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金色キャンディ
③
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「かわいい子だったね。お薬、もらいに来たの?」
さっきの親子はもう後姿も見えなくなっていたけれど、コリンはしっかり見ていたらしい。
「そ、そうだ。でもお前には関係ないだろう」
「そうだけど。そのくらい聞いたっていいでしょ」
言われればノアは黙るしかない。世間話の一環だ。こんなこと。
オオカミ少年と話したいことではないが。
「ねぇ、それなぁに。お薬にしては甘いにおいがするけど」
本当に目ざとい、というよりは鼻ざとい。オオカミらしく鼻が利くのだ。
見た目よりも嗅覚から『美味しそうだ』と感じたのだろう。
ノアの手にしていた一粒を指さして言うのでノアは、さっさとそれをコリンに押し付けた。こんな近い距離でいることは本当は怖いのだ。
「このくらいやる。ただのキャンディだ」
「アメ? ありがとっ」
コリンは顔を輝かせてそれを受け取った。僅かに手が触れてノアはびくりとしてしまう。
オオカミの手だ。恐ろしい。
しかし触れたコリンの手はなめらかでヒトの手となにも変わらなかった。
あれ、と思う。
びくりとしたのは『触れる』という事実に関してであり、感触は思ったより悪いものではなかった。狼男だからなにか違うかと思ったのだが。
ノアのその様子には構わずコリンは、さっさと薄紙を剥いてキャンディを取り出していた。
へー、綺麗ー、なんて摘まんで陽にかざしてしげしげと見ている。
そのあと言った。
「これ、オレの目の色みたい」
ああ、確かに。
ノアはぼんやりと思った。すぐに、はっとしたが。ぼんやりしている場合ではない。
相手はオオカミ少年。警戒するべき相手だ。
そう、一瞬触れた手がやわらかくてあたたかかろうとも。
さっきの親子はもう後姿も見えなくなっていたけれど、コリンはしっかり見ていたらしい。
「そ、そうだ。でもお前には関係ないだろう」
「そうだけど。そのくらい聞いたっていいでしょ」
言われればノアは黙るしかない。世間話の一環だ。こんなこと。
オオカミ少年と話したいことではないが。
「ねぇ、それなぁに。お薬にしては甘いにおいがするけど」
本当に目ざとい、というよりは鼻ざとい。オオカミらしく鼻が利くのだ。
見た目よりも嗅覚から『美味しそうだ』と感じたのだろう。
ノアの手にしていた一粒を指さして言うのでノアは、さっさとそれをコリンに押し付けた。こんな近い距離でいることは本当は怖いのだ。
「このくらいやる。ただのキャンディだ」
「アメ? ありがとっ」
コリンは顔を輝かせてそれを受け取った。僅かに手が触れてノアはびくりとしてしまう。
オオカミの手だ。恐ろしい。
しかし触れたコリンの手はなめらかでヒトの手となにも変わらなかった。
あれ、と思う。
びくりとしたのは『触れる』という事実に関してであり、感触は思ったより悪いものではなかった。狼男だからなにか違うかと思ったのだが。
ノアのその様子には構わずコリンは、さっさと薄紙を剥いてキャンディを取り出していた。
へー、綺麗ー、なんて摘まんで陽にかざしてしげしげと見ている。
そのあと言った。
「これ、オレの目の色みたい」
ああ、確かに。
ノアはぼんやりと思った。すぐに、はっとしたが。ぼんやりしている場合ではない。
相手はオオカミ少年。警戒するべき相手だ。
そう、一瞬触れた手がやわらかくてあたたかかろうとも。
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