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なにかご用事?

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 その次のレッスンの日。

 莉瀬は教室の前で先日、帰り道ですれ違ったひとに出会ってしまった。

 なんと正面から『出会ってしまった』のである。

 なぜかというと彼が教室のある建物の前で「どうしたものか」という様子でいたからだ。

 いつも見る制服姿。

「あの」

 莉瀬は思い切って声をかけた。

 なにか困っているのかもしれない。

 その横を通過して教室に入るのは不親切だと思ったし、何回かエンカウントしているのだ。

 声をかけてもそれほど不自然ではないだろう。

「なにか用事ですか? ここ、バレエ教室なんですけど」

「え? ……ああ」

 声をかけた莉瀬を彼は見た。

 初めて正面から向き合う。

 なぜかどきりとしてしまった。


 しっかり見た顔。

 すっとした目、きりっとした眉。

 空を駆ける大きな鳥を思わせた。
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