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肖像画の真実
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そこは釘を刺しておかなければ、と言ってそう言ったのに、それはフレイディに一蹴されてしまった。
笑顔の一蹴だった。
「そのようなこと、わかっているよ。きみはそんな人物ではないし、そもそも、栄誉がついてくるなど、今、知ったのだろう」
アマリアのことを信頼している、という口調で言葉だ。
嬉しくなりかけたアマリアだったが、指摘するべきところが一点だけあった。
「ええ。貴方の説明不足のせいで」
そもそも説明がなかったのだから、栄誉があるなど今、知ったのだといえる。
じとっとした目で言ったアマリアに、フレイディは苦笑いした。
頭に手をやる。
「はは、手厳しい」
苦笑されて、アマリアはもう一度、ため息になりそうだったけれど、それはひとまず呑み込んだ。
「そういうことですから、当初の予定通り、一年間で描き上げるように進めたいと思います。間に合うのですよね……?」
質問にはすぐに「ああ」と肯定が返ってきた。
「一応、二十八になる頃までには、という予定でいるからね。父上もまだまだ元気でいらっしゃるし、そう急ぐこともないんだ」
そういうものなのね、とアマリアは思った。
エヴァーレ家はアマリア以外に子供がいない。
つまり直接の継承をする息子という存在がいないのだから、貴族のそういったことにアマリアはあまり詳しくなかった。
笑顔の一蹴だった。
「そのようなこと、わかっているよ。きみはそんな人物ではないし、そもそも、栄誉がついてくるなど、今、知ったのだろう」
アマリアのことを信頼している、という口調で言葉だ。
嬉しくなりかけたアマリアだったが、指摘するべきところが一点だけあった。
「ええ。貴方の説明不足のせいで」
そもそも説明がなかったのだから、栄誉があるなど今、知ったのだといえる。
じとっとした目で言ったアマリアに、フレイディは苦笑いした。
頭に手をやる。
「はは、手厳しい」
苦笑されて、アマリアはもう一度、ため息になりそうだったけれど、それはひとまず呑み込んだ。
「そういうことですから、当初の予定通り、一年間で描き上げるように進めたいと思います。間に合うのですよね……?」
質問にはすぐに「ああ」と肯定が返ってきた。
「一応、二十八になる頃までには、という予定でいるからね。父上もまだまだ元気でいらっしゃるし、そう急ぐこともないんだ」
そういうものなのね、とアマリアは思った。
エヴァーレ家はアマリア以外に子供がいない。
つまり直接の継承をする息子という存在がいないのだから、貴族のそういったことにアマリアはあまり詳しくなかった。
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