我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
上 下
110 / 145
後日談 クリストフ編 新婚旅行へ行こう!

3  寂しさを知る

しおりを挟む



 私たちは朝食を船の中でとることにして早々に船に乗り込んだ。

「わぁ~~船の中って感じが全くしないですね」

 私たちの乗ったエリアは貴族専用エリアだったためとても豪華な内装だった。
 豪華なシャンデリアや、美しい絵画に彫刻。
 赤い絨毯の引かれた階段に、光り輝く調度品。

(素敵ね~~~乗ったことないけど、豪華客船ってこんな感じかしら?)

 私がキョロキョロと辺りを見回していると、クリス様が微笑んだ。

「ふふふ、そうだね。
 ベルは船に乗るのは初めてなの?」

「はい。
 クリス様は?」

「私は何度か乗ったよ。
 交渉でラジュル国行ったしね」

 そういえば、クリス様は今年に入って何度かラジュル国に外交交渉に出かけていた。
 クリス様の手腕でとても上手くいったとお父様が褒めちぎっていたのを思い出した。

「ああ、ラジュル国も船で行くのですね」

「うんそうだよ」

 私たちは船室に向かった。

ガチャ。


扉を開けると、私は思わず真っ赤になってしまった。

大きな部屋にソファーセットと、大きなベットが目に入った。

(うう~~~どうしてかしら? なんだか恥ずかしいわ!!)

普段の部屋には、本棚や机など生活に必要な物も置いてあるので、あまり感じないが、ホテルのようにシンプルな空間に2人だけだとなんだか居たたまれない恥ずかしさを感じた。

私がなぜだか真っ赤になっていると、クリス様に腰を引き寄せられ、耳元で囁かれた。

「どうしたの? 久しぶりに2人っきりだから恥ずかしいの?」

(ひぇ~~~~~~~!!!!!)

 クリス様のいう通り、久しぶりの2人きり。
 ここは王族用のスイートなので外に声も聞こえないらしい。

 そして普段はとても広い空間で2人きりだが、ここはスイートと言っても船の中なのでそこまで広くはない。

 いつもよりクリス様を身近に感じて、心臓が全速力で動いていた。
 
「ねぇ? ベル? こっち向いて?」

 クリス様に妖艶な瞳で見つめられながら頬に手を吠添えられた。

(キスだ……)

 その行為はすでによく知っている行為だったので私も自然に目を閉じた。


トントントントン。

「失礼致します。ご朝食をお持ち致しました」

「え?!」

 クリス様の唇が触れそうな瞬間、扉を叩く音がして、女性の声が聞こえたので、私は急いでクリス様と離れた。

 クリス様は、呆然とした顔をした後、頭を掻きながら声を上げた。

「入ってくれ」

「失礼致します」

 クリス様の許可と共に、この船専属の侍女の方が数人部屋に入って朝食の準備をしてくれた。
 私はなんとなく恥ずかしくて、窓から見える湖を見ていた。

「お仕度が終わりました。
 お食事が済みましたら、呼び鈴を鳴らして頂くか、カートを外に置いて頂ければ片付けを致します。
 それでは失礼致します」

 侍女の方が去った後、クリス様が困った顔をして微笑んだ。

「まず食事にしようか(まだまだ船は長いしね)」

「はい!!」

 そうして私はクリス様と共に朝食にした。
 朝食を食べながらクリス様が柔らかく微笑んでくれた。

「ねぇ、ベル。
 2人で話すのも久しぶりだね。
 最近のベルは何をしていたの?」

 「え?
 そうですね……あ、そうだ!!
 エミリーたちがとうとう結婚するんだそうです!!」

「へぇ~。相手は騎士団の彼?」

「それが!! 違うのです!!
 騎士団の彼はどうやら幼馴染が忘れらなかったみたいで、エミリーから振ってあげたそうです」

 私はつい興奮気味に言った。

「え? そうなの???
 じゃあ、誰と結婚??」

「それが、ずっと、エミリーの顔を見るたびに注意していた文官の方がお相手なんです」

 クリス様が驚いた顔をした。

「え? ずっと注意していた人とどうなったらくっつくのさ?」


 私は興奮気味に両手を突き上げながら言った。


「そ・れ・が!!!
 ロマンティックで素敵なんです~~!!」


「ロマンティック?!」

 クリス様が首を傾けた。

「ええ!!
 なんでもいつものように注意されていた時に、エミリーってば、彼と別れたつらさもあってつい泣いてしまったらしいんです!!」

「おお~~それは相手も驚いただろうね」

「そうなのです!!
 それで、泣かせたお詫びに食事に誘われて、延々と話を聞いてなぐさめてくれたらしんです」

「へぇ~優しいね。彼」

 クリス様はとても真剣に話を聞いてくれた。

「そうなのです!! それでその後一緒に食事をするようになって、なんと先日!!
 その文官の彼から『城勤めを始めた時からずっと好きだった!!』って告白されたらしんです!!
 素敵でしょ~~~~♡♡」

 私はつい興奮状態になってしまっていた。

(あ!! いけない私ったら、久しぶりだったからついはしゃいでしまったわ)

 私が反省しようとしていると、クリス様は嬉しそうに笑いながら言った。

「ふふふ。そうなんだ!! エミリーもいい人と出会えてよかったね!!
 それになんだかベルの方が嬉しそうじゃない??」

「はい!! 嬉しいです!!」

「ふふふ。そうなんだ。可愛いな~~」

(え? 可愛い?!)

 私は顔が熱くなるのを感じた。
 なんだか、耳も熱くなっているように思う。

「他には何があったの?」

「ああ、後ですね。この話には続きがあって……」

「ふんふん。何があったの??」

 私は久しぶりで嬉しくてついクリス様に最近あった出来事を報告した。
 クリス様は2時間以上も楽しそうに私の話を聞いてくれた。

(そう、私、こんな時間が好きでクリス様と一緒にいるんだわ、きっと)

 ずっと離れていて寂しいとは思っていたが、自分で考えるよりもっと寂しかったようだ。
 クリス様と一緒にいてようやく私がずっと寂しいかったのだと知ったのだった。



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...