トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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がんばる姿が好きだから

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 そのあとはちゃんと歩くことができたし、少し先にあったコンビニに二人で入って、本当にキャラメルを買ってもらえたときも「ありがとう」とちゃんと言えた。


「本当にありがとう。……ごめんなさい。みっともなかった」

 言った莉瀬に、隼斗くんは当たり前のように首を振る。

「そんなことない。悪口なんて言われれば誰でも傷つくし。だから、……ちょっとでも助けてあげられたなら、嬉しいよ」

 落ちついた心がまた、ほわっとあたたかくなったうえに、心臓が速くなった。

 嬉しいことばかりだ。

 もう、今日のことがどうでもいいとまで思えた。

 優しい言葉や気持ちをたくさんくれるひとがいたから。

 おまけにそれは、莉瀬の恋しているひとからなのだ。


「だから、またがんばってくれ」


 そのあとに起こったこと。

 莉瀬の頭になにかが触れた。

 ぽんぽん、と小さく頭の上で跳ねて、すぐに、去っていった。

「え、……あの」

 今度こそ、今日起こった悪いことはすべて吹っ飛んだ。

 ぽかんと、バカのように口を開けて立ちつくした莉瀬を置いて。

 隼斗くんは「じゃ、じゃあまた!」と、サッと行ってしまった。

 どんな顔をしていたのかはわからなかった。

 今度は違う意味で混乱してしまっていて。


 莉瀬の残された、コンビニの前。

 光が灯っていてとても明るい。

 莉瀬を明るい場所に連れてきてくれて、助けてくれたひと。

 王子さまかなにかのように感じてしまった。

 隼斗くんは、ただの中学生で王子さまなんかではない。

 でも。

 今の莉瀬にとっては確かに『王子さま』だった。
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