人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

秋木の事情

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「ここの部屋着が好きでな、着心地が好きだって、夏でも着てた。それで俺もあの感触に慣れちまってた、ってわけだ。それで、あの服の感触を感じられるときだけぐっすり眠れる。大の大人がだせぇだろ」

　最後は自嘲するようになったそれ。

　俺は閃くように、その意味を理解した。

　あの二本目の小説。

　あれは本当に、『秋木自身の経験』が元になった話だったのだ。

　そして内容を照らし合わせるなら、秋木は過去に誰か、大切な存在を失っているということになる。

　そこにこの説明だ。

　恋人がいたのだろう。

　でもそのひとはもう、秋木の傍にいない。

　それで秋木は眠れなくなった。

　そのひとがいつももこもこの部屋着を着ていて、その彼女をきっとこうして抱いて寝ていたから……。

　俺は固まった。

　まさかそんな経緯だとは思わなかった。

　単に性癖とか、そんなつまらない理由ではなかったのだ。

　ずっと重くて、深刻で……悲しい理由ではないか。

「それで……眠れなくなったと……？」