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過ぎていく季節

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 月の満ち欠けが何周もするうちに、当たり前のように月日は過ぎていった。
 冬を超え、春が近づいてくる。
 もうずいぶんあたたかい。
 もう少しでコリンと出会ってから一年が経とうとしているだろう。
 うららかな初夏の窓から「こんにちはっ」とやってきたコリン。
 あのときはただ無邪気なオオカミ少年であったのに、もうその様子はすっかり抜けていた。
 あのときから言っていた。
 「あと一、二年もすれば立派な大人の狼男になるんだから」と。
 まったくそのとおりだった。
 いつしか子供らしさはすっかり抜け、体つきもより精悍になった。
 背も伸びておそらくノアより少し高くなったのだと思う。
 顔つきも少し変わったようだ。
 ただ、無邪気さは多少残っていた。
 それは元々の性格というか、性質なのだろう。
 今夜はノアの寝室で過ごしていた。
 満月の近い夜のことだ。
 例によってそわそわしだしたコリンだったが、今夜はノアのほうから誘った。
 誘った、といっても体が近づいたときに身を寄せて、目を見つめただけだが。そこまで積極的になるのは恥ずかしい。
 しかしコリンとてこういうことにはもうすっかり慣れてしまっている。
 自身が興奮を誘われる時期であることも手伝ったのだろう。
 すぐにノアを抱きしめ、頬に手を触れてくちづけてくれた。
 何度もキスをして、それだけで興奮はじわじわと高まっていく。
 キスを交わしながらコリンの手がノアの体に伸ばされる。
 シャツの裾から手が入ってきて、さわさわと触れられる。
 今ではコリンの手が触れるだけで、快感の予感を拾ってぞくりと震えてしまう。
 でも彼の手でなければこれほど感じない、と思う。
 そのうちコリンは少し屈んでノアを抱き上げた。
 いわゆるお姫様だっこであり、こうされるのは少し恥ずかしいのであるが抵抗するのもはばかられる。
 よってノアはただコリンの首に腕を回してそのまま受け入れた。
 コリンが向かったのはノアのベッド。
 もう二人で過ごすのにも馴染んだ場所。
 今では行為はもっぱらノアのベッドになっていた。
 ソファでは狭いし不便。コリンの体が成長したこともあり。
 そしてコリンはそういうことのあったあとは、ノアのベッドで眠っていくのである。
 自分のベッドで恋人が一夜、隣で眠ってくれること。
 早起きのノアは大概コリンより早く目が覚めるのだが、すやすやと眠る彼を見るたびにあたたかな気持ちを味わうのであった。
「なぁ、ノアは……ずっとここで魔女をし続けるの?」
 体を合わせながら、その夜ふとコリンが聞いてきた。
 ノアはそれに不思議を覚える。
 一体どうしてこんな質問をしてきたのか。
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