人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

夏休みの同伴

8

「おい、お前。何色がいい。選ばせてやる」

　秋木は俺を見て、そう言った。

　恩着せがましい言い方である。

　このぶんでは買ってくれるのだろうが、まったく嬉しくない。

　もはや、客好みの私服を買い与えられるより嬉しくない。

「いや、なんで俺が女物を……、う」

　抵抗したのに、秋木の視線に封じられた。

「『仕事』に使うからに決まってるだろう」

　そう言われて俺は黙るしかなくなる。

　だってその通りだ。

　俺がここのブランドの服を着せられるのは、そのためでしかない。

「もう、あの素材では暑いだろう。だからちょうどいいと思ってな。まったくまどろっこしい奴だ。すまない、全色一枚ずつくれ」

　秋木ときたら、勝手に決めやがった。

　店員も「かしこまりました～！」とやたら愛想が良かったと感じたのは、気のせいだと思いたい。

　そんなわけで、俺は『プレゼント』を買ってもらって店を出た。

　だが、嬉しいどころか、テンションがあがるどころか、気分的に疲弊してきて出る羽目になったのだった。