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第2章
34話「旅路4」
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「エヴィ様ー!見えたよー!」
「本当か!?」
シロ達は荒野を抜けた先に再び現れた草原の小高い丘を登っていた。
その丘はかなりの傾斜でシロ達は滑り落ちないようにゆっくりと歩みを進めていた。
その頂上にいち早く着いたナイは手を振りながらシロ達を呼ぶ。
その声に反応したシロ達は駆け足で丘を登った。
「はぁはぁはぁ……」
「ほら!あっち!」
息を切らしながら登った丘の頂上でナイが指し示す方向に目を凝らすと薄ら街のような物が見える。
「本当だ……やっと着いたんだね!」
「シロさん!やったぁ!!」
余程嬉しかったのか、リリスは歓喜の声を上げながらシロに抱きついた。
彼女にとって初めての旅は体力的にも精神的にも厳しかったんだろう。
しかし、それを乗り切った喜びを爆発させる彼女の美しい金髪をそっと撫でた。
ウェステの街を出発して7日目
シロ達はついに人間の街の首都ケントルムに到着したのだった。
「この距離だと夕方前には着けるかな。街はもう近いけど魔物は出るから気をつけて進もう」
エヴィエスが日差しを遮るために手を額に当てながら皆の気が緩まないように声を掛ける。
想定したよりも時間は掛かったが、魔物に襲われる機会も少なく順調な旅路だった。
それは、エヴィエスが旅に慣れていることが大きかった。
3人の旅だったらここまで順調にはいかなかっただろう。
「エヴィ……ありがとう」
シロは抱きついているリリスの肩の上から右腕を伸ばし、エヴィエスに拳を向ける。
「ああ、楽しかったな」
そう爽やかな笑顔を見せたエヴィエスはシロの突き出した拳に自身の拳をコツンとぶつけた。
「って言うか、いつまでシロにくっついてんのよ!」
アリスがリリスの首元を引っ張りシロから引き離す。
「あぁ、ずっとこのままが良かったのに……」
そう言いながらリリスは残念そうな顔をしている。
「まあ、でもこのままじゃ歩けないからね」
そう冷静を装いつつも、女性とここまで密着した経験がないシロの心臓はバクバクと鼓動を刻んでいた。
彼女の柔らかい感触がまだ残っているが、シロはすぐに忘れるよう首を左右に振る。
自分を肯定してくれた2人をやましい目で見るなどあり得ないのだ。
「おいナイ!1人で走って行くな!」
魔物が出ると言った傍からナイは1人で勢いよく丘を降りて行く。
その後を追ってエヴィエス急いで丘を降っていく。
「さあ、私達も行くわよ!」
「はい!」
アリスとリリスも2人の背を追うが、シロは金髪の双子の背中を見つめていた。
みんな疲れている筈だが目的地が見えたため足取りが軽い。
やっとここまで来たんだ。
まだ目的を果たしたわけではない。
しかし、皆と共にこの旅をやり遂げたのだ。
それはこれまで味わったことのない充実感をシロに与えていた。
「シロー!何やってんのよ!」
「シロさーん!行きましょー!」
シロが付いてきていないことに気がついた2人が振り返り、こちらに向かって大きく手を振る。
「ああごめん!今行く!」
シロは2人に向かって勢いよく丘を降るのだった。
◆◆◆◆◆◆
ケントルムの街は人口約10万人の人類最大の都市だ。
ウェステと大きく違うところは街をぐるりと囲う壁の規模感だろう。
その石造りの壁は頑丈で見上げると何人もの行使者が見張りをしている。
かなり高いので、遠くまで見渡せるだろう。
「すごいね……」
「ああ、ウェステでは壁はもう使われていなかったけどケントルムは今も使われてるからね」
壁の頂上を見上げながら呟いたシロにエヴィエスが同意する。
「へぇ、ウェステと全然違うのね。それに壁の外には農園とかはないのね」
「うん、ここでも魔物に襲撃されるからね。壁の外に街を作ってるウェステの方が特殊なんだよ」
「あっ!あったよ入り口!」
ナイが指を指した方向に目を向けると壁の一部がポッカリ開いている。
「じゃあ行こうか!」
シロ達は入り口を管理するギルド職員にギルドカードを見せるとあっさり入ることを許された。
街の内部に通じるトンネルは、僅かに出口から光が注ぐだけで薄暗く狭い。
光が見える出口まで遠いというとこは、それだけ壁の厚いということだろう。
「あっさり入れてくれるんだね」
シロはトンネル内部の冷たい石をペタペタと触りながらエヴィエスに視線を向ける。
「だってシロ銀だろ?銀は同調者じゃないとなれない階級だからね」
「そうなんだ。じゃあもしかして同調者って結構少ない?」
「かなり少ないよ。同調者は大体千人に一人くらいって言われてるんだ」
「え?そんなに少ないの!?」
「うん、だからウェステの街でもルウムさん以外同調者は居なかっただろ?強い人器使いはここか東のミズラフで暮らしてるんだ」
「確かに……」
エヴィエスの言う通りだとすると平和なウェステに人器使いは少なくていい。
みんなここや東で魔物と戦っているのだろう。
「だからさ、シロは自分がどれだけ凄い存在かってことを自覚しておいた方がいいよ」
両手を頭の後ろで組みながら歩くエヴィエスは横で歩くシロに視線を向けずに軽く笑った。
「あと、銀以上カードを持った人はかなりの特権があるって言われているみたい。それが何かは俺には分からないけどね」
「そうなんだ……」
「まあ、それはギルドに着いてから確認してみればいいさ」
「あっ!出口です!」
リリスとナイが出口に向かって走る。
その後ろを追うようにシロもトンネルを出ると目の前には田園地帯が広がっていた。
「何というか……ウェステとあまり違いはないわね」
アリスが2つに束ねた金髪のなびかせながら、少しトーンが下がった口調で呟く。
「まあ、農園なんてみんな対して変わらないよ。この街が一番凄いのは全てが壁の中にあるってことなんだ」
確かにエヴィエスの言う通り、農園の端にある壁を追っていくと途中で先が見えなくなる。
これほど大きい壁を作るのに一体どれだけの労力を費やしたのだろうか。シロには想像もできない。
それに、この街は南と西の田園地帯と北の商業地帯、東の住宅地帯の3つに分かれているんだ。商業地帯に行ったらウェステよりも栄えているはずだよ。
「へぇ、そうなの。じゃあ後で行ってみましょう」
「うん、そうだね」
アリスの誘いにシロは頷く。
「とりあえず、住宅地帯に宿があるはずだから行ってみようか」
「分かったわ」
「おいナイ!そっちじゃない!」
農道を勝手に走って行くナイをエヴィエスは慌てて呼び止めた。
こうして新しい出会いもあったシロ達の旅は終わりを告げた。
この街でまた新しい出会いがあるのだろう。
シロは遠くに見える街を見ながら胸を躍らせるのだった。
「本当か!?」
シロ達は荒野を抜けた先に再び現れた草原の小高い丘を登っていた。
その丘はかなりの傾斜でシロ達は滑り落ちないようにゆっくりと歩みを進めていた。
その頂上にいち早く着いたナイは手を振りながらシロ達を呼ぶ。
その声に反応したシロ達は駆け足で丘を登った。
「はぁはぁはぁ……」
「ほら!あっち!」
息を切らしながら登った丘の頂上でナイが指し示す方向に目を凝らすと薄ら街のような物が見える。
「本当だ……やっと着いたんだね!」
「シロさん!やったぁ!!」
余程嬉しかったのか、リリスは歓喜の声を上げながらシロに抱きついた。
彼女にとって初めての旅は体力的にも精神的にも厳しかったんだろう。
しかし、それを乗り切った喜びを爆発させる彼女の美しい金髪をそっと撫でた。
ウェステの街を出発して7日目
シロ達はついに人間の街の首都ケントルムに到着したのだった。
「この距離だと夕方前には着けるかな。街はもう近いけど魔物は出るから気をつけて進もう」
エヴィエスが日差しを遮るために手を額に当てながら皆の気が緩まないように声を掛ける。
想定したよりも時間は掛かったが、魔物に襲われる機会も少なく順調な旅路だった。
それは、エヴィエスが旅に慣れていることが大きかった。
3人の旅だったらここまで順調にはいかなかっただろう。
「エヴィ……ありがとう」
シロは抱きついているリリスの肩の上から右腕を伸ばし、エヴィエスに拳を向ける。
「ああ、楽しかったな」
そう爽やかな笑顔を見せたエヴィエスはシロの突き出した拳に自身の拳をコツンとぶつけた。
「って言うか、いつまでシロにくっついてんのよ!」
アリスがリリスの首元を引っ張りシロから引き離す。
「あぁ、ずっとこのままが良かったのに……」
そう言いながらリリスは残念そうな顔をしている。
「まあ、でもこのままじゃ歩けないからね」
そう冷静を装いつつも、女性とここまで密着した経験がないシロの心臓はバクバクと鼓動を刻んでいた。
彼女の柔らかい感触がまだ残っているが、シロはすぐに忘れるよう首を左右に振る。
自分を肯定してくれた2人をやましい目で見るなどあり得ないのだ。
「おいナイ!1人で走って行くな!」
魔物が出ると言った傍からナイは1人で勢いよく丘を降りて行く。
その後を追ってエヴィエス急いで丘を降っていく。
「さあ、私達も行くわよ!」
「はい!」
アリスとリリスも2人の背を追うが、シロは金髪の双子の背中を見つめていた。
みんな疲れている筈だが目的地が見えたため足取りが軽い。
やっとここまで来たんだ。
まだ目的を果たしたわけではない。
しかし、皆と共にこの旅をやり遂げたのだ。
それはこれまで味わったことのない充実感をシロに与えていた。
「シロー!何やってんのよ!」
「シロさーん!行きましょー!」
シロが付いてきていないことに気がついた2人が振り返り、こちらに向かって大きく手を振る。
「ああごめん!今行く!」
シロは2人に向かって勢いよく丘を降るのだった。
◆◆◆◆◆◆
ケントルムの街は人口約10万人の人類最大の都市だ。
ウェステと大きく違うところは街をぐるりと囲う壁の規模感だろう。
その石造りの壁は頑丈で見上げると何人もの行使者が見張りをしている。
かなり高いので、遠くまで見渡せるだろう。
「すごいね……」
「ああ、ウェステでは壁はもう使われていなかったけどケントルムは今も使われてるからね」
壁の頂上を見上げながら呟いたシロにエヴィエスが同意する。
「へぇ、ウェステと全然違うのね。それに壁の外には農園とかはないのね」
「うん、ここでも魔物に襲撃されるからね。壁の外に街を作ってるウェステの方が特殊なんだよ」
「あっ!あったよ入り口!」
ナイが指を指した方向に目を向けると壁の一部がポッカリ開いている。
「じゃあ行こうか!」
シロ達は入り口を管理するギルド職員にギルドカードを見せるとあっさり入ることを許された。
街の内部に通じるトンネルは、僅かに出口から光が注ぐだけで薄暗く狭い。
光が見える出口まで遠いというとこは、それだけ壁の厚いということだろう。
「あっさり入れてくれるんだね」
シロはトンネル内部の冷たい石をペタペタと触りながらエヴィエスに視線を向ける。
「だってシロ銀だろ?銀は同調者じゃないとなれない階級だからね」
「そうなんだ。じゃあもしかして同調者って結構少ない?」
「かなり少ないよ。同調者は大体千人に一人くらいって言われてるんだ」
「え?そんなに少ないの!?」
「うん、だからウェステの街でもルウムさん以外同調者は居なかっただろ?強い人器使いはここか東のミズラフで暮らしてるんだ」
「確かに……」
エヴィエスの言う通りだとすると平和なウェステに人器使いは少なくていい。
みんなここや東で魔物と戦っているのだろう。
「だからさ、シロは自分がどれだけ凄い存在かってことを自覚しておいた方がいいよ」
両手を頭の後ろで組みながら歩くエヴィエスは横で歩くシロに視線を向けずに軽く笑った。
「あと、銀以上カードを持った人はかなりの特権があるって言われているみたい。それが何かは俺には分からないけどね」
「そうなんだ……」
「まあ、それはギルドに着いてから確認してみればいいさ」
「あっ!出口です!」
リリスとナイが出口に向かって走る。
その後ろを追うようにシロもトンネルを出ると目の前には田園地帯が広がっていた。
「何というか……ウェステとあまり違いはないわね」
アリスが2つに束ねた金髪のなびかせながら、少しトーンが下がった口調で呟く。
「まあ、農園なんてみんな対して変わらないよ。この街が一番凄いのは全てが壁の中にあるってことなんだ」
確かにエヴィエスの言う通り、農園の端にある壁を追っていくと途中で先が見えなくなる。
これほど大きい壁を作るのに一体どれだけの労力を費やしたのだろうか。シロには想像もできない。
それに、この街は南と西の田園地帯と北の商業地帯、東の住宅地帯の3つに分かれているんだ。商業地帯に行ったらウェステよりも栄えているはずだよ。
「へぇ、そうなの。じゃあ後で行ってみましょう」
「うん、そうだね」
アリスの誘いにシロは頷く。
「とりあえず、住宅地帯に宿があるはずだから行ってみようか」
「分かったわ」
「おいナイ!そっちじゃない!」
農道を勝手に走って行くナイをエヴィエスは慌てて呼び止めた。
こうして新しい出会いもあったシロ達の旅は終わりを告げた。
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