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オオカミ少年が大人になる日
④
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端的だったがコリンには伝わったろう。
言うのは恥ずかしかったが多分コリンにははっきり言ったほうがいい、と思う。
顔を見ないように同じくらいの背丈のコリンの肩にもたれながら言った。
背丈は同じでもコリンの体のほうがよっぽどがっしりしていた。
多分初めて会ったときとは格段に成長している。
見ただけでもわかるくらいなのだ。
「一緒に出掛けたとき、キスをしたろう」
「……うん」
ひとつずつ。
進んでいく。
気持ちを合わせる言葉が。
「オレが嫌じゃなかったのくらいはわかるだろう?」
「……ノアは。……あのあともオレと過ごしてくれたから。そうだったらいいなって。思ってたけど」
ためらいためらい、迷っているようだが言われる。
ノアはそれをそのまま受け止めた。
「じゃあそう思っておいてくれ」
腕に力を込めた。ぎゅう、と、今度はノアが抱き着くような形になる。
「お前がしたいと思ってくれることなら嫌だなんて思わないんだ。だからおかしくなったっていい。狼男そのままになったっていい」
ごくりと、コリンが唾を飲んだのが伝わってきた。
ノアは少しだけ目を閉じた。
こう言っても後悔などしない。
むしろ言わないほうが後悔する。
恐れはあったが、口を開いた。
「お前が望んでくれるなら」
これが最後。
聞くなり、ばっと、コリンが動いた。ノアの体を引きはがす。
ノアの顔を覗き込む瞳は、もう月に魅せられた大人の狼男のものになっていた。それでも訊いてくる。
「オレ、狼男になってもいいの」
「元々そうだと言ったのはお前だろう」
ぐっとコリンの喉が鳴った。
数秒、ノアの目を見つめていたがその瞳にはだんだん力がこもっていく。
窓から差し込む月光に誘発されたように。
ノアの頬に手が触れた。
大きくてごつくなった、オオカミ少年……いや、もう大人の狼男になった手。
噛みつくようにくちづけられたが、今夜は戸惑いも恐ろしさも感じなかった。
それは何度もくちびるを押し付けられて、先夜と同じようにソファに沈んでからも同じだった。
言うのは恥ずかしかったが多分コリンにははっきり言ったほうがいい、と思う。
顔を見ないように同じくらいの背丈のコリンの肩にもたれながら言った。
背丈は同じでもコリンの体のほうがよっぽどがっしりしていた。
多分初めて会ったときとは格段に成長している。
見ただけでもわかるくらいなのだ。
「一緒に出掛けたとき、キスをしたろう」
「……うん」
ひとつずつ。
進んでいく。
気持ちを合わせる言葉が。
「オレが嫌じゃなかったのくらいはわかるだろう?」
「……ノアは。……あのあともオレと過ごしてくれたから。そうだったらいいなって。思ってたけど」
ためらいためらい、迷っているようだが言われる。
ノアはそれをそのまま受け止めた。
「じゃあそう思っておいてくれ」
腕に力を込めた。ぎゅう、と、今度はノアが抱き着くような形になる。
「お前がしたいと思ってくれることなら嫌だなんて思わないんだ。だからおかしくなったっていい。狼男そのままになったっていい」
ごくりと、コリンが唾を飲んだのが伝わってきた。
ノアは少しだけ目を閉じた。
こう言っても後悔などしない。
むしろ言わないほうが後悔する。
恐れはあったが、口を開いた。
「お前が望んでくれるなら」
これが最後。
聞くなり、ばっと、コリンが動いた。ノアの体を引きはがす。
ノアの顔を覗き込む瞳は、もう月に魅せられた大人の狼男のものになっていた。それでも訊いてくる。
「オレ、狼男になってもいいの」
「元々そうだと言ったのはお前だろう」
ぐっとコリンの喉が鳴った。
数秒、ノアの目を見つめていたがその瞳にはだんだん力がこもっていく。
窓から差し込む月光に誘発されたように。
ノアの頬に手が触れた。
大きくてごつくなった、オオカミ少年……いや、もう大人の狼男になった手。
噛みつくようにくちづけられたが、今夜は戸惑いも恐ろしさも感じなかった。
それは何度もくちびるを押し付けられて、先夜と同じようにソファに沈んでからも同じだった。
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