上 下
15 / 34

第十四話 花酒と愛の秘薬

しおりを挟む
*ちょいエロ
*後半ミーフェの思考がエロ寄り


 花の祝祭が近付くとある日。
 私を訪ねてきたオルネラさんと共に、調合釜に向かっていた。

「そうそう、その調子よ。琥珀色になったら、このアーネルデの花びらを入れるの」
「……もうけっこうかき回してますけど、あとどれくらいで…?」
「んー……もうちょっとよ。ほら、周りが琥珀色になってきたわ」

 アーネルデというのは永樹の森に群生している花のことだ。花弁は薄桃色で手のひらほどの花を咲かせ、その花はあらゆるものへと使われているらしい。
 私はぐるぐると釜をかき回し、透明だった液体がようやく琥珀色になり始めた。オルネラさんは釜の中の色を見て頷いてから、まるでふたをするかのようにアーネルデの花びらを大量に入れる。

「はい、手を休まずにかき混ぜて。ここが一番大事よ、花酒の美味しさはここで決まるんだから」
「がん、ばります…!」

 重くなった木べらをなんとか回し、花びらを琥珀色の液体の中へ沈めて行く。わずかに漂い始めたお酒の匂いと甘い香りに、完成が近づいているのだろうと分かる。

「……うん、いいわよ。これで花酒はなしゅの出来上がり。少し力が要るけれど、そんなに難しくないでしょう?」
「はい。教えてくださってありがとうございます、困っていたので助かりました」
「ふふ、そうだろうと思って会いに来たの。作り方は難しくないけど、初めて作るのは大変だから。さ、あとは瓶に入れて保存しておきましょうか」

 オルネラさんに頷いて、用意していた瓶へと花酒を注いでいく。琥珀色の液体の中に花びらが浮かんでいるが、それらは沈むことなく液体のほぼ真ん中で留まっている。

「わー…きれいですね」
「あら。初めて作った花酒で、こんなに綺麗に真ん中に花びらが集まっているなんて……ミーフェって調合の腕が良いのね」
「ありがとうございます。腕が良いなんて初めて言われました」
「まあ、普通の人には調合の腕が良いかどうかなんて分からないから、仕方ないわね。ほらほら、たくさんあるのだからてきぱきと瓶に入れていきましょう」
「はいっ」

 長く調合師をしているオルネラさんに褒められたことが嬉しくて、私は少し鼻歌を歌いながら出来上がった花酒を瓶へ入れていく。用意していた二十本の瓶の内、十八本分の花酒が出来上がった。
 それらを保管するための箱に入れ、ふう、と私は一息つく。

「お疲れ様。あとは祝祭まで毎日、頑張って作ってくれるとありがたいわ。と、言っても商会から作る数を言われているでしょうけど」
「そうなんです。百四十本、作るようにって」

 私が花酒を作っていたのは、商会から依頼があったからだ。
 花の祝祭で振舞われる花酒は調合師しか作れないらしく、街にやって来るひとや住人たちに満遍なく行き渡らせるために、花酒を作って欲しいというものだ。
 これはミルスマギナに住むすべての調合師へ通達している、とも書かれていた。

「ふうん…祝祭まではあと八日だし、二十本を毎日作れば十分に間に合う数ね。まあ、さすがに商会といえど無理な数は依頼しないわよね」
「私一人でしていたら出来なかったですよ。オルネラさんのお陰です。本当にありがとうございます」
「もう、お礼なんていいわよ。それより、少し聞いてもいいかしら?」
「あ、はい。なんですか?」

 聞きたいこととはなんだろう、と思いながら、オルネラさんの言葉に頷くと、彼女はきょろきょろと辺りを見回してから、私のすぐ傍まで来て小さな声で問いかけてきた。

「…あなた、愛の秘薬は調合できる?」
「愛の秘薬って……媚薬とか惚れ薬とかのことですよね。調合したことがないので、なんとも…」
「そうよね、まだ調合師になって一年も経っていないのだから、したことないわよね。……ええとね、ミルスマギナでは祝祭の時期になると、愛の秘薬を作って欲しいって依頼が調合師に直接来るのよ」

 オルネラさん曰く、祝祭を深い仲へと至るためのきっかけにするひとが多く、それらを成功させるために愛の秘薬を用いようとするものたちがいるとのこと。そして、ギルドで依頼として出すには気まずいらしく、調合師へと直接、お願いに来るひとが大半だという。

「そうなんですね…でも、それって倫理的に大丈夫なんですか?」
「昔は効果が強すぎて色々と問題になったりもしたけど、いまはかなり弱めたものしか調合していないから一応は大丈夫よ。ちょっとそういう気分になるな、っていう程度だもの」
「ああ、それならよかったです。…で、その、私も調合できたほうが良いんですか?」
「調合できるようになっておいて損はないわよ。愛の秘薬を作って欲しいって言ってくるひとたちは、口止め料も含めてかなりの報酬を支払ってくれるし」
「んん~…まあ、私に依頼してくるひとはいないかもしれませんが、調合できるようにしておきます」

 かなりの報酬につられて、私はそう口にする。慎ましく暮らせればいいと思ってはいるけど、現状、お金のことではグランに頼りきりだし…。一緒に居る時間を増やしたいと思って冒険者登録もしたけれど、ずっとお店を閉めてるわけにもいかないしなぁ。
 オルネラさんは私の言葉に頷いて、持って来ていた鞄の中から数枚の紙を取り出した。

「じゃあこれ、作り方。まだ時間はあるし、これを見ながら作ってみるといいわ」
「わ、ありがとうございます。なにからなにまで手を貸していただいて……」
「いいのいいの。後進を育てるのも必要なことだしね。ほらほら、さっそく作ってみましょう!」
「はい!」

 花酒から愛の秘薬の作り方まで、色々と教えてくれるオルネラさんには頭が上がらなくなりそうだ。次に会うときには、彼女が好きそうなものを用意して贈らなければ。
 私はそんな事を考えながら、彼女から渡された愛の秘薬作りに取り掛かった。

 *

 結果的に、なんとか愛の秘薬を調合することができた。が、私とオルネラさんは調合釜の前でへたり込んでいた。あまりにも問題が起きすぎて。

「な、なんとかなったわね……。まさか調合釜から火柱が立つなんて…家に燃え移らなくてよかったわ…」
「はい…。ほんとに、びっくりしました…ものすごく甘い匂いが充満したのも、ちょっと…」
「……そうね…すぐに風を通したからよかったけど……うん、考えるのはやめましょうか」
「そう、ですね…」

 深く考えるのをやめ、私たちは荒れてしまった調合釜の周りを片付けていく。幾つか焦げてしまった材料を泣く泣く処分し、ちょっと焦げてしまった壁はオルネラさんが魔法で直してくれた。

「ふう、これで終わりですね。オルネラさん、ありがとうございます」
「私がしようって言った事だし、気にしないで。でも、今後は誰か一緒に居るときじゃないと危ないわね。さすがに愛の秘薬作りは難しかったのかしら…」
「そうかもしれません…」

 難しいというよりも、この家自体が原因のような気もするが私は何も言わないことにした。神妙に頷いてそういうことにしておく。

「んー、それなら今年はその依頼を受けないほうがいいわね。色んな調合をすれば慣れるでしょうし、私もいつも付いてあげられるわけでもないしね」
「はい、今回はやめておきます。花酒の調合に専念しますね」
「それがいいわ。じゃあ、そろそろ帰るわね。またね、ミーフェ」

 オルネラさんを見送って、私は小瓶へと詰めた愛の秘薬を手に取る。ほんのり桃色の液体を見つめ、さてこれをどうしようかと考える。
 ずっと保存できるものではないし、かといって誰かにあげられるものでもない。

「……んー…グランに使っても効果ないだろうしなぁ…」
「じゃあボクが効くようにしてあげよっか??」

 すっと手が伸びてきて、私が持っていた小瓶を摘む。それを追って視線を後ろに向ければ、宙に浮くヴィアが小瓶の中に何か黒い液体を注いでいるのが見えた。

「え、ちょっとヴィア、何を入れて…」
「えー?魔界産の精力増強剤だよー。これならグランくんにも効くでしょ」

 明らかに全部は入らないだろうはずの量の液体を小瓶に入れ、上下に振って混ぜるヴィアに私はなんとも言いがたい目を向ける。

「ヴィア、私は別にグランに使おうと思ってたわけじゃなくて……」
「うんうん、分かってるよミーフェちゃん。いつもと違うグランくんが見たいんだよねー。優しさだけが愛じゃないもんねー?大丈夫大丈夫、ボク分かってるから!」

 ぜんぜん分かってない。今の状態では何を言っても聞きそうにないので、私は諦めて小瓶の液体が変貌していくさまを見つめるしかない。ああ、どんどん黒くなっていく……うかつに捨てることも出来なくなってしまった。

「はい!これを摂取させればグランくんもイチコロだよ!」
「……うん、はい。ええと、どうも」

 にこにこと輝く笑顔のヴィアに小瓶を返された。綺麗な淡い桃色だった液体は、無残にも真っ黒く変えられてしまっている。強い粘性を持つようになったそれは、なぜか表面が泡立っている。
 これは大丈夫なのか、と思って、私はその小瓶のふたを開けた。

「え、あ…あれ…?」

 仄かな甘い香りを嗅いだ途端、なぜか体から力が抜けて、私はその場に座り込んでしまう。小瓶は私の手から離れて床を転がり、黒い液体が零れて広がっている。
 次第に体が熱くなり、お腹の奥が疼くような感覚が湧き上がってきた。これは、まさか……。

「ん…っ、ぁ…まさか、ヴィア…」
「待って!心外だよ!!ボクは本当にグランくんに効くようにしただけなんだよ!そりゃ、魔界産だからミーフェちゃんにも効くだろうけど、でも匂いだけで効果が出るなんで思わないじゃん!ボクは無実!」
「それは……そう、かも…?」

 まともに頭が働かなくて、ヴィアの言い分が正しいように聞こえてくる。彼女は善意からしてくれたのだし、責めるのは違うかも、しれない…。
 ヴィアは私の傍へ降りてきて、視線を合わせるように床へ膝をつく。

「ミーフェちゃん、まだ完全じゃないんだねー。こんな媚薬が効くくらいだし……ねえ、ちょっと触ってもいい?」
「…っ、だめ…」

 今は平気だけど触られるとどうなるか分からないので断ると、ヴィアは金色の瞳を細めて私を床へ押し倒した。前もこんなことあったなぁ…。

「だめって言われても触るのがボクだよー。ふふーん、えいっ」
「ひゃ…っ、ヴィア…!こら…っ」

 ヴィアは私の胸をつつき、反応を楽しんでいる。やめさせたいのに体が上手く動かない私は、もうされるがままの状態だ。
 そうしてしばらく私の胸をつついていたヴィアは、何かを考えるように顎に手を添える。

「んー…ミーフェちゃんのおっぱいの触り心地を確かめたいけど、そろそろグランくんが帰ってきそうだしなぁ。うーん、ひと揉みだけして…」

 不意にヴィアが入り口を見て固まった。私からは何も見えないが、おそらくグランが帰ってきたのだろうと分かる。彼以外で彼女がこんな風になるのは知らないし。

「やっば、ボク帰るね!じゃ!!」

 ヴィアの行動は早く、すぐさまその場から消え去った。何処にも気配がないので本当に帰ったのだろう。
 私はなんとか体を起こし、ヴィアのせいで溜まり始めた熱を静めるように息を吐き出す。

「はぁ…」
「ミーフェ、大丈夫か?」
「…う、ん…」
「まったく大丈夫そうに見えないが……ミーフェ?」

 息を吐き出す程度で静めることは出来ず、熱は私の思考を溶かす。グランに触れたくて堪らなくなった私は、かがんでくれた彼に抱きつく。少し驚きながらも、彼は抱きしめ返してくれた。

「グラン、私…あなたに触れて欲しいの…お腹の奥にあなたが欲しい…」
「っ、君から私を求めてくれるとは……嬉しいよミーフェ」
「ん…っ」

 グランの口付けを受け入れ、何度も食むように繰り返す。ちゅぷ、と絡められる舌が熱くて気持ちよくて、私は口付けに夢中になる。

「…はっ、可愛い…ミーフェ、ミーフェ」
「んん、は、ぁ…ぐら、ん…っ」

 そのまま、床へ押し倒される。求めて、求められて、繰り返し口付けられる。長く口付けをしたからか、どちらともつかない唾液が、私の唇の端から零れていく。
 しばらく口付けを交わしていたが、彼は唇を離して起き上がり、私を抱きかかえて二階へと向かう。

「ん、ぁ…、ぐら、ん…?」
「あそこでするには少しな。続きは寝室でしよう」
「……ん」

 もっと考えなければいけない事はあるはずなのに、私の頭の中はグランと気持ち良くなることだけを考えている。
 大好きな彼にたくさん触れて欲しい、いっぱい気持ち良いことをしたい……。

「ミーフェ…たくさん、気持ち良くなろうか」
「ぅん…気持ちよく、いっぱい…」

 寝室に運ばれ、寝台へ少し乱暴に押し倒された。
 その後、たくさん気持ちいいことをして、たくさんグランに愛された私は快楽による疲労でぐっすりと眠りに落ちていった。

 *

「ああ、やはり媚薬か。なんとなくそうだろうとは思っていたが、私を積極的に求めてくれるのが嬉しくてな。これはこれで良いが、次は君自身の言葉で求めて欲しいな」

 そんな事を翌朝の寝台の中で言われ、私は小さく頷いておいた。そして、私だけすごく乱れた姿を見られたのがもやもやするので、今度はグランに媚薬を使おうと心に決めた。
 いつかの私が後悔するなんて、今の私には知る由もなく。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...