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【3】アイ、エニシ、ワカレ
3-5 策士勝利に溺れる
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ガングワルドには「果報は寝て待て」と言うことわざがある。
ガングかぶれのジェイクによると、帝王学から派生したことわざであり、意味は「大物ならば、部下の報告を寝ながら待てるくらいどっしり構えてろ」らしい。
ジェイクの解説が嘘か真かは知るよしもないが、今のボスに当てはめるなら、紛れもなく小物であると分かるだろう。
テーブルには空になった酒瓶がいくつも転がり、灰皿には吸い殻の山がそそり立っている。部屋の上半分は、濃霧のように真っ白だ。
"商品"は無事取り戻せたか? ジェイクとキュベリは始末できたのか? 作戦は完璧だ。完璧なはずだ。だが本当に完璧だったか? どこかに穴があるのではないか? 不安が不安を呼び、酒と葉巻がどんどん消耗されていく。
そもそもの始まりは、ファミリーが"特別な商品"を預かる前日にまでさかのぼる。
ジェイクが屋敷を離れていた時、まるでそのタイミングを狙ったかのように使者が来たのだ。
角の付いたマスクを被った年齢不詳の妖艶な美女。その名を"マダムオーガ"と言う。
秘密結社"オーガ"のナンバー2とも噂されるが、本当のところは誰にも分からない。
怪しげな二人の護衛を引き連れ、屋敷に訪れた"マダムオーガ"は、"特別な商品"がいかに重要な食材か、そして接触することがいかに危険かをボスに説明し、このように話した。
「この"商品"は接触する人間を"魅了"で支配しますの。そして、支配された人間は必ず裏切ります。したがって、この"商品"を保管するには方法が2つに絞られますわ。
1つ目は人外に"商品"の世話を任せるコト。貴方は古の妖魔を使役していると聞いておりますから、難しくはありませんわよね?
2つ目は捨駒に"商品"の世話を任せるコト。貴方のファミリーにも一人や二人いるでしょう? 鉄砲玉が♪ あるいは………」
彼女は扇で口元を隠し、よそ見をしながら会話を続ける。
「今からちょっとした思いつきを話しますけれど、ただの独り言ですので、どうか聞き逃してくださいまし♪
必ず裏切るのなら…、獅子身中の虫を始末するのに有効ではないかしら? だって、いかに人望があろうと、ファミリーを裏切るのなら粛正もやむなしでしょう? 手下の皆さんだって納得していただけるのではなくて?」
そこまで話すと、"マダムオーガ"はまるで生娘のように無邪気に微笑んだ。
天使のような微笑みで、悪魔のような企みを語る。
恐ろしい女だ。思い出すだけでも身震いがする。
だが確かに、天敵のジェイクを始末するにはまたとないチャンスだった。一緒にキュベリも始末できて好都合。ついでにザックも始末できれば御の字だ。
なのに、マンモスからの報告が一向に無い。何かあったのか? いやいや、あの妖魔に限ってそれは無い。今なお作戦行動中なのだ。相手が相手だ。手こずるのは仕方ない。だがしかし……。いやしかし……。
ボスはまた葉巻に火を付け、スパスパと吸いながらグラスに酒を注ぎ入れ、一気に飲み干した。
突然そこに乾いた音がして、思わずボスは飛び上がる。
何の事はない。部下がドアをノックしたのだ。
ボスは内心腹を立てながらも平静を装い、部下を招き入れる。
「入れ。どうした?」
「あの…それが……。小さな娘を連れた大男の浮浪者が、ボスに面会を求めてるんでヤス。情報屋か何かしりやせんが、こんな真夜中の寒空だって言うのに、上半身は裸だしズボンもボロボロだしで、メチャクチャ怪しいんですが……」
「そいつは…名前を名乗ったか?」
「ヘイ。それが……アイアンなんちゃら28世とか、訳の分からねぇ名前を名乗りやがりまして……」
「なっ!? "アイアンティタノス28世"だと!?」
「へ? ……へい。確かにそんな感じの名前でやした」
「馬鹿野郎! そいつはワシの大事な客人だ!! 丁重にもてなせ!!」
「す、すいやせん!!」
「それと、連れの娘の扱いは客人の指示に従うように。分かったな!」
「ヘ、ヘイ!」
部下は慌てて部屋を出ていく。人目が無くなった途端、ボスは独り歓声を上げ、ガッツポーズを取る。
"アイアンティタノス28世"。それはボスが幼少の頃、使役妖魔に付けた名前だった。
「ボス、アイアン……えっと……きゃ、客人を連れてきやした」
「おう、通せ」
部屋に入ってきたのは人の良さそうな大男。だが、上半身は肌着すら着ておらず、逞しい肉体が露出している。ズボンもボロボロで焼け焦げていた。
「ズタボロファッションに焦げ臭いコロンとは、斬新なコーデじゃねぇか。え? アンティよ♪」
「懐かしい呼び名ですね。昔を思い出します」
その声、その顔、その体格は、紛れもなくマンモスだった。しかしその口調はまるで別人だ。訛りはなくなり、穏やかで上品な言葉使い。これがマンモスの……本来の姿なのだろうか?
ボスはニヤリと笑うと、部下を睨み付ける。
「何をしとるか。お前は下がれ」
「え? いや…しかし……いいんですかい?」
「だから言ったろ。コイツはワシの大事な客人だ。余計な気遣いはいらんから、お前も屋敷の警備に回れ!」
「へ、へい……」
不満げな部下だったが、ボスには逆らえない。ふてくされながらも大人しく部屋を出ていった。
するとボスは、決して部下には見せない満面の笑顔を大男に見せる。
「早速だが、報告を聞こうか。まずはそのボロ切れみたいな小汚い恰好だ。何があった?」
「これですか。キュベリさんがコーディネイトしてくださったんですよ。似合ってますか?」
「おお、そうだな。怪しさ満天で最高に似合ってるぜ♪ で? 具体的には?」
「キュベリさんがチーム全員を"ロストボーイ"のアジトの入り口に待機させまして、爆裂魔法か爆発物を使って一網打尽です。チームは全滅。妖魔でなければ私も死んでいたでしょう」
「ほうっ♪ あのキュベリがかっ♪ 部下思いのキュベリがかっ♪ "商品"を独り占めするために部下を皆殺しとはなっ♪」
「魅了の力とは恐ろしいものです。妖魔でなければ私もあの子の虜になっていたかもしれません」
「それで? "商品"はどうした? 連れてきた娘ってのは"商品"なんだろう? え?」
「はい。今は地下倉庫に閉じ込めています。あの子に関われば他の人も魅了され、裏切ってしまいますので、頭巾を深々と被らせ、顔を見せないよう連れて行きました。そして部下の皆さんには、決して倉庫には入らないようにと伝えております。夜明けまで数時間。世話人の必要もないでしょう」
「よし♪ いいぞいいぞ♪ それで、二人はどうした? キュベリのホモ野郎とジェイクのクソ野郎はどうなった?」
「相打ちです。キュベリさんはジェイクさんのナイフ技で首をはねられ、絶命しました。しかしその刹那、キュベリさんは針に猛毒を塗りつけたダーツを投げていまして、ジェイクさんは大技を放った後の硬直で避けられず……」
「そうか……。死んだか……。
そうか! そうか!! そうか!!!
よし! よし!! よし!!! よし!!!!
ザマァみやがれクソジェイク! ワシは勝った! あんのクソ野郎に勝ったんだ!!」
子供のように喜びはしゃぐボスを、アンティは黙って見つめる。
その目は優しく、寂しげで、悲しみに満ちていた。
ガングかぶれのジェイクによると、帝王学から派生したことわざであり、意味は「大物ならば、部下の報告を寝ながら待てるくらいどっしり構えてろ」らしい。
ジェイクの解説が嘘か真かは知るよしもないが、今のボスに当てはめるなら、紛れもなく小物であると分かるだろう。
テーブルには空になった酒瓶がいくつも転がり、灰皿には吸い殻の山がそそり立っている。部屋の上半分は、濃霧のように真っ白だ。
"商品"は無事取り戻せたか? ジェイクとキュベリは始末できたのか? 作戦は完璧だ。完璧なはずだ。だが本当に完璧だったか? どこかに穴があるのではないか? 不安が不安を呼び、酒と葉巻がどんどん消耗されていく。
そもそもの始まりは、ファミリーが"特別な商品"を預かる前日にまでさかのぼる。
ジェイクが屋敷を離れていた時、まるでそのタイミングを狙ったかのように使者が来たのだ。
角の付いたマスクを被った年齢不詳の妖艶な美女。その名を"マダムオーガ"と言う。
秘密結社"オーガ"のナンバー2とも噂されるが、本当のところは誰にも分からない。
怪しげな二人の護衛を引き連れ、屋敷に訪れた"マダムオーガ"は、"特別な商品"がいかに重要な食材か、そして接触することがいかに危険かをボスに説明し、このように話した。
「この"商品"は接触する人間を"魅了"で支配しますの。そして、支配された人間は必ず裏切ります。したがって、この"商品"を保管するには方法が2つに絞られますわ。
1つ目は人外に"商品"の世話を任せるコト。貴方は古の妖魔を使役していると聞いておりますから、難しくはありませんわよね?
2つ目は捨駒に"商品"の世話を任せるコト。貴方のファミリーにも一人や二人いるでしょう? 鉄砲玉が♪ あるいは………」
彼女は扇で口元を隠し、よそ見をしながら会話を続ける。
「今からちょっとした思いつきを話しますけれど、ただの独り言ですので、どうか聞き逃してくださいまし♪
必ず裏切るのなら…、獅子身中の虫を始末するのに有効ではないかしら? だって、いかに人望があろうと、ファミリーを裏切るのなら粛正もやむなしでしょう? 手下の皆さんだって納得していただけるのではなくて?」
そこまで話すと、"マダムオーガ"はまるで生娘のように無邪気に微笑んだ。
天使のような微笑みで、悪魔のような企みを語る。
恐ろしい女だ。思い出すだけでも身震いがする。
だが確かに、天敵のジェイクを始末するにはまたとないチャンスだった。一緒にキュベリも始末できて好都合。ついでにザックも始末できれば御の字だ。
なのに、マンモスからの報告が一向に無い。何かあったのか? いやいや、あの妖魔に限ってそれは無い。今なお作戦行動中なのだ。相手が相手だ。手こずるのは仕方ない。だがしかし……。いやしかし……。
ボスはまた葉巻に火を付け、スパスパと吸いながらグラスに酒を注ぎ入れ、一気に飲み干した。
突然そこに乾いた音がして、思わずボスは飛び上がる。
何の事はない。部下がドアをノックしたのだ。
ボスは内心腹を立てながらも平静を装い、部下を招き入れる。
「入れ。どうした?」
「あの…それが……。小さな娘を連れた大男の浮浪者が、ボスに面会を求めてるんでヤス。情報屋か何かしりやせんが、こんな真夜中の寒空だって言うのに、上半身は裸だしズボンもボロボロだしで、メチャクチャ怪しいんですが……」
「そいつは…名前を名乗ったか?」
「ヘイ。それが……アイアンなんちゃら28世とか、訳の分からねぇ名前を名乗りやがりまして……」
「なっ!? "アイアンティタノス28世"だと!?」
「へ? ……へい。確かにそんな感じの名前でやした」
「馬鹿野郎! そいつはワシの大事な客人だ!! 丁重にもてなせ!!」
「す、すいやせん!!」
「それと、連れの娘の扱いは客人の指示に従うように。分かったな!」
「ヘ、ヘイ!」
部下は慌てて部屋を出ていく。人目が無くなった途端、ボスは独り歓声を上げ、ガッツポーズを取る。
"アイアンティタノス28世"。それはボスが幼少の頃、使役妖魔に付けた名前だった。
「ボス、アイアン……えっと……きゃ、客人を連れてきやした」
「おう、通せ」
部屋に入ってきたのは人の良さそうな大男。だが、上半身は肌着すら着ておらず、逞しい肉体が露出している。ズボンもボロボロで焼け焦げていた。
「ズタボロファッションに焦げ臭いコロンとは、斬新なコーデじゃねぇか。え? アンティよ♪」
「懐かしい呼び名ですね。昔を思い出します」
その声、その顔、その体格は、紛れもなくマンモスだった。しかしその口調はまるで別人だ。訛りはなくなり、穏やかで上品な言葉使い。これがマンモスの……本来の姿なのだろうか?
ボスはニヤリと笑うと、部下を睨み付ける。
「何をしとるか。お前は下がれ」
「え? いや…しかし……いいんですかい?」
「だから言ったろ。コイツはワシの大事な客人だ。余計な気遣いはいらんから、お前も屋敷の警備に回れ!」
「へ、へい……」
不満げな部下だったが、ボスには逆らえない。ふてくされながらも大人しく部屋を出ていった。
するとボスは、決して部下には見せない満面の笑顔を大男に見せる。
「早速だが、報告を聞こうか。まずはそのボロ切れみたいな小汚い恰好だ。何があった?」
「これですか。キュベリさんがコーディネイトしてくださったんですよ。似合ってますか?」
「おお、そうだな。怪しさ満天で最高に似合ってるぜ♪ で? 具体的には?」
「キュベリさんがチーム全員を"ロストボーイ"のアジトの入り口に待機させまして、爆裂魔法か爆発物を使って一網打尽です。チームは全滅。妖魔でなければ私も死んでいたでしょう」
「ほうっ♪ あのキュベリがかっ♪ 部下思いのキュベリがかっ♪ "商品"を独り占めするために部下を皆殺しとはなっ♪」
「魅了の力とは恐ろしいものです。妖魔でなければ私もあの子の虜になっていたかもしれません」
「それで? "商品"はどうした? 連れてきた娘ってのは"商品"なんだろう? え?」
「はい。今は地下倉庫に閉じ込めています。あの子に関われば他の人も魅了され、裏切ってしまいますので、頭巾を深々と被らせ、顔を見せないよう連れて行きました。そして部下の皆さんには、決して倉庫には入らないようにと伝えております。夜明けまで数時間。世話人の必要もないでしょう」
「よし♪ いいぞいいぞ♪ それで、二人はどうした? キュベリのホモ野郎とジェイクのクソ野郎はどうなった?」
「相打ちです。キュベリさんはジェイクさんのナイフ技で首をはねられ、絶命しました。しかしその刹那、キュベリさんは針に猛毒を塗りつけたダーツを投げていまして、ジェイクさんは大技を放った後の硬直で避けられず……」
「そうか……。死んだか……。
そうか! そうか!! そうか!!!
よし! よし!! よし!!! よし!!!!
ザマァみやがれクソジェイク! ワシは勝った! あんのクソ野郎に勝ったんだ!!」
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