両親に聞くわけにはいかない。
もし仮に、陽一君がΩだったと仮定すると、
発情期は未だだ。
そして今日は陽一君の第二次性の結果発表の日。
結果は何となく分かるけど、
見るまでは100%ではない。
検査は中学新学期の身体測定の一環として行われる。
大体検体の出来る12、3歳で行われる。
仮にまだできていない人は、
次の年に持ち越しされる。
結果は勿論プライバシー保護のため、厳重に封がしてある。
僕は要君に、
僕がお家にお邪魔するまで、結果は開けないでとお願いした。
一緒に開封したかったから。
僕はその日は朝からドキドキと心臓が鳴っていた。
何故なのか分からない。
別に第二次性の結果を知るだけなのに、
なにか自分の未来に深く関係してくるような重圧を覚えた。
例えて言うと、今日大学入試の結果が分かるとか、
就職面接の結果が今日やって来るとか、
大袈裟に言うと、今日プロポーズをしようと思っているとか、
そんな結果待ち類の緊張だ。
イヤ、僕はαで、思いの他なんでもスムーズにやりこなしてきた。
だから、結果待ちの緊張と言うものは、ほとんどなかった。
でも何だろう? 今日のこの緊張は……
彼の結果次第で僕の未来が変わると言った様な緊張だ。
得体の知れない感情に、
今日の仕事はちっとも身に入らなかった。
逸って、逸って、今すぐにでも
陽一君の学校に走って行って、
あの封がされた封筒を開けたいくらい心が逸っていた。
「先輩、何今日は朝からソワソワしてるんですか?」
朝からミーティングに来ていた要君に指摘された。
まさか陽一君の結果が待てなくてソワソワしているとは言えない。
要君を見ると、ハハハと苦笑いして、
「イヤ~ 久しぶりの要君の手料理が食べられると思うと……」
と言いかけて要君が、
「先輩、昨夜も押しかけて晩御飯食べて行ったじゃないですか~」
と指摘した。
僕は今まさに挙動不審者になっている。
「もしかして陽ちゃんの結果ですか~?」
と要君に図星を差され、
僕は慌ててそんな事無いよ!
と言い繕ったけど、
要君はクスクスと笑っていたので、
分かっていたのかもしれない。
「要君は気にならないの~?」
「え~ 僕としては陽ちゃんがどの第二次性だったとしても、
変わらない愛情をもって接するだけだから、
今更ですよ!
先輩は陽ちゃんが思ってたのと違う第二次性だったら、
態度を変えるんですか?」
そう要君に聞かれ、
「イヤ、違う、違う、
そんなんじゃんなくて……」
そう言って、陽一君には、
絶対Ωであって欲しいと願いう自分が居る事にびっくりした。
“何故……?
何故自分に取って陽一君はΩでなければいけないのか?”
そう思うと、心臓がドキドキとした。
要君は一体どうするだろうと心配したけど、
それは僕の杞憂に過ぎなかった。
彼はそれでもシャンとして、
しっかりと自分の意志を述べた。
僕は彼の成長に、只々目を細めるだけだった。
だから今の時点では、要君の思いを優先させる事にした。
要君と話し終えた後、
僕は前にも増して、
要君との結びつきを感じた。
でも後に、要君が偶然に裕也に再会し、
自分一人ですべてを解決させたと聞いた時には驚いた。
まさか僕の見えない所でそう言う事が起こっていたとは、
到底思いつきもしなかった。
また、そんな態度なんて、
要君は微塵とも見せなかった。
僕も前よりは頼れる男になっていると思っていたので、
要君にはもっと僕に甘えて、
色々と頼って欲しかった。
少しがっかりはしたけど、
やはり一人手で陽一君を育ててきただけはある。
要君は僕が思っていたよりも随分と精神的にも成長していた。
それでもここまで来るのは一筋縄ではいかなかったと思う。
お互いが手探りで、
それでも愛を確かめ合って、
それぞれやり方は違ったけど、
お互いを信じてここまでやって来たのには脱帽した。
これが運命の番と言うものなんだろうか?
こんな深い結びつきや愛を、僕は今まで見たことが無い。
僕にも7年のブランクはあったけど、
そんな彼らの人生に立ち敢えて、
とても誇らしく思えた。
そしてそんな二人は今日結婚した。
要君は佐々木要となり、
陽一君も裕也の籍に入り、
佐々木陽一となった。
これまでの事が走馬灯のように頭の中を巡って、
僕の目頭は熱くなるばかりだった。
それに彼等にはまた、新しい家族が増えるようで、
幸先良い知らせとなった。
まだ要君への気持ちは残っているけど、
清々しい気持ちでおめでとうが言えた。
それは僕に取って進歩であり、
前を向いて歩く再スタート地点となった。
携帯に収めた二人の写真を見ながら、
“何時か僕にも運命の番が見つかるのだろうか?”
そんなことをぼんやりと考えていた。
裕也が羨ましいと言えば、
羨ましい。
何故裕也には見つかって、僕にはと言う気持ちは勿論ある。
今日、要君と裕也を見届けた後は、
その気持ちは何億倍にと膨れあがり、
それと同時にまだ見つからない番に、
情景の様な思いさえ抱くようになった。
それから時は経ち、
2人が結婚して8年の月日が流れていた。
僕にはまだ番は見つかっていない。
何の努力もしなかった訳じゃ無い。
出会いは割と多かった方だと思う。
デートもしたし、いい雰囲気まで行ったこともある。
でも、後の一歩が僕には踏み出せなかった。
色々な出会いをして、経験を通して、
恋愛に対しては割と知識が増えたと思う。
頭では分かっているのに、
どうしても僕の心が付いて行かなかった。
そんなで恋愛に関しては未だおあずけ状態だけど、
その他の事に関しては、
割と順調に進んでいた。
ビジネスの面では、あれから母親より一部の会社を受け継ぎ、
新社長として忙しい毎日を過ごしていたけど、
佐々木家にお邪魔しに行く時間はどんなに忙しても必ず作っていた。
何と言っても佐々木家の子供たちは僕の癒しだった。
結婚式の時に二人目を妊娠していると伝えられた
佐々木夫妻には念願の女の子が生まれ、
里を愛するという意味で、
家族の大切さを何時も覚えていられるようにと、
愛里と名前が付けられた。
佐々木家基、赤城家にとっても
初めての女の子。
勿論、要君のお父さんは、
今までに見ないデレデレぶりだ。
陽一君の時よりもひどい。
でもそれは、要君のお母さんにも言えたことだった。
流石は紅一点。
僕に取っても、これからの佐々木家の成長が楽しみだ。
要君似のおっとり、フンワカした陽一君とは違い、
愛里ちゃんは裕也にそっくりだ。
今では小学校2年生で、
学校では天才児として持て囃されているらしい。
サラサラの黒髪を颯爽と翻し、
スタスタと歩く姿はモデル張りのようだ。
身長も裕也に似て高く、
スレンダー美人だ。
いかにもαといった様な、キリッとした顔立ちをしている。
才色兼備で、8歳なのに小学校高学年の様な貫禄があった。
それにお祖母ちゃんの血が濃かったのか、
彼女はキッズオーケストラに属し、
ビオラを演奏する。
管弦楽器は一通りこなせるようだが、
ビオラの音が一番聞きやすく、
音が体に浸透して気持ちいいと、ビオラを選んだみたいだ。
それに反し陽一君は、
あれから目まぐるしく成長したと言いたいが、
5歳の時からほとんど変わっていない。
変わったのは、背が伸びたかな?
というくらい。
相変わらずのフンワリとした黒髪に、
クリクリの大きな目をしている。
でも、笑うと子犬の様で、本当に天使だ。
クルクルと変わる表情がもう可愛くて、可愛くて、
誰にも見せずに箱の中にしまっておきたい。
これを言う度に裕也に変態扱いされる。
本当に要君の生き写しの様で、
勉強も苦手科目が沢山有るかと思えば、
駆けっこなんかも、歩いた方が早いんでは?というくらい遅い。
音楽も得意ではなさそうだ。
小学校の発表会では何時もフエを吹いていた。
でも、絵の才能もそこまで無さそうだけど、
色彩感覚が凄く良い。
何を隠そう、要君のお父さんと同じ事務所に所属して、
ティーンモデルを始める事になったのだ。
そこでコーディネータの勉強も始めるみたいだ。
兄弟としては対照的な二人だけど、
要君と裕也に愛情をたっぷり注がれて育てられている。
そしてもちろん僕からも。
そんな陽一君も今年から中学1年生。
周りの皆はもうかなり思春期に来て、声変りをしたり、
ニキビが出来たりしている。
でも多分、陽一君は、まだ変声期も来ていない。
顔もつるつるだ。
多分陽一君の肌はそのままだと思う。
要君もそうだった。
精通があったのかは分からない。
まさかそんなことを彼の両親に聞くわけにはいかない。
もし仮に、陽一君がΩだったと仮定すると、
発情期は未だだ。
そして今日は陽一君の第二次性の結果発表の日。
結果は何となく分かるけど、
見るまでは100%ではない。
検査は中学新学期の身体測定の一環として行われる。
大体検体の出来る12、3歳で行われる。
仮にまだできていない人は、
次の年に持ち越しされる。
結果は勿論プライバシー保護のため、厳重に封がしてある。
僕は要君に、
僕がお家にお邪魔するまで、結果は開けないでとお願いした。
一緒に開封したかったから。
僕はその日は朝からドキドキと心臓が鳴っていた。
何故なのか分からない。
別に第二次性の結果を知るだけなのに、
なにか自分の未来に深く関係してくるような重圧を覚えた。
例えて言うと、今日大学入試の結果が分かるとか、
就職面接の結果が今日やって来るとか、
大袈裟に言うと、今日プロポーズをしようと思っているとか、
そんな結果待ち類の緊張だ。
イヤ、僕はαで、思いの他なんでもスムーズにやりこなしてきた。
だから、結果待ちの緊張と言うものは、ほとんどなかった。
でも何だろう? 今日のこの緊張は……
彼の結果次第で僕の未来が変わると言った様な緊張だ。
得体の知れない感情に、
今日の仕事はちっとも身に入らなかった。
逸って、逸って、今すぐにでも
陽一君の学校に走って行って、
あの封がされた封筒を開けたいくらい心が逸っていた。
「先輩、何今日は朝からソワソワしてるんですか?」
朝からミーティングに来ていた要君に指摘された。
まさか陽一君の結果が待てなくてソワソワしているとは言えない。
要君を見ると、ハハハと苦笑いして、
「イヤ~ 久しぶりの要君の手料理が食べられると思うと……」
と言いかけて要君が、
「先輩、昨夜も押しかけて晩御飯食べて行ったじゃないですか~」
と指摘した。
僕は今まさに挙動不審者になっている。
「もしかして陽ちゃんの結果ですか~?」
と要君に図星を差され、
僕は慌ててそんな事無いよ!
と言い繕ったけど、
要君はクスクスと笑っていたので、
分かっていたのかもしれない。
「要君は気にならないの~?」
「え~ 僕としては陽ちゃんがどの第二次性だったとしても、
変わらない愛情をもって接するだけだから、
今更ですよ!
先輩は陽ちゃんが思ってたのと違う第二次性だったら、
態度を変えるんですか?」
そう要君に聞かれ、
「イヤ、違う、違う、
そんなんじゃんなくて……」
そう言って、陽一君には、
絶対Ωであって欲しいと願いう自分が居る事にびっくりした。
“何故……?
何故自分に取って陽一君はΩでなければいけないのか?”
そう思うと、心臓がドキドキとした。
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