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二人きりの寝室で②
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するっと弘樹の首に腕を回す。酔った勢いだろうが、苛立ちだろうがどうでもいい。こうしなければ感情の行き場がないのだから。
そして游太もわかっていた。短い付き合いではないのだ。弘樹がこういうときどう思うのかについて。
一応、言った通りのことが一番強くあるのだと思う。酔った游太を寝かしつけてやらねばならないという。
だが弘樹は母親などではないのであって、游太のパートナーなのであって、そして『男』であって。こうしてベッドの上で腕を伸ばしてねだられて、なにも感じないはずがない。
それは酔いからの欲も手伝っていただろうがもうひとつ。
游太の苛立ちや不安。そういうものを感じていたから、という理由もあると游太としては思っておきたかった。
そういう感情を拭うのになにが一番早くて確実か。そんなこと、もう二人ともよくわかっている。優しい言葉よりも、あたたかい布団よりも、もっと確かな。
はぁ、とため息をつくのが聞こえたのは一瞬だった。
今度は弘樹自身が、自分の意思で身をかがめる。再びくちびるが触れ合った。
水音が小さく立つ。小さい音なのに妙にはっきり聞こえた。
目を閉じてそれを受けながら、手を伸ばす。弘樹のシャツを握って自分にもっと引き寄せた。
髪になにかが触れるのを感じる。するっと指が通って、頭を撫でられた。
普段そうされれば優しく気持ちがいいだけのはずのそれに、ぞくりとした。頭を撫でるというよりこれはまるで、獲物を逃がさないと言わんばかりの。しかしそうされるのはむしろ嬉しい。
「は……っ、……もう……」
やがて弘樹が顔を上げて游太を見た。その目はもう優しい保護者などではない。穏やかな瞳の奥に熱いものが灯っていた。
その目でじっと游太を見つめてくる。視線から火をつけられそうだ。
「誘ったのはお前だからな」
「ノッてくれるのはヒロじゃん」
笑みを浮かべていた。
その目で見られるのも嬉しい。自分にしか向かない視線だと知っているから。
游太のその笑みを見て、弘樹はどうやら安心したのか。
ふっと目元が緩んだ。瞳は熱いままだったけれど。
身をかがめて今度はくびすじに顔をうずめてくる。游太の首に濡れた感触が触れた。
くびすじにくちづけられて、舐められて、ときには軽く歯も立てられる。その行為はまるで食べられていくようで。
本当に食べられてしまったら、と、こういう触れ方を受けるために思うのだ。それはきっと幸せだろう。
「……っ、んん!」
くびすじからだんだん上へあがっていって、耳のうしろを、ぺろっと舐められた。はっきり震えが背筋を貫いた。
それを皮切りに、耳のあちこちに触れられる。左耳ばかりをだ。右耳に移ることはない。
「ほんと、弱いな」
ふっと吐息が吹き込まれ、そんな言葉も吹き込まれた。耳だけでこんな反応をさせられている羞恥もあるが、体の弱いところをすべて知られていること。その悦びもある。
左耳が弱いと知られてから弘樹はしつこくそちらばかりを愛撫してくるようになった。そして元々弱かったであろう左耳は、何度もそれを受けることでもっと感じるようになってしまったわけで。実際には無理だが、游太の感じるものとしては耳だけで達してしまいそうなくらい感じてしまうところだ。
耳の形をなぞって、軽く歯を立てて、耳の中に舌を入れて。耳から侵されていく。ぞくぞくと体の芯が震えて仕方がない。悪寒にも似たそれ。時折強い震えが頭の先まで走る。
どのくらい耳を食まれていたのか、やっと弘樹が顔を上げてくれたときには大きな息をついてしまった。気持ちがいいことは確かだけれど刺激が強すぎる。
「そんな顔、して」
弘樹に言われたけれど、どんな顔なのかなんて自分ではわからない。
けれどカテゴリとしてはわかる。すっかり溶かされてとろりと潤んだ目をして、食べられるのを待っているいやらしい表情だろう。
いやらしくは、あるけれどそれを不快に思われることなどないと知っている。だから煽るようにそう言われても不安に思うことはないのだ。
弘樹の手が游太の服にかかった。寒い折なのでシャツの上にセーターを着こんでいた。それでももう脱がされるのに苦労はしない。腕をあげて、背中もちょっと浮かせて、弘樹の腕が脱がしやすいように動けてしまう。
セーターを脱がされ、ベッドの空いているところへ放り投げられて、今度はシャツに手をかけられる。シャツは前あきなので手伝うことはない。ボタンをぷちぷちと外されて、それで準備は済んでしまった。
そして游太の体のほうも。
寒い折だ、帰ってすぐのことだったので寝室だって暖房を入れていない。それでももう体は熱くてたまらなかった。
早く触ってほしい。
促すように、胸の先はもうツンと反応してしまっている。
そこへ弘樹の手が滑った。優しく胸板を撫でられる。
「あったかい」
すりすり撫でるけれど、それは少し物足りない。
もっと直接的な刺激が欲しい。酔っていることもあって、焦らされるのはつらかった。
しかしそれは弘樹のほうも同じだろう。すぐに手は胸の先へ移った。尖った乳首を摘ままれて刺激される。
摘まんで、転がして、押しつぶして、軽く引っ張って。
様々な愛撫は游太の息を簡単に荒くした。
そして游太もわかっていた。短い付き合いではないのだ。弘樹がこういうときどう思うのかについて。
一応、言った通りのことが一番強くあるのだと思う。酔った游太を寝かしつけてやらねばならないという。
だが弘樹は母親などではないのであって、游太のパートナーなのであって、そして『男』であって。こうしてベッドの上で腕を伸ばしてねだられて、なにも感じないはずがない。
それは酔いからの欲も手伝っていただろうがもうひとつ。
游太の苛立ちや不安。そういうものを感じていたから、という理由もあると游太としては思っておきたかった。
そういう感情を拭うのになにが一番早くて確実か。そんなこと、もう二人ともよくわかっている。優しい言葉よりも、あたたかい布団よりも、もっと確かな。
はぁ、とため息をつくのが聞こえたのは一瞬だった。
今度は弘樹自身が、自分の意思で身をかがめる。再びくちびるが触れ合った。
水音が小さく立つ。小さい音なのに妙にはっきり聞こえた。
目を閉じてそれを受けながら、手を伸ばす。弘樹のシャツを握って自分にもっと引き寄せた。
髪になにかが触れるのを感じる。するっと指が通って、頭を撫でられた。
普段そうされれば優しく気持ちがいいだけのはずのそれに、ぞくりとした。頭を撫でるというよりこれはまるで、獲物を逃がさないと言わんばかりの。しかしそうされるのはむしろ嬉しい。
「は……っ、……もう……」
やがて弘樹が顔を上げて游太を見た。その目はもう優しい保護者などではない。穏やかな瞳の奥に熱いものが灯っていた。
その目でじっと游太を見つめてくる。視線から火をつけられそうだ。
「誘ったのはお前だからな」
「ノッてくれるのはヒロじゃん」
笑みを浮かべていた。
その目で見られるのも嬉しい。自分にしか向かない視線だと知っているから。
游太のその笑みを見て、弘樹はどうやら安心したのか。
ふっと目元が緩んだ。瞳は熱いままだったけれど。
身をかがめて今度はくびすじに顔をうずめてくる。游太の首に濡れた感触が触れた。
くびすじにくちづけられて、舐められて、ときには軽く歯も立てられる。その行為はまるで食べられていくようで。
本当に食べられてしまったら、と、こういう触れ方を受けるために思うのだ。それはきっと幸せだろう。
「……っ、んん!」
くびすじからだんだん上へあがっていって、耳のうしろを、ぺろっと舐められた。はっきり震えが背筋を貫いた。
それを皮切りに、耳のあちこちに触れられる。左耳ばかりをだ。右耳に移ることはない。
「ほんと、弱いな」
ふっと吐息が吹き込まれ、そんな言葉も吹き込まれた。耳だけでこんな反応をさせられている羞恥もあるが、体の弱いところをすべて知られていること。その悦びもある。
左耳が弱いと知られてから弘樹はしつこくそちらばかりを愛撫してくるようになった。そして元々弱かったであろう左耳は、何度もそれを受けることでもっと感じるようになってしまったわけで。実際には無理だが、游太の感じるものとしては耳だけで達してしまいそうなくらい感じてしまうところだ。
耳の形をなぞって、軽く歯を立てて、耳の中に舌を入れて。耳から侵されていく。ぞくぞくと体の芯が震えて仕方がない。悪寒にも似たそれ。時折強い震えが頭の先まで走る。
どのくらい耳を食まれていたのか、やっと弘樹が顔を上げてくれたときには大きな息をついてしまった。気持ちがいいことは確かだけれど刺激が強すぎる。
「そんな顔、して」
弘樹に言われたけれど、どんな顔なのかなんて自分ではわからない。
けれどカテゴリとしてはわかる。すっかり溶かされてとろりと潤んだ目をして、食べられるのを待っているいやらしい表情だろう。
いやらしくは、あるけれどそれを不快に思われることなどないと知っている。だから煽るようにそう言われても不安に思うことはないのだ。
弘樹の手が游太の服にかかった。寒い折なのでシャツの上にセーターを着こんでいた。それでももう脱がされるのに苦労はしない。腕をあげて、背中もちょっと浮かせて、弘樹の腕が脱がしやすいように動けてしまう。
セーターを脱がされ、ベッドの空いているところへ放り投げられて、今度はシャツに手をかけられる。シャツは前あきなので手伝うことはない。ボタンをぷちぷちと外されて、それで準備は済んでしまった。
そして游太の体のほうも。
寒い折だ、帰ってすぐのことだったので寝室だって暖房を入れていない。それでももう体は熱くてたまらなかった。
早く触ってほしい。
促すように、胸の先はもうツンと反応してしまっている。
そこへ弘樹の手が滑った。優しく胸板を撫でられる。
「あったかい」
すりすり撫でるけれど、それは少し物足りない。
もっと直接的な刺激が欲しい。酔っていることもあって、焦らされるのはつらかった。
しかしそれは弘樹のほうも同じだろう。すぐに手は胸の先へ移った。尖った乳首を摘ままれて刺激される。
摘まんで、転がして、押しつぶして、軽く引っ張って。
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