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77 絢音の暴走

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「―― では、第一営業部の親睦会を開催したいと思いま~す。皆んなグラスの用意はいいかなぁ~?」

『いいともぉ~!』

「それでは、かんぱ~い !」

『  ( ^_^)/□☆□\(^-^ ) かんぱ~い!』 


 ここは、双子のメンバー、安倍まなみ・大和姉弟の父親が営んでいる居酒屋「花火」。

 奥の座敷を貸し切っての、オアシスエンタテインメント第一営業の親睦会なのだが……。

 パーティー開始から30分後 ――。


「―― あ~~っ、まなみさん・キヨ・大和くん! それに寺沢さんも皆んな全然飲んでないじゃーん」

 絢音はいつも以上に異様なくらいのハイテンションで――、
 心なしか普段より饒舌になっていて、頬の辺りをポーッと上気させ、何とも言えぬ色香を漂わせている。
 
  
「それじゃあ、この絢音さんが飲んじゃお~っと! カンパ~イ」


 ( ^_^)/□☆□\(^-^ )

 ゴクゴク ―― イッキ飲みのペースで飲み出す。
 大和が慌ててその手のグラスを取り上げ。


「カンパ~イじゃねぇっつーのっ! お前はこれ以上飲むな」

「あ~ん、大和くんのいじわるぅっ!」


 絢音の大暴走は続く ――。


「あ、バカ、てめ何処触ってんだよ?!」

「テヘヘへ……やっくんのお*ん*んーっ」


 寺沢は ”??”と、絢音の飲んでいた途中のグラスをさらに大和から取り上げ、中の飲み物の匂いを嗅ぐ。
 
  
「!――ったくぅ、だれだぁ? 和泉のジュースにウイスキー混ぜたの」


 そこへバットタイミング!
 
 三上の登場だ。
 お目付け役として、今夜絢音に付き添っていた三上の実家の部下達は目に見えて色を失くし怯えてさえいる。

 絢音は、(*ノェノ)キャーと嬌声を上げ、異様なハイテンションで三上へ抱きついていきなりキスをした。


「はやとぉ。だーいすき」

「!?あや ――っ お前、あれ程飲むなと言うたのに飲んだんか?」

「えっ~~分かんなぁい。けど、キヨが淹れてくれたコーラとジュース飲んだら凄く気分良くなっちゃたぁ」


 そろり、そろりと腰を上げつつ何処かへ行こうとするキヨの襟首を寺沢がむんずと掴む。


「コラ、逃げるな」

「'`,、('∀`) '`,、――ごめ~ん、悪ノリしすぎましたぁ……」



 そして、それからさらに数十分後 ――。

 酔い潰れ、気持ち良さそうに目をトロンとさせてまどろむ絢音を、三上が抱きかかえて自宅玄関から2人の寝室まで運んでゆく。


「……寝る子は重いっ ……(ったく、こんなに酔っ払いやがって)今日は親睦会って事で大目に見るが、次は容赦なく、水風呂だからな、分かったな?」

「う~ん……やっぱ勇人は優しいな、だ~い好き。……ねーえ?」

「ん?」

「お父さんとお母さん、喜んでくれてるかなぁ」

「あぁ、もちろんさ」

「ふふふ……そっか、よかった……」


 やっと目指すベッドまで辿り着いて、絢音をベッドへ横たわらせた三上は「じゃ、おやすみ」と、出て行こうとしたが。


「う~ん、はやとぉ……」


 気怠げにチョイチョイと手招きをされて”さては急に気分でも悪くなったのか?”と心配して絢音の傍に近寄れば、いきなり腕を掴まれた。


「わっ ―― ?!」


 突然の事に気が動転してとにかく逃げようとすると、それより早く、さらに力強く腕を引かれベッドへ引き込まれた。
 そのまま華奢な腕に背後から抱きつかれ、うなじに顔を埋められてゾクリ……とする。

 不覚にも声が震える。


「あ、あや、こりゃまた、一体何の冗談だ?」

「はやと、ええ匂いがする……」

「する訳ない ―― っ!」


 クンクンと匂いを嗅がれ、お前は犬か――?!と、突っ込みたくなる。

 けれど自分をしっかり抱きしめている手が悪戯に蠢き始めたのを察知して、それどころではなくなった。


「ちょっと待て、絢音、俺にも心の準備ってもんが ――」

「勇人、あんた男のくせに四の五の煩い」


 ったく、酔った女ほど手に負えないもんはない。
 絢音は三上の首筋へ軽く噛み付いた。


「っっ、何を ―― ??」

「マーキング。勇人は私のモノやて、ね」

「お前……」

「ねーぇ勇人? 男の人って何日かおきに、その……出さないとしんどいんでしょ」

「あ?」

「ね~ぇ、はやとぉ?」


 耳元で囁く掠れた低い声が、鼓膜を震わせて胸の奥へ落ちる。


「す、き……」


 突然、絢音の声が今までとは違うトーンに変わったかと思うと、唐突にスルリと解放された。
     
 それと同時に、一気に背中へかかる重み。


「……あ、や?」


 とにかく状況を確かめようと、体を押し上げた三上の横にゴロリ ―― 絢音の体が落ちた。

 およ……?


「―― あやね」


 うぅ ―― ん……と寝返りをうって反対側へ向いてしまった絢音を見て、さすがの三上も呆然とした。
 

「この状況でよう寝られるな?」


 返事をするように、しばらくして気持ち良さそうな絢音の寝息が聞こえてきて、気が抜け呆れるやらだったが ――。
 

「に、しても、せっかくその気になった俺のジュニアはどう鎮めろっちゅうんや? ……あやね」


 と、絢音の首筋へ唇を這わせるが、絢音から漏れるのは意味不明な寝言だけで。
 いっその事このまま夜這い! と、絢音のシャツに伸ばしかけた手は寸前で止まる。
 以前、絢音の体調不良(女の子の日)の時の禁欲より更に長い禁欲を強いられ、つい思い余って押し倒してしまった時本気のビンタを喰らい。

 1週間、口も聞いてくれなかったのを思い出したのだ。

 ”しゃあない、トイレで抜いてくるか……”
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