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オープニング

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 ただ、学校生活が楽しくないとかそういうことはなかった。
 授業は楽しいし、勉強は得意だから苦でもないし、テストなどでも割といい点が取れる。
 こういう地味な女の子にありがちな『運動が苦手』ということもあまりない。
 そりゃあ、運動部に入っているような子たちには到底及ばない。
 けれど走れば人並みのタイムは出せるし、マラソン大会で脱落、なんてこともない。
 だから体育で恥をかいたりという経験もほとんどない。よって、体育の授業も嫌いではない。
 球技などのレクリエーションなどは苦手だけど。
 球技自体は嫌いではないけれど、レクリエーションは、あくまでお遊び。真剣勝負ではない。
 クラスの中心女子たちメインできゃっきゃと遊ぶようなものだから、美久は努めてボールを手にしないように、ドッジボールなら当たりもしないように……と意識して過ごすのだった。
 そう、強いて言うならそういうレクリエーションや集会などが苦手な以外は、おおむね学校生活は楽しいものだったといえる。
 活躍や目立つなんてことはできないし、そうしたいとも思わないけれど、うまくやればいじめられることもない。平和に過ごせる。
 学生生活としては、じゅうぶんではないか。
 美久のスタンスとしてはそんなもので、それに従って、今も先生が「ここ、わかるひと?」と挙手をつのっても、視線を逸らすだけだった。
 予習をしてきたからわかる、けれど。クラスメイトの前で堂々とは言えない。
 そして指名ならともかく、手をあげるのが自由なら、みずからそういうことはしたくないというわけ。
 でもそんな美久が気にされるはずはない。
 先生も「お、じゃあ鈴木、前に出て書いてみろ」と、勉強が得意な男子生徒を選んだ。
 彼が黒板の前に出て答えを書くのを……美久もしっかりわかっていた答え、を書くのを。
 机に着いたままただ見守ったのだった。
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