恋に落ちたら

川上風花

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本章

因縁の再会

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 その残るメンバーの1人は庁舎の屋上で
 爽やかな初夏の風に吹かれながら、
 昼寝の真っ最中だ。
 
 顔の上にストローハットを載せているので
 その輪郭だけしか伺えない。
 
 
 ズカズカとやってきた幸作に足蹴にされ
 もそもそ身じろぎした。
 
 
「っってぇな。何か俺に恨みでもあんのかぁ」

「マキノがおかんむりだ。たまには給料分きっかり
 働けとさ」     
 
「ハハ、お待ちかねの仔猫ちゃんが来たんだな」


 と、半身起き上がった拍子に、
 顔へ載せていたストローハットがはらりと落ちた。
 
 現れた顔はかなりのイケメンで、
 日本の男優・伊*剛*似の面立ちをしている。 
 
 
「んじゃ、俺も勤労に励むとすっかな」
 

 のっそり立ち上がって、堂々たる巨漢をゆさゆさ
 揺するように歩いて昇降口へ向かった。
 
 
 羽柴 清貴(はしば きよたか)38才。
 通称:キヨ。

 海保(海上保安庁)の潜水士、消防庁の特殊救難隊、
 山岳救助隊、など多様な職業を経て、
 昨年この上野警察署へ着任した。  
 
 階級は警部。
 
 また、祠堂学院大学始まって以来の問題児で、
 6年かかってやっと卒業した。
 当然、和巴とも面識あり。
 
 

***** ***** *****


「あーぁ、やっと来た」


 出入り口から現れた羽柴を見て、
 呆れたような口調でチャドが言った。
 
 ここは最上階の食堂。
 
 
「ランチタイムにやっと出てくるなんて、
 まったくキミらしいや」
 
「いやぁ~、それほどでも……んで、そちらさんが
 期待のニューフェースくん?」
 
 
 話しを振られた和巴は羽柴に向けた視線を逸らす事が
 出来ず、箸で摘まんでいた鶏のから揚げをポトリと
 皿に落とした。
 
 
「あれっ、カズ。どうしたの?」

「カズってば」

「あららぁ~、完全に固まってるよ……」

「ふふふ ―― そんなに俺との再会が嬉しいか」


 その言葉に一同は驚く。
 
 
「え――っ ! 再会??」

「おぉ。俺と和巴は同じ中学出身なんだ。
 因みに大学も一緒だった」
 
「へぇー……世間て狭いもんなんだねぇ」

「って事で、和巴、久しぶりの再会を共に ――」


 その言葉を遮るよう和巴は立ち上がり、
 ギュッと握りしめた拳をキヨの顎めがけて
 打ち込んだ。
 
 ガコッ。
 
 驚きで目がテンになる一同。
 
 
「っってぇ、何すんだよっ。和巴ぁ」

「あなたがいると知ったら転属したくなりました。
 お先に失礼します」
 
 
 踵を返し、足早に出ていった。
 
 
「あー ―― キヨ。何となく想像はつくけど」

「お前、カズに何したんよ」

「……」  
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