トウシューズにはキャラメルひとつぶ

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仲よくなくても

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 乙津先生の前で、事情を説明することになった。

 朱里たちが勢いこんで話して、莉瀬は口を挟むことができなかった。

 言いたいことはたくさんあったけれど。

 愛美お姉さんも少し説明してくれたのと合わせても、莉瀬はまだ不満でいっぱいだった。

 けれど一通りのトラブルの説明が終わったところで、乙津先生は「わかりました。では、今度は別々にお話を聞きましょう」と言った。

 そして乙津先生の部屋へ呼ばれた。

 今度こそ、自分の言いぶんを話せる。

 莉瀬は話した。


 前回のレッスンのときにあったこと。

 今日、レッスンの準備を邪魔されたこと。

 そしてさっき言われた悪口も。


 乙津先生は静かに聞いてくれた。

 莉瀬の話が終わって、しばらく乙津先生はなにかを考えているように黙っていた。

 はぁ、と小さく息をついて莉瀬は乙津先生を待った。

 自分は悪くないと思う。

 けれど悪い言葉を言ってしまった罪悪感はあるから、そこが怖かった。

「莉瀬さんが、むっとするのもわかるわ。そこはあの子たちが悪い」

 口を開いた乙津先生はきっぱりと言ってくれた。

 莉瀬はちょっと、ほっとした。

 誤解されなかったことに。

 あの子たちのいじめのような行動を『悪い』と言ってくれたことに。

「莉瀬さんが、リゼットという役に真剣に向き合ってるのも、リゼットを大切にしてくれているのもわかります。それはとても素晴らしいことね」

 乙津先生はほめてくれたけれど、残念ながらそれだけでは終わらなかった。

「でもね、理不尽なことを言われたからといって、言い返すのが必ずしも正しいことじゃないんじゃないかしら。それは悪口の言い合いになるだけだから」

「……はい。すみません」

 そこが悪かった自覚はあるので、莉瀬は素直に謝った。

 乙津先生は、そんな莉瀬を見て、ふっと笑う。

 厳しい口調と目から優しい目になる。
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