18 / 83
17 大阪支社にて
しおりを挟む大阪支社の社屋に入ると、”もわん”とした空気が纏わりついた冷気を拭うように優しく私を包んだ。
「あぁ、チビうさ。今夜、ここの課長と同僚達が夕食でもどうか? と言っているんだが、何か予定は?」
2人きりのエレベーター。
三上さんは売約済みの可能性が高いのに、素敵な人と一緒に乗っているという現実が私の緊張を一層高まらせる。
仕事中なのに、三上さんの事が頭の中をグルグルと巡っていて。
「チビうさ?」
ヒョイっと視界に飛び込んできた、三上さんの顔。どアップ
「ひゃっ!」
驚いて身を引いてしまって。
慣れないハイヒールを履いた脚は、見事にバランスを崩した。
このあと訪れる衝撃に、自然と身体が備える。
……ん? あれっ?
一向に訪れない、衝撃。
それどころか、フワリと浮いているような感覚で。
ギュッと閉じた瞼を開くと、三上さんが私ごと掬い上げるように受け止めていて。
「ったく、そそっかしいのは相変わらずだな」
って、吐息がかかるほどの距離で、視線が絡まった。
「だ、大丈夫ですっ。すみませんっ!」
状況を把握して、三上さんの腕から離れようとしたけど、十分に足が床についていない。
「こっちこそ驚かせてしまって申し訳ない」
「本当、すみません」
「それで……今夜どう?」
「……は?」
「本当に聞いてなかったんだな」
聞いてませんでした。貴方のことばかりに気を取られていて……。
「今夜、みんなでメシでもどう?」
「はい。お供します」
顔が紅潮しているのが分かる。
心臓もさっきよりドキドキ、激しく鼓動を打ち始めたみたい。
エレベーターの閉塞感にちょっと息苦しさを感じ始めた頃、ちょうどエレベーターの扉が開いて、三上さんが〈開〉のボタンを押して、先に私を降ろしてくれた。
※※※※※ ※※※※※ ※※※※※
「それでは早速ですが始めましょう。今日は城東支社から和泉さんにいらして頂きました。和泉さん一言お願いします。」
到着から30分ほどすると、会議が始まった。
「和泉です。どうぞよろしくお願いします。―― 早速ですが、企画のコンセプトはご存じの通り……」
立ち上がる予定の新レーベルの作品集め及びプロの作家さんへ作品の提供依頼をするだけでなく。
アマチュア作家統括向けのコンテスト等のイベントも順次開催する予定なので、それの下準備。
それが、今回私に与えられた仕事。
今回の企画は元々”受験生応援企画”として関東地方限定で短期的にする計画だったけど、既存レーベルの読者アンケートの結果、全国展開される方向になったらしく。
とりあえずは小手調べとして関東と関西がタッグを組み、この企画が順調に全国展開出来る基礎づくりをする事になったのだ。
まだ序盤の段階で携われるようになって良かった。
今ならまだ間に合う事がたくさんある。
会議本番は明日。
こちらの支社のお歴々も一堂に会して行われる。
今日は実際に現場で動く主要メンバーの顔合わせを含めて簡単に打ち合わせる程度だと聞いてきた通り、会議は比較的短時間で終わった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる