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雨の立ち往生

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「いえ、乗っていた者は無事ですが、馬が足を痛めてしまったようなのです」

 御付きは表情を固くして説明した。

 馬が雨のぬかるみに足を取られてふらついた。

 そのために馬車が傾き、車輪が破損してしまった。

 そして馬は、捻挫かなにか、とにかく走るのが難しくなってしまったようだ。

「困ったな」

 フレイディはもっと顔をしかめた。

 この馬車は無事だろうが、貴族の乗る馬車が遠出をする際、単体で走ることは稀なのだ。

 それは万一のことがあっては困るからだ。

 領内の大概は平和とはいえ、どこでも安全とは限らない。

 賊のようなものがいるような場所だってあるのだ。

 それを防ぐために御付きや護衛がいるのだし、それらの者なしで走るのは、防備という意味で無謀といえた。

「すぐに領へ連絡をやります。無事だったほうの馬を走らせましょう」

「頼む」

 馬は二頭が一組で馬車を引いていた。

 よって、怪我をしなかったほうの馬にひとが乗り、先立って伝令をするということだ。
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