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今夜はひとつ、床の中

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 アマリアのその拗ねたような声は、くすっという笑いで終わらされてしまった。

「からかってなんていないさ。……でもそのことは覚えておいておくれ」

 しかし、後半は少し声が固くなっていた。

 アマリアが混乱の中でもそれに疑問を覚えたとき、フレイディの顔が、すっと近付けられた。

 どくんっとアマリアの心臓が跳ねる。

 まさか、こんな至近距離で近付かれるなんて、まさか……。

 そう思って、ぎゅっと目を閉じて身を縮めたのに。

 ふわっとやわらかなものが触れたのは、額だった。

 アマリアのやわらかな髪をかき分けて、額にくちづけが落とされる。

 アマリアはどくどく速くなった鼓動は治まらないまま、きょとんとした。

「さ、おやすみ。今のところはなにもしないからね」

 おやすみ……。

 おやすみ……。

 そして額にくちづけ……。
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