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雨の立ち往生

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「夫婦なのだから、こういうときは寄り添っているものだと思っただけだ」

 きゅっとアマリアの手を握って、フレイディは言う。

 穏やかな口調だった。

 その声にまた、何故だかどきどきしてしまいながら、アマリアはなんとか言った。

「そういうものなのでしょうか」

「そういうものだとも」

 しれっと肯定してくるフレイディ。

 それが本当のことなのか、今のアマリアに確かめるすべはなかったのだけど、ただ、確かなことがあった。

 それは手を包んでくれているフレイディの手のあたたかさは、心地良いものだったということだ。

 手という部分に触れられれば、嫌悪を伴うこともある。

 信頼していない相手であれば、あまり触れられたくない場所だ。

 でも嫌だなんて思わない。

 それどころか胸は心地いい意味で騒いでしまうし、あたたかさには安心した。

 だからアマリアは、子供扱いでも、夫婦としてでも、どちらでもいいか、と思ってしまった。

 激しい雨の中でも、触れ合った手があたたかくて、馬車の中は穏やかだったのだけど。

「……っ!? なんだ!?」

 急にがくん、と馬車が揺れた。

 急停止する。

 フレイディが声を詰め、アマリアの手をぎゅっと握った。

 アマリアも驚いてしまった。

 あまりに急に止まったので、前に傾いでしまってそれにひやっとしたくらいだ。
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