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オオカミ少年が大人になる日
②
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「あがってこい」
ノアは当たり前のように声をかける。
それが落ち着いた声なのを知ったのだろう、コリンは少しためらったようだが動いた。
ただし玄関へ回るのではなく地面を蹴る。たっと小さな音がして、次の瞬間にはコリンが窓にしがみついていた。
ノアは体を引いてコリンが中に入れるようにする。
以前そうしていたように。コリンは窓を抜けて部屋の中へ入ってきた。
「……来た、けど。いいの……」
まだ戸惑って、ためらっているような声と様子。
「オレが来いと言ったんだろう」
それには「そうだけど」ともごもごとした返事が返ってきた。
ノアはコリンの入ってきた窓を閉めて鍵をかける。
しかしカーテンは引かなかった。
コリンがそれを見て、不安げな顔をする。その通りのことを言った。
「カーテン……閉めないの」
「要らないだろう」
「要るよ! だって、」
きっぱりと言ったノアにコリンは声を上げたけれど、制止するようにもう一度はっきりノアは言う。
「要らない。いいからこちらへ来い」
コリンの腕を掴んだ。
コリンの体がびくりと跳ねるのが伝わってくる。
それは単に触れられたから、ではなさそうだった。
「やっぱりおかしいよ、オレ、どうにかなりそう……」
既にコリンの息は軽く荒くなっていた。はぁ、と苦しそうな息が零れる。
ノアは当たり前のように声をかける。
それが落ち着いた声なのを知ったのだろう、コリンは少しためらったようだが動いた。
ただし玄関へ回るのではなく地面を蹴る。たっと小さな音がして、次の瞬間にはコリンが窓にしがみついていた。
ノアは体を引いてコリンが中に入れるようにする。
以前そうしていたように。コリンは窓を抜けて部屋の中へ入ってきた。
「……来た、けど。いいの……」
まだ戸惑って、ためらっているような声と様子。
「オレが来いと言ったんだろう」
それには「そうだけど」ともごもごとした返事が返ってきた。
ノアはコリンの入ってきた窓を閉めて鍵をかける。
しかしカーテンは引かなかった。
コリンがそれを見て、不安げな顔をする。その通りのことを言った。
「カーテン……閉めないの」
「要らないだろう」
「要るよ! だって、」
きっぱりと言ったノアにコリンは声を上げたけれど、制止するようにもう一度はっきりノアは言う。
「要らない。いいからこちらへ来い」
コリンの腕を掴んだ。
コリンの体がびくりと跳ねるのが伝わってくる。
それは単に触れられたから、ではなさそうだった。
「やっぱりおかしいよ、オレ、どうにかなりそう……」
既にコリンの息は軽く荒くなっていた。はぁ、と苦しそうな息が零れる。
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