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アトリエの惨状

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「本当にすまなかった」

 アトリエに続く渡り廊下のど真ん中。

 深々と頭を下げるフレイディと、その前で腕を組んでしかめっ面をしているアマリア。

 見るからにアンバランスなやりとりである。

 しかし怒っても怒りきれない。

 何故なら描きはじめてだいぶ経つ、お気に入りになりそうだと確信しつつあった絵を、散々な状態にされてしまったのだから。

 フレイディの横に、気まずそうな様子で腰を下ろした白い大型犬・レオンの悪戯によって。

 レオンはフレイディの飼い犬で、今日はお出掛けついでに散歩をさせようと、連れてきていたそうだ。

 それがあだになってしまった形である。

「まったく、わんちゃんの行動くらい管理してくださいませ! どうしてアトリエに入り込んだっていうんでしょう!」

 アマリアはちらっとレオンを見た。

 絵の具だらけになってしまっている、白い毛並み。

 フレイディと同じ、金色の瞳をしていた。

「ああ……それなんだが、なにか甘いものでもあったのではないだろうか……?」

 フレイディは、アマリアの剣幕にだいぶ引いてしまったようなので、少々濁ってはいたけれどそう言った。

 甘いもの。

 アマリアはしばし考えることになる。

 甘いもの……お菓子や砂糖の類なんてない。

 絵を描くための部屋なのだから当然だけど。

 でも、『甘い香り』のするものは確かに……。
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