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抱き枕の一夜
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「お借りしたのが良い香りでしたから」
俺はそう言い、秋木は「そうだろう」などと言った。
「気に入りなんだ。やはりこの香りでなければ。それにきみはよく似合うな」
内容は少し不思議だった。
『この香りでなければ』のあたりが。
かわいいもの好きなだけでなく、匂いフェチもあるのだろうか。
俺は呑気にそんなことを考えたが、次の言葉は褒められているのだ。
お礼を言っておいた。
そのあと秋木は俺の体に手を伸ばし、体型を確かめているようにあちこち撫でてきて、やがて肩を押された。
ベッドに沈められる。
俺は大人しくベッドに仰向けに押し倒されて、秋木を見つめた。
俺に乗りかかる形になった秋木も、俺をじっと見つめた。
だが俺はその瞳を見つめ返しながら、なんだか「あれ」と思った。
秋木の目は静かだったのだから。
こういう体勢を取っている男なら、ギラギラした目か、それともうっとりしたような目をするのが常なのだが。
それのどちらでもない。
それでも秋木の手は俺の頬に伸びた。
軽く包まれ、撫でられる。
俺は目を細めておいた。
キスをねだるような表情だっただろう。
その通り、秋木はすっと顔を近付けてきて……だが、触れたのはくちびるではなかった。
「ほら、横になれ」
耳元で囁くように言われたのは、それ。
俺はそう言い、秋木は「そうだろう」などと言った。
「気に入りなんだ。やはりこの香りでなければ。それにきみはよく似合うな」
内容は少し不思議だった。
『この香りでなければ』のあたりが。
かわいいもの好きなだけでなく、匂いフェチもあるのだろうか。
俺は呑気にそんなことを考えたが、次の言葉は褒められているのだ。
お礼を言っておいた。
そのあと秋木は俺の体に手を伸ばし、体型を確かめているようにあちこち撫でてきて、やがて肩を押された。
ベッドに沈められる。
俺は大人しくベッドに仰向けに押し倒されて、秋木を見つめた。
俺に乗りかかる形になった秋木も、俺をじっと見つめた。
だが俺はその瞳を見つめ返しながら、なんだか「あれ」と思った。
秋木の目は静かだったのだから。
こういう体勢を取っている男なら、ギラギラした目か、それともうっとりしたような目をするのが常なのだが。
それのどちらでもない。
それでも秋木の手は俺の頬に伸びた。
軽く包まれ、撫でられる。
俺は目を細めておいた。
キスをねだるような表情だっただろう。
その通り、秋木はすっと顔を近付けてきて……だが、触れたのはくちびるではなかった。
「ほら、横になれ」
耳元で囁くように言われたのは、それ。
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