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一緒に本屋さんへ
③
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それに今だって。
男の子と二人で本屋さんに来て、一緒に本を見て回って、本についての話をしている。これも美久にとっては初めて体験することだった。
女の子の友達となら何回もしたことがあるけれど、なんか違うものだなぁ、と思ってしまった。
でもやっぱりそれは、楽しいとか、ちょっとどきどきはするけれど、嬉しいとか、そういう明るい気持ちであった。
快がその新しい本を見ている間に、美久はその近くにある棚に視線を向けた。偶然、そこには美久の好きな作家の本があった。
あ、こんなところにある。今日はお小遣いの都合で買えないけど、ちょっと見てみたいな。
思って、美久はその本を取ろうとしたのだけど、ちょっと高いところにあった。手を伸ばせば届くと思ったのだけど、本の下のところにしか当たらない。
でも伸びをすれば。
思って伸び上がろうとしたのだけど、その前になにかが手に触れた。
それはさっき見て、というか、見入ってしまった手のようで。
一瞬、なにがあったのかわからなかった。
ただ、その手が見た通りごつくてあたたかかったことをはっきり感じた。
「ダメだよ、危ないじゃん」
美久の手。やんわり握って外されてしまった。そうしてから改めて、その手が本を抜き出す。
美久は下のほうしか届かなかったのに、あっさり抜き出したのだ。
美久は手を下ろして、なんだかぼんやりしてしまった。
「高いところを無理に取ろうとしたら危ないって」
言われてやっと、はっとした。
快が取ってくれたのだ。おまけに危ないから、なんて自分を気づかってくれて。
かっと顔が熱くなった。
手が触れたこともそうだし、危ないとか気を使ってくれたのもそうだし、本を取ってくれた優しさもそう。すべてが美久の頬を熱くした。
「あ、ご、ごめんね……」
ここまでだいぶ普通に話せるようになっていたのに、またしどろもどろになってしまった。
そんな美久に、快はふっと笑って、「はい」と美久の取りたかった本を差し出してくれる。美久はどこか夢心地で「ありがとう」と受け取った。
でもその本を開いても、どきどきと心臓がうるさくて中身は頭にちっとも入ってこなかったけれど。
男の子と二人で本屋さんに来て、一緒に本を見て回って、本についての話をしている。これも美久にとっては初めて体験することだった。
女の子の友達となら何回もしたことがあるけれど、なんか違うものだなぁ、と思ってしまった。
でもやっぱりそれは、楽しいとか、ちょっとどきどきはするけれど、嬉しいとか、そういう明るい気持ちであった。
快がその新しい本を見ている間に、美久はその近くにある棚に視線を向けた。偶然、そこには美久の好きな作家の本があった。
あ、こんなところにある。今日はお小遣いの都合で買えないけど、ちょっと見てみたいな。
思って、美久はその本を取ろうとしたのだけど、ちょっと高いところにあった。手を伸ばせば届くと思ったのだけど、本の下のところにしか当たらない。
でも伸びをすれば。
思って伸び上がろうとしたのだけど、その前になにかが手に触れた。
それはさっき見て、というか、見入ってしまった手のようで。
一瞬、なにがあったのかわからなかった。
ただ、その手が見た通りごつくてあたたかかったことをはっきり感じた。
「ダメだよ、危ないじゃん」
美久の手。やんわり握って外されてしまった。そうしてから改めて、その手が本を抜き出す。
美久は下のほうしか届かなかったのに、あっさり抜き出したのだ。
美久は手を下ろして、なんだかぼんやりしてしまった。
「高いところを無理に取ろうとしたら危ないって」
言われてやっと、はっとした。
快が取ってくれたのだ。おまけに危ないから、なんて自分を気づかってくれて。
かっと顔が熱くなった。
手が触れたこともそうだし、危ないとか気を使ってくれたのもそうだし、本を取ってくれた優しさもそう。すべてが美久の頬を熱くした。
「あ、ご、ごめんね……」
ここまでだいぶ普通に話せるようになっていたのに、またしどろもどろになってしまった。
そんな美久に、快はふっと笑って、「はい」と美久の取りたかった本を差し出してくれる。美久はどこか夢心地で「ありがとう」と受け取った。
でもその本を開いても、どきどきと心臓がうるさくて中身は頭にちっとも入ってこなかったけれど。
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