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1人と1匹の一夜

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「……フレイディ様」

 アマリアがぽつんと呟いた名前に、今はなんの返答も返ってこない。

「ああ、アマリア!」

「どうかしたのかい」

「時間があるなら、お茶でも一緒に飲まないか?」

 いつもならそういう、明るい返事が返ってくるのに。

 アマリアは自分でおかしく思った。

 そんなことはわかりきっていたのに。

 ……口に出すだけ、胸に迫ってくるだけだと。

 そんなことは。

 かり、かりっ。

 そのとき、奇妙な音がした。

 アマリアは唐突な異音に、びくっとしてしまう。

 こんな夜に、誰。

 侵入者?

 恐ろしくなったのだけど、数秒で正体に気が付いた。

 くぅん。

 ……くーん……。

 小さな声が聞こえてきた。

 アトリエの窓のほうからだ。

 この声は知っている。

 知っているどころではない。

 この宮廷にやってきてから、ずっと同じ場所に暮らしていたのだから。
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