トウシューズにはキャラメルひとつぶ

ハヤブサはコースを駆け抜ける

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　きっと前に見たときよりうまくなっているのだろう。

　スタートダッシュから勢いよくコースへとび出していく。


　無駄のない動きはまるでコースの上を飛んでいるよう。

　鳥のようだ、と莉瀬は思った。


　鳥といっても、小鳥ではない。

　タカやハヤブサのように、狩りをする鳥だ。

　目当てのエモノを目指し、空を自由に駆ける。


　短距離走、たぶんあのときと同じ百メートルだったのだろうと思うけれど、一瞬で終わってしまった。

　そして何位だったのか、順位を見る余裕すらなかった。


　だって、順位より大事なものがあったから。


　隼斗くんのコースを走る姿が美しかったこと。

　その美しさはテクニックなのか、速さなのか、莉瀬は詳しくないのでわからない。

　ただわかるのは、コースを滑るように素早く駆け抜けた隼斗くんの姿は、とても輝いていて、魅力的だったということ。


　遠かったので表情なんて見えなかった。

　でもわかった。

　きりっとした目でまっすぐに前だけ見すえて、真剣な顔をしていたはずだ。

　見なくてもわかる。


　だって、自分も同じだから。


　目指すものに対する、真剣な気持ち。

　それはやっていることが、隼斗くんは陸上。

　莉瀬はバレエ、と違っても、まったく同じなのだと思う。