118 / 246
【第6話】両片想いとフライドポテト
【6-8】
しおりを挟む
今度はカミュがA1くらいの大きさの板のようなものを魔法で引き寄せて、譜面台っぽいものに掛けて置く。──きちんと見ると、遊戯盤も板も真ん中の境界にして薄い青色と赤色に塗り分けられていた。ということは、あの板はスコアボード的な道具なのだろうか。
「では、勝負を開始する。──創世!」
「創世!」
号令のように二人が声を合わせると、遊戯盤とサイコロがぼんやりと淡く光り、スコアボードっぽい板も仄かに光って文字を浮かび上がらせた。魔法を使うゲームというだけあって、スコアも自動手記なのかな? 何かのリストのようなものがズラズラと書き連ねられていて、ジルとカミュが交互に魔法でサイコロを振る度に文字の横に数字が浮かび上がっていく。数字以外は何が書かれているかよく分からないけれど、青い領域の最上部にはジルの、赤い領域のほうの同位置にはカミュの名前が記されているのは分かった。
「俺たちが何度も賽を振っているのを眺めていてもつまらないかもしれないが、これをこなさなければ先に進めないから、すまないがもう暫く見ていてくれ」
僕が口を半開きにしてぼけーっと見学している様子を暇を持て余していると捉えたのか、ジルが申し訳なさそうに言ってくる。僕は慌てて首を振った。
「つまらないなんてことはないよ! すごく興味深く見させてもらってるんだから」
「そうか……?」
「差し出口ですが、軽く説明を添えてさしあげるとよろしいのでは? 我々は、それこそ見飽きるほど熟知しておりますが、ミカさんにとっては賽で出た数字が何なのかも分からないでしょうから」
「ああ、そうか。確かにそうだな」
僕がもっと文字を読めればスコアボードのようなものを見ただけでも察しがつくのだろうけど、それが叶わない以上、少しでも解説があるとありがたい。でも、色々と考えながら進めなければいけないゲームみたいだし、余計なことで気を逸らせてしまうのも申し訳ない。
「ありがたいけど、気が散っちゃうんじゃない?」
「平気だ。最後まで勝負をするわけじゃないからな。……今は、交互に賽を振って、様々な能力値を決めている最中だ。参加者の能力値、『はじまりの男女』の能力値、土地そのものの能力値があって、これらの数値が干渉し合い、様々な行動や出来事の成功率や成長率を左右する」
「その数値が、あそこに掲げている管理表に記載されていきます。初めに決めた数値が最後まで動かない項目もあれば、自分や相手の行動結果によって変化していくものもあるのです。変化があれば、その都度、管理表の数値も書き換えられていきます」
スコアボード的なものは管理表と呼ばれているらしい。各項目横の数値が全部埋まった後、参加者たちは更に一回ずつサイコロを振った。すると、遊戯盤の中央辺りの宙に眩い光の球体のようなものが現れて、次第にそれは一冊の古書へと姿を変えていく。そして、赤青両方の領域の山中に目印のような光の点が出現した。
「各能力値を決め、最後に誰が先攻かを決めると、このように指南書が現れる。『創世大戦』の基本的な進め方は、順に賽を振り、その出目に従って指南書の頁をめくり、そこに記載されている指示に従いつつ行動を決めるんだ」
「一巡目は最初の頁と決まっておりますので、二巡目からそれぞれ違う展開へ進んでいくこととなります」
なるほど……、ゲームブックのようなシステムも取り入れられているのかな? 細かいし、複雑だし、「創世大戦」は大人向けのゲームという印象が強い。じっくりと時間を掛けて大人同士で遊べるような、どちらかといえば富裕層向けの遊びなのだろう。
「先攻は俺だ。……では、拠点に家を作ってみようか」
ジルがそう言うと、指南書が光り、次に魔力の水の小さな粒が三つほど宙に吸い上げられて消える。そして、青の領域の小さな点が、屋根付きの家のような形の立体物に変化した。
「建築は、今のように魔力の水を消費して行う。今後、国を発展させるうえで様々な建築を行うが、特定の施設以外の建造物は遊戯盤上には表現されない。今作ったのは、ゆくゆくは本拠地となるものだから、こうして変化が表現された。今は普通の家だが、これを次第に堅牢な城に進化させていき、攻められづらい砦にしていく必要がある」
「ちなみに、はじめから立派な城を建てることは出来ません。自分の領地の発展具合によって、建築できる家屋の規模や質も変わります。知らないものは作れない、ということですね」
「わぁ……、難しそう……」
頭の中がごちゃごちゃしてくる。情けない顔をしているだろう僕を、魔王と悪魔は微笑ましそうに見つめてきた。
「ミカは賢い。きっとすぐに理解が追い付くさ」
「そうですとも。……では、次は私の番ですね。うーん……、ジル様の行動との差をお見せするために、あまり選択されない初手を打ってみましょうか。『はじまりの男女』に子を授かっていただきましょう」
カミュがそう宣言すると、指南書と共に面が少ないほうのサイコロが光る。美しい悪魔は指先を優雅に動かし、魔法でそれを振った。
「では、勝負を開始する。──創世!」
「創世!」
号令のように二人が声を合わせると、遊戯盤とサイコロがぼんやりと淡く光り、スコアボードっぽい板も仄かに光って文字を浮かび上がらせた。魔法を使うゲームというだけあって、スコアも自動手記なのかな? 何かのリストのようなものがズラズラと書き連ねられていて、ジルとカミュが交互に魔法でサイコロを振る度に文字の横に数字が浮かび上がっていく。数字以外は何が書かれているかよく分からないけれど、青い領域の最上部にはジルの、赤い領域のほうの同位置にはカミュの名前が記されているのは分かった。
「俺たちが何度も賽を振っているのを眺めていてもつまらないかもしれないが、これをこなさなければ先に進めないから、すまないがもう暫く見ていてくれ」
僕が口を半開きにしてぼけーっと見学している様子を暇を持て余していると捉えたのか、ジルが申し訳なさそうに言ってくる。僕は慌てて首を振った。
「つまらないなんてことはないよ! すごく興味深く見させてもらってるんだから」
「そうか……?」
「差し出口ですが、軽く説明を添えてさしあげるとよろしいのでは? 我々は、それこそ見飽きるほど熟知しておりますが、ミカさんにとっては賽で出た数字が何なのかも分からないでしょうから」
「ああ、そうか。確かにそうだな」
僕がもっと文字を読めればスコアボードのようなものを見ただけでも察しがつくのだろうけど、それが叶わない以上、少しでも解説があるとありがたい。でも、色々と考えながら進めなければいけないゲームみたいだし、余計なことで気を逸らせてしまうのも申し訳ない。
「ありがたいけど、気が散っちゃうんじゃない?」
「平気だ。最後まで勝負をするわけじゃないからな。……今は、交互に賽を振って、様々な能力値を決めている最中だ。参加者の能力値、『はじまりの男女』の能力値、土地そのものの能力値があって、これらの数値が干渉し合い、様々な行動や出来事の成功率や成長率を左右する」
「その数値が、あそこに掲げている管理表に記載されていきます。初めに決めた数値が最後まで動かない項目もあれば、自分や相手の行動結果によって変化していくものもあるのです。変化があれば、その都度、管理表の数値も書き換えられていきます」
スコアボード的なものは管理表と呼ばれているらしい。各項目横の数値が全部埋まった後、参加者たちは更に一回ずつサイコロを振った。すると、遊戯盤の中央辺りの宙に眩い光の球体のようなものが現れて、次第にそれは一冊の古書へと姿を変えていく。そして、赤青両方の領域の山中に目印のような光の点が出現した。
「各能力値を決め、最後に誰が先攻かを決めると、このように指南書が現れる。『創世大戦』の基本的な進め方は、順に賽を振り、その出目に従って指南書の頁をめくり、そこに記載されている指示に従いつつ行動を決めるんだ」
「一巡目は最初の頁と決まっておりますので、二巡目からそれぞれ違う展開へ進んでいくこととなります」
なるほど……、ゲームブックのようなシステムも取り入れられているのかな? 細かいし、複雑だし、「創世大戦」は大人向けのゲームという印象が強い。じっくりと時間を掛けて大人同士で遊べるような、どちらかといえば富裕層向けの遊びなのだろう。
「先攻は俺だ。……では、拠点に家を作ってみようか」
ジルがそう言うと、指南書が光り、次に魔力の水の小さな粒が三つほど宙に吸い上げられて消える。そして、青の領域の小さな点が、屋根付きの家のような形の立体物に変化した。
「建築は、今のように魔力の水を消費して行う。今後、国を発展させるうえで様々な建築を行うが、特定の施設以外の建造物は遊戯盤上には表現されない。今作ったのは、ゆくゆくは本拠地となるものだから、こうして変化が表現された。今は普通の家だが、これを次第に堅牢な城に進化させていき、攻められづらい砦にしていく必要がある」
「ちなみに、はじめから立派な城を建てることは出来ません。自分の領地の発展具合によって、建築できる家屋の規模や質も変わります。知らないものは作れない、ということですね」
「わぁ……、難しそう……」
頭の中がごちゃごちゃしてくる。情けない顔をしているだろう僕を、魔王と悪魔は微笑ましそうに見つめてきた。
「ミカは賢い。きっとすぐに理解が追い付くさ」
「そうですとも。……では、次は私の番ですね。うーん……、ジル様の行動との差をお見せするために、あまり選択されない初手を打ってみましょうか。『はじまりの男女』に子を授かっていただきましょう」
カミュがそう宣言すると、指南書と共に面が少ないほうのサイコロが光る。美しい悪魔は指先を優雅に動かし、魔法でそれを振った。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
緑の魔法と香りの使い手
兎希メグ/megu
ファンタジー
ハーブが大好きな女子大生が、ある日ハーブを手入れしていたら、不幸な事に死亡してしまい異世界に転生。
特典はハーブを使った癒しの魔法。
転生した世界は何と、弱肉強食の恐ろしい世界。でも優しい女神様のおかげでチュートリアル的森で、懐いた可愛い子狼と一緒にしっかり準備して。
とりあえず美味しいスイーツとハーブ料理を振る舞い、笑顔を増やそうと思います。
皆様のおかげで小説2巻まで、漫画版もアルファポリス公式漫画で連載中です。
9月29日に漫画1巻発売になります! まめぞう先生による素敵な漫画がまとめて読めますので、よろしくお願いします!
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
最弱ユニークギフト所持者の僕が最強のダンジョン探索者になるまでのお話
亘善
ファンタジー
【点滴穿石】という四字熟語ユニークギフト持ちの龍泉麟瞳は、Aランクダンジョンの攻略を失敗した後にパーティを追放されてしまう。地元の岡山に戻った麟瞳は新たに【幸運】のスキルを得て、家族や周りの人達に支えられながら少しずつ成長していく。夢はSランク探索者になること。これは、夢を叶えるために日々努力を続ける龍泉麟瞳のお話である。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる