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後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!
3 寂しさを知る
しおりを挟む私たちは朝食を船の中でとることにして早々に船に乗り込んだ。
「わぁ~~船の中って感じが全くしないですね」
私たちの乗ったエリアは貴族専用エリアだったためとても豪華な内装だった。
豪華なシャンデリアや、美しい絵画に彫刻。
赤い絨毯の引かれた階段に、光り輝く調度品。
(素敵ね~~~乗ったことないけど、豪華客船ってこんな感じかしら?)
私がキョロキョロと辺りを見回していると、クリス様が微笑んだ。
「ふふふ、そうだね。
ベルは船に乗るのは初めてなの?」
「はい。
クリス様は?」
「私は何度か乗ったよ。
交渉でラジュル国行ったしね」
そういえば、クリス様は今年に入って何度かラジュル国に外交交渉に出かけていた。
クリス様の手腕でとても上手くいったとお父様が褒めちぎっていたのを思い出した。
「ああ、ラジュル国も船で行くのですね」
「うんそうだよ」
私たちは船室に向かった。
ガチャ。
扉を開けると、私は思わず真っ赤になってしまった。
大きな部屋にソファーセットと、大きなベットが目に入った。
(うう~~~どうしてかしら? なんだか恥ずかしいわ!!)
普段の部屋には、本棚や机など生活に必要な物も置いてあるので、あまり感じないが、ホテルのようにシンプルな空間に2人だけだとなんだか居たたまれない恥ずかしさを感じた。
私がなぜだか真っ赤になっていると、クリス様に腰を引き寄せられ、耳元で囁かれた。
「どうしたの? 久しぶりに2人っきりだから恥ずかしいの?」
(ひぇ~~~~~~~!!!!!)
クリス様のいう通り、久しぶりの2人きり。
ここは王族用のスイートなので外に声も聞こえないらしい。
そして普段はとても広い空間で2人きりだが、ここはスイートと言っても船の中なのでそこまで広くはない。
いつもよりクリス様を身近に感じて、心臓が全速力で動いていた。
「ねぇ? ベル? こっち向いて?」
クリス様に妖艶な瞳で見つめられながら頬に手を吠添えられた。
(キスだ……)
その行為はすでによく知っている行為だったので私も自然に目を閉じた。
トントントントン。
「失礼致します。ご朝食をお持ち致しました」
「え?!」
クリス様の唇が触れそうな瞬間、扉を叩く音がして、女性の声が聞こえたので、私は急いでクリス様と離れた。
クリス様は、呆然とした顔をした後、頭を掻きながら声を上げた。
「入ってくれ」
「失礼致します」
クリス様の許可と共に、この船専属の侍女の方が数人部屋に入って朝食の準備をしてくれた。
私はなんとなく恥ずかしくて、窓から見える湖を見ていた。
「お仕度が終わりました。
お食事が済みましたら、呼び鈴を鳴らして頂くか、カートを外に置いて頂ければ片付けを致します。
それでは失礼致します」
侍女の方が去った後、クリス様が困った顔をして微笑んだ。
「まず食事にしようか(まだまだ船は長いしね)」
「はい!!」
そうして私はクリス様と共に朝食にした。
朝食を食べながらクリス様が柔らかく微笑んでくれた。
「ねぇ、ベル。
2人で話すのも久しぶりだね。
最近のベルは何をしていたの?」
「え?
そうですね……あ、そうだ!!
エミリーたちがとうとう結婚するんだそうです!!」
「へぇ~。相手は騎士団の彼?」
「それが!! 違うのです!!
騎士団の彼はどうやら幼馴染が忘れらなかったみたいで、エミリーから振ってあげたそうです」
私はつい興奮気味に言った。
「え? そうなの???
じゃあ、誰と結婚??」
「それが、ずっと、エミリーの顔を見るたびに注意していた文官の方がお相手なんです」
クリス様が驚いた顔をした。
「え? ずっと注意していた人とどうなったらくっつくのさ?」
私は興奮気味に両手を突き上げながら言った。
「そ・れ・が!!!
ロマンティックで素敵なんです~~!!」
「ロマンティック?!」
クリス様が首を傾けた。
「ええ!!
なんでもいつものように注意されていた時に、エミリーってば、彼と別れたつらさもあってつい泣いてしまったらしいんです!!」
「おお~~それは相手も驚いただろうね」
「そうなのです!!
それで、泣かせたお詫びに食事に誘われて、延々と話を聞いてなぐさめてくれたらしんです」
「へぇ~優しいね。彼」
クリス様はとても真剣に話を聞いてくれた。
「そうなのです!! それでその後一緒に食事をするようになって、なんと先日!!
その文官の彼から『城勤めを始めた時からずっと好きだった!!』って告白されたらしんです!!
素敵でしょ~~~~♡♡」
私はつい興奮状態になってしまっていた。
(あ!! いけない私ったら、久しぶりだったからついはしゃいでしまったわ)
私が反省しようとしていると、クリス様は嬉しそうに笑いながら言った。
「ふふふ。そうなんだ!! エミリーもいい人と出会えてよかったね!!
それになんだかベルの方が嬉しそうじゃない??」
「はい!! 嬉しいです!!」
「ふふふ。そうなんだ。可愛いな~~」
(え? 可愛い?!)
私は顔が熱くなるのを感じた。
なんだか、耳も熱くなっているように思う。
「他には何があったの?」
「ああ、後ですね。この話には続きがあって……」
「ふんふん。何があったの??」
私は久しぶりで嬉しくてついクリス様に最近あった出来事を報告した。
クリス様は2時間以上も楽しそうに私の話を聞いてくれた。
(そう、私、こんな時間が好きでクリス様と一緒にいるんだわ、きっと)
ずっと離れていて寂しいとは思っていたが、自分で考えるよりもっと寂しかったようだ。
クリス様と一緒にいてようやく私がずっと寂しいかったのだと知ったのだった。
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