我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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後日談 サミュエル編 奥手な2人の誘惑大作戦!!

8  誘惑大成功?!

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 お風呂に入ると少しだけ心が落ち着いた。

「ふぅ~」

 私はベットに入ろうとしたが、とても眠れそうもなくて少しだけ月を見るためにバルコニーに出た。
 月の光に照らされた庭はとても幻想的だ。
 
 光に吸い込まれそうだと思い、庭を眺めていると、ガチャリと扉が開く音が聞こえた。
 音がした方に視線をうつすと、会いたくて会いたくてずっと我慢していた本物のサミュエル先生が立っていた。

「ベルナデット様?!」

 サミュエル先生もとても驚いていた。

「サミュエル先生?!」

(うそ……本物? サミュエル先生、お疲れのはずなのに……出てきてくれた?)

 突然目の前に現れたサミュエル先生の姿に驚いていると、サミュエル先生はバルコニーの手すりに足をかけて、こちらのバルコニーに飛び移っていた。
 私は何も考えることが出来ずにサミュエル先生の腕の中に飛び込んだ。

 久しぶりのサミュエル先生の腕の中は、とても温かくて大きくて……私は嬉しくてぎゅっと抱きしめてしまった。

「サミュエル先生!! ずっと会いたかったです!!」

「私もです!! ずっとずっとこの時を願っていました!!」

 サミュエル先生もきつく抱きしめた。
 しばらく抱きしめ合っていると、サミュエル先生の手が頬に触れ、長くて綺麗な指が私の唇を撫でた。
 それが合図のように私は顔を上げた。
 サミュエル先生の綺麗な顔が月明かりを浴びながらゆっくりと近づいてきたので、私はそっと目を閉じた。

 唇にあたたかで柔らかなものが触れた。
 私はそれがサミュエル先生の唇だと目を開けずとも、もうわかっていた。


――……久しぶりのキス。


 無心でサミュエル先生の唇を感じていた私はいつ間にかサミュエル先生に抱き上げられていた。
 抱き上げられながらも唇は離さず、私はサミュエル先生の首に腕を回した。
 さらにキスが深くなってふわふわした感覚になった頃、サミュエル先生がゆっくりと唇を離した。

「……ん……。ベルナデット様……湯冷めをしてしまっては困りますので、お部屋にお邪魔してもいいですか?」

「はい……」

 私は降りようとしたが、サミュエル先生がそれを許さずにぎゅっと抱きしめると私を見て笑った。

「ベルナデット様、今日はもうこのまま私の腕の中にいて下さい。
 あなたと……これ以上離れられそうにありません」

「……はい」

 こうして私は抱き上げられたまま、部屋に入った。
 そしてサミュエル先生はベットに向かおうとした後、立ち止まり、私を抱いたままソファーに座った。

「ベルナデット様、明日のご予定は?」

「明日から5日は、お休みを頂いています」

「え? そうなのですか? 私もです!!」

「ふふふ。もしかして、私が仕事だと思ってベットではなくソファーに運んで下さったのですか?」

「それも、ありますが……ベットでは自制できる自信が」

「(自制はしなくてもいいのですが……)サミュエル先生とてもお疲れに見えます。
 明日から、5日もお休みがあるのでしたら、今日はベットで一緒に寝ませんか?
 続きは明日ということで……」

 もう少しサミュエル先生とイチャイチャしたいが、サミュエル先生の目の下に深く刻まれたクマをみてしまうと、休んでほしいという思いが強くなった。
 しかし、今日はもうサミュエル先生と離れられそうにもなかったので、私は一緒に眠ることを提案した。

「……そう…ですね。あなたと離れるのは無理ですので一緒に寝ます!!」

 サミュエル先生は困った顔をした後、私を抱き上げると今後は一緒にベットに入った。

「本物のサミュエル先生だ♡ 嬉しい……」

 私がベットの中でサミュエル先生の胸に頬ずりすると、サミュエル先生が何かを呟いた。

「(ブリジット様!!!! 本当に申し訳ございません!!
 この責任はベルナデット様を幸せにすることで取ります!!)」

 サミュエル先生は私の顎を持ち上げて口付けをした。
 これまでよりも深い口付けで驚いていると、サミュエル先生が申し訳なさそうに耳元で囁いた。

「もうこれ以上は耐えられそうにありせん…………あなたがほしいです。ベルナデット」

 その言葉を聞いた瞬間、私は全てをサミュエル先生に委ねたのだった。








【在りし日のブリジットとサミュエル エピソード OPEN♪】





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