許せなかった僕たちへ

古川ゆう

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一章

1.3 予兆

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近所の山へと僕達は歩いていたが、このまま太陽に溶かされるのではないかとそう錯覚していた。

「暑い…。」蓮はそう言うと瞬く間に智子から譲り受けたジュースをゴクゴクと喉へと流し込んだ。

「も~そんなに飲んだらなくなっちゃうよ、わたし達のあげないんだからね!」
葵は蓮に怒りながら言った。

「ね!結人!」

「そうだよ、蓮、考えて飲まないと。」
結人も葵と一緒になって蓮を叱った。

蓮は口を尖らし
「はいはい、分かりましたよ~。」
そう言って蓮は手に持っていたペットボトルの蓋を閉めた。

「それはそうと、どこの山登るか決めてるの?」結人は蓮に聞いた。

蓮は歩きながら「うーん、どうするかなぁ。」両手を頭の後に回した。

「行った事ない山の方がわくわくするし、秘密基地作るにもいいだろ?」

「まあ、たしかにね。」
蓮にしてはまともな発言をするものだなと、結人は少し関心していた。

すると思い出した様に
「あ、そういやこないだ他の友達と話してた時にさ。」と蓮が口を開いた。

「こっから10分かけて歩いたとこの山の入り口に看板があったらしくて、立ち入り禁止の。」

「でもな、看板があったらしいんだけどつい最近、その看板がなくなったんだってさ。」

そう友達が言っていたと蓮は2人に話した。

「どうしてだろうね?」
葵が不思議そうな顔をした。

「その山、工事か何かしてて、終わったから看板のけたんじゃない?」
結人は言った。

「そこ行ってみね?」

「えー、何があるかわかんないよ?」
不安そうに葵は言った。

「大丈夫だって、アイス当たったし
何かあったら逃げたら大丈夫!」
余裕の表情を蓮は見せた。

「よし、場所はわかってるから行ってみるか。」そう言うと、3人は再び暑さに溶けそうになりながらもひたすらに目的地へと歩いた。


3人は10分程歩き、ようやく山の麓まで着いた。

辺りはちらほらと民家があるだけで周りは山で囲まれていた。

元々、この市内は山が多く都会ではない。

田舎なのだ。

蓮が先ほど言っていた立ち入り禁止の看板があったであろう入り口へと着いた。

日の光を木々達が遮っており山奥からは冷たい風が流れてくる。

葵は服をパタパタと動かし「涼しいね。」と
喜びを見せた。

「こんなところ初めて来た。」
結人は少し興奮していた。

山の入り口から上の方を見ると人が歩ける程度の補正はされており獣道程ではなかった。

「ここ、登ってくの?」
「え~しんどいよー」
嫌そうな顔をする葵。

「頑張ろうよ葵」
結人は葵を励ました。

「うーん、はいはいわかりましたよ。」
葵は、渋々承諾したのだった。

「じゃあ、登るぞ。」
蓮は2人に言った。

3人は入り口から木々が生い茂る山の中へ足を踏み入れたのだ。

蓮、葵、結人、この順番で山を上がる事にした。 

最後尾を歩いていた結人だけが
この時何か嫌な予感がしていた。

気のせいだろうと思い他の2人には言わなかった。

その予感が的中する事になるとは結人は思ってもみなかった。



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