54 / 125
初めての投稿作②
しおりを挟む
そう、その点がずっと気になっていた。
雑誌の賞なのだ。概要はずっと前に、引っ越してきた時点で雑誌を拝見して確認していた。
大賞を取れば賞金と選評、そして雑誌の掲載。
次の賞でも賞金と選評、その下の賞でも何作か選評がつくと書いてあった。
先生も「なにかしらの賞に入れば、編集部の気にされたということになるからね。まずは大賞でなくともそこを狙ってみるのが良い」と言ってくださった。
そんな絶好の機会なのだ。門下生になったばかりの金香だけでなくほかの門下生にも当然出すように言いつけているだろう。
金香の想像は勿論当たったようで源清先生は頷いた。
「ああ。小説家としての第一歩だからね。全員提出するように言っているよ」
やはり。
では同じ門下生といえども、ライバルといえることになるのだろう。
内弟子であり、同じ屋敷に住んでいる男性・茅原(ちはら)さんも、外に住んでいるという唯一の女性門下生である音葉(おとは)さんも、それにほかの門下生だって。
でも負けたくなかった。
先に弟子入りしているひとたちには、勉強も技術もなにもかも先をいかれている。
でも気概では負けない。
妹弟子だから不出来に決まっている、などと卑下するつもりはない。
その気持ちは先生にも伝わっている、のだと思う。
「でも互いの作品は見せないよ。発表になってから読み合いをしようと思っている」
先生は言った。確かに『全員賞に出す』とすら聞いていなかったのだ。そうなるだろう。
「そのほうが公平だろう」
「そうですね。楽しみにしております」
すぐに兄弟子の作品を読んでみたい気持ちもあったけれど。やはり公平を欠いてしまう。
「できれば集まって、読み合いをしたいものだね。評論会をしようか」
「はい。勉強になりそうです」
門下生が一堂に会したことは今までない。個人的には顔を見たり会話をしたりしているのだが全員が集まる、というのは。
それはそれで楽しそうである。
それにそれぞれの作品を読み合い、良いところや改善点を話し合ったりできる。きっとそれは愉しいだろう。
雑誌の賞なのだ。概要はずっと前に、引っ越してきた時点で雑誌を拝見して確認していた。
大賞を取れば賞金と選評、そして雑誌の掲載。
次の賞でも賞金と選評、その下の賞でも何作か選評がつくと書いてあった。
先生も「なにかしらの賞に入れば、編集部の気にされたということになるからね。まずは大賞でなくともそこを狙ってみるのが良い」と言ってくださった。
そんな絶好の機会なのだ。門下生になったばかりの金香だけでなくほかの門下生にも当然出すように言いつけているだろう。
金香の想像は勿論当たったようで源清先生は頷いた。
「ああ。小説家としての第一歩だからね。全員提出するように言っているよ」
やはり。
では同じ門下生といえども、ライバルといえることになるのだろう。
内弟子であり、同じ屋敷に住んでいる男性・茅原(ちはら)さんも、外に住んでいるという唯一の女性門下生である音葉(おとは)さんも、それにほかの門下生だって。
でも負けたくなかった。
先に弟子入りしているひとたちには、勉強も技術もなにもかも先をいかれている。
でも気概では負けない。
妹弟子だから不出来に決まっている、などと卑下するつもりはない。
その気持ちは先生にも伝わっている、のだと思う。
「でも互いの作品は見せないよ。発表になってから読み合いをしようと思っている」
先生は言った。確かに『全員賞に出す』とすら聞いていなかったのだ。そうなるだろう。
「そのほうが公平だろう」
「そうですね。楽しみにしております」
すぐに兄弟子の作品を読んでみたい気持ちもあったけれど。やはり公平を欠いてしまう。
「できれば集まって、読み合いをしたいものだね。評論会をしようか」
「はい。勉強になりそうです」
門下生が一堂に会したことは今までない。個人的には顔を見たり会話をしたりしているのだが全員が集まる、というのは。
それはそれで楽しそうである。
それにそれぞれの作品を読み合い、良いところや改善点を話し合ったりできる。きっとそれは愉しいだろう。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる