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運とはズルく見えること
色々様々同級生
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「俺も。ちょっと話してみたかった」
俺が答えると、タルタは手のひらを上に向けて手招きをした。人だかりを抜けて木陰で立ち止まる。
「お前ってさ、どこの人?」
「実家? 一応、この街。外れの方だけど」
「そう。じゃ、家柄は?」
「家柄……まぁ、農家?」
俺の背景を知りたがる質問が飛んでくる。無遠慮な感じもしたが、言いたくない訳ではないので答えた。
「ふーん……特設クラスの背が低い方の女、妹?」
そう言われて頭に浮かんだのはエイテムの姿だった。多分コルアとそう変わらない背丈だが、ショウカと並ぶ様子を見たからか低い印象がある。
「いや、彼女は違うよ」
「じゃあアルストーリアの奴と連んでる小っさい男は?」
「あーそれは弟だと思う」
連んで見えそうなフルー、ソールド、コルアを並べれば背が低いのは弟だろう。だが、先ほどから聞き方が鋭利すぎる。
「……なんでだよ」
ぼそっとタルタが吐き捨てた。聞き取れたものの触れて良いか迷う声量だ。
「悪かったな。聞きたかったの、これだけ」
「あ、うん」
迷う間にタルタが話を打ち切った。
「で。お前も話したいって、何?」
「いや、なんかさ」
頭には浮かんだが言葉が止まった。何かしんどいことがあるのか、と聞いても良いのだろうか。ほとんど何も知らない相手の、ただ一瞬そう感じた表情だけを根拠に尋ねるには無責任な質問の気がした。
「一番の成績、ってどういうこと? 俺あんまり学校のシステムに詳しくなくて」
「入る前に調べてないの?」
タルタはハァとため息をついて肩の力を抜いた。
「色々出るけど……校内の催し物が一番ランク低い。勝てたら良いぐらい。ほら、球技大会あるのぐらいは分かる?」
「ああ、昨日配られた紙にあったかも」
「そう、それ。でも、卒業してから大事なのは校外の行事。一年の終わりにある公務の帯同……そいつで成果出さないと」
俺に説明しながら、また思い詰めたような顔に変わっていくタルタ。俺は思わず話を遮った。
「ありがと! 寮に戻ったら書類、読み込むことにするよ」
「お前も寮? そりゃド田舎から出てくればそっか……なんか、頼りないなお前」
「そう?」
「うん。なんかあったら聞きに来て良い。僕も寮だから」
「おう、ありがとな」
俺が礼を言うと、やっとタルタが少し笑った。
「別に。僕が一番詳しいからさ。お前、名前は?」
「アール・タイラ」
「ふーん、良い響き。僕はタルタ・トーキン。じゃ」
スタスタと背を向けてタルタが離れていった。変わらず印象は良くないが、この数日で取り巻きが出来るのも分かる気がした。
タルタと入れ替わるようにこちらへフルーが歩いてくる。二人は一瞬だけ視線を交わしたが、タルタの歩く速度が速まっただけだった。
「睨まれちゃった」
笑いながらフルーがやってきた。
「まぁ……気にしなくて良いと思うぞ」
「気にしてないよ。年下から向けられる視線としては傷つくけどね」
タルタもフルーもそれぞれの事情があるだろうが、浅い付き合いの俺はまだ何も知らない。言えることが無くて口をつぐんだ。
ただ、俺もコルアもここで過ごしていく。小さな火種が大きな爆弾になる前に、クラスメイトを始め周囲のことを知っていく必要がありそうだ。
俺が答えると、タルタは手のひらを上に向けて手招きをした。人だかりを抜けて木陰で立ち止まる。
「お前ってさ、どこの人?」
「実家? 一応、この街。外れの方だけど」
「そう。じゃ、家柄は?」
「家柄……まぁ、農家?」
俺の背景を知りたがる質問が飛んでくる。無遠慮な感じもしたが、言いたくない訳ではないので答えた。
「ふーん……特設クラスの背が低い方の女、妹?」
そう言われて頭に浮かんだのはエイテムの姿だった。多分コルアとそう変わらない背丈だが、ショウカと並ぶ様子を見たからか低い印象がある。
「いや、彼女は違うよ」
「じゃあアルストーリアの奴と連んでる小っさい男は?」
「あーそれは弟だと思う」
連んで見えそうなフルー、ソールド、コルアを並べれば背が低いのは弟だろう。だが、先ほどから聞き方が鋭利すぎる。
「……なんでだよ」
ぼそっとタルタが吐き捨てた。聞き取れたものの触れて良いか迷う声量だ。
「悪かったな。聞きたかったの、これだけ」
「あ、うん」
迷う間にタルタが話を打ち切った。
「で。お前も話したいって、何?」
「いや、なんかさ」
頭には浮かんだが言葉が止まった。何かしんどいことがあるのか、と聞いても良いのだろうか。ほとんど何も知らない相手の、ただ一瞬そう感じた表情だけを根拠に尋ねるには無責任な質問の気がした。
「一番の成績、ってどういうこと? 俺あんまり学校のシステムに詳しくなくて」
「入る前に調べてないの?」
タルタはハァとため息をついて肩の力を抜いた。
「色々出るけど……校内の催し物が一番ランク低い。勝てたら良いぐらい。ほら、球技大会あるのぐらいは分かる?」
「ああ、昨日配られた紙にあったかも」
「そう、それ。でも、卒業してから大事なのは校外の行事。一年の終わりにある公務の帯同……そいつで成果出さないと」
俺に説明しながら、また思い詰めたような顔に変わっていくタルタ。俺は思わず話を遮った。
「ありがと! 寮に戻ったら書類、読み込むことにするよ」
「お前も寮? そりゃド田舎から出てくればそっか……なんか、頼りないなお前」
「そう?」
「うん。なんかあったら聞きに来て良い。僕も寮だから」
「おう、ありがとな」
俺が礼を言うと、やっとタルタが少し笑った。
「別に。僕が一番詳しいからさ。お前、名前は?」
「アール・タイラ」
「ふーん、良い響き。僕はタルタ・トーキン。じゃ」
スタスタと背を向けてタルタが離れていった。変わらず印象は良くないが、この数日で取り巻きが出来るのも分かる気がした。
タルタと入れ替わるようにこちらへフルーが歩いてくる。二人は一瞬だけ視線を交わしたが、タルタの歩く速度が速まっただけだった。
「睨まれちゃった」
笑いながらフルーがやってきた。
「まぁ……気にしなくて良いと思うぞ」
「気にしてないよ。年下から向けられる視線としては傷つくけどね」
タルタもフルーもそれぞれの事情があるだろうが、浅い付き合いの俺はまだ何も知らない。言えることが無くて口をつぐんだ。
ただ、俺もコルアもここで過ごしていく。小さな火種が大きな爆弾になる前に、クラスメイトを始め周囲のことを知っていく必要がありそうだ。
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