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本章
じれったい
しおりを挟む煌竜会の仕事の他
不動産会社・金融業(街金)・飲食店経営者の
肩書きを持っている手嶌さんは、
朝9時には出勤準備を整え、マオさん運転の
送迎車で出かけていく。
手嶌さんは接待や何かで誰かと会食をしない限りは、
いつも俺を一緒に食事に連れて行ってくれて、
手嶌さんが来られない時はマオさんが
ケータリングの食事を頼んでくれる。
ある日の昼、手嶌さんはクライアントの幹部と会合、
マオさんは主任教授に呼ばれたとかで大学院へ
出向き。
急遽陣内さんが大きなピザを買ってきてくれた。
1人じゃ食べ切れないサイズで、
せっかくだからと陣内さんも誘って
ダイニングテーブルで向いあわせになり
一緒に食べた。
陣内さんは無口で強面だけれど、
見た目よりずっと繊細そうな人で、
俺にも色々と気を使ってくれているようだった。
初対面の『ウリのガキ』呼ばわりからとは
まるで態度が違う。
でも、多分それは俺が手嶌さんのゲストに
なったからで ――。
陣内さんは手嶌さんに心酔しているから。
「手嶌、さんは ――」
と、ピザを食べながら陣内さんに訊いてみようと
俺は思いきって口を開いた。
「男はダメなのかな?」
食べかけのピザで派手にむせた陣内さんは、
慌てて自分のミネラルウォーターのボトルを掴み、
半分ほど飲み干して息をついた。
「……それはつまり、社長は男を抱くのかという事
ですか?」
しゃちほこばって陣内さんは聞き返してきた。
俺が頷くと、陣内さんは目を泳がせた。
「自分がこんな事を言っては、本当はマズイん
ですが ――」
仕方なくといった感じで陣内さんは続けた。
「たぶん男もイけると思います」
多分と陣内さんが言ったのは、彼が知る限り
今まで手嶌さんが男を囲ったことはなかったため
だったが、シマの中の少年達と接する態度を
傍から陣内さんが見ている印象ではそうだろう
という事だった。
「そうなんだ……」
俺が呟くと陣内さんは落ち着きをなくして、
「あの ――」
と、俺から視線を逸らしつつ言った。
「私が言ったってのは、社長には内緒にしておいて
下さい」
「うん、わかった。ごめんね、妙な事きいちゃって」
そうなんだ……。
一瞬喜びかけて、俺はふと思った。
だったらどうして、手嶌さんは俺に手を
出さないのだろう?
元々、手嶌さんの配下にやられた事だったけど、
こんなに親切にしてもらって ――、
もし手嶌さんがその気なら俺は喜んで
身体を開くのに……。
そう考えたら胸がずきりと疼いた。
俺には、そんな価値もないという事だろうか。
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