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【サミュエル】(学院発展ルート)
11 旅のしおり~蒸気船にて(1)~
しおりを挟む(ここは本当に船の中なの?)
この船は海ではなく湖の上をゆく汽船なので、あまり揺れを感じなかった。
初めてこんな大きな船に乗った私は大きな豪華客船内部に興奮していた。
「ふふふ。後で船の中を歩いてみましょうか?」
「え?サミュエル先生もご一緒して下さるのですか?」
(え?え?船内デート?!サミュエル先生と?)
私が思わず弾んだ声で、尋ねるとサミュエル先生がふんわりと笑いながら答えてくれた。
「はい。むしろ、私はベルナデット様の護衛も兼ねているですから、部屋を出る時は遠慮せずに必ずお声をおかけください」
「あ・・そうですよね。護衛ですね」
私が肩を落としていると、私たちの様子を見ていたコンラッド君が小声で何かを呟いた。
「(なるほど・・。まだ付け入る隙は十分ありそうだな)」
「コンラッド君何か言った?」
私が尋ねるとコンラッド君は驚いて、少し不機嫌そうな顔で言った。
「別になんでもありません。
それより、船には貴族だけしか入れないエリアや、立ち入り禁止エリアなど細かなルールがあります。
心配ですので、私も同行します」
「え?ルール?それは・・確かに心配だわ。
ありがとう!」
「いえ」
そして、コンラッド君がチラリとサミュエル先生を見た。
「学長、お疲れでしたら、私が彼女の護衛を交代しましょうか?
私も一応、剣には覚えがあります。
あなたが以前、3位に入賞した剣術大会で昨年優勝しておりますので」
「え?!コンラッド君、学院でもトップなのに、オレオル学園の騎士科の生徒も出場する大会で優勝?!努力の賜物ね!!凄いわ!!」
私がコンラッド君を褒めるとコンラッド君は顔を真っ赤にして顔を逸らした。
「べ、別に、あなたに褒められたくて努力しているわけではありませんが、一応称賛は受け取って置くことにします」
「ふふふ」
「不気味な顔で笑うのはやめて下さい!!」
「不気味・・・・」
私がショックを受けていると、コンラッド君がサミュエル先生に向き直った。
「ということで、学長はお休みされていて構いませんよ?」
私はコンラッド君の言葉にはっとして、サミュエル先生を見た。
先生は確かに疲れているように見える。
無理もない。
今回の遠征、サミュエル先生は私以上に、スケジュール調整が大変そうだった。
陛下からお話があった日から、ずっと学園に泊まり込んでいたと聞いた。
それに昨日も私は早めに休ませてもらったが、サミュエル先生は、セドリック様と遅くまでお話をされていたようだった。
私がサミュエル先生を見上げて、「休んで下さい」と言おうとした瞬間にサミュエル先生が口を開いた。
「お気遣い頂きありがとうございます。
実は以前、船に乗った時はずっと寝ていたので、まだ私も船についてよく知らないのです。
後学のためにもご一緒致します。
あなたこそ休んでいて構いませんよ?」
サミュエル先生が美しく笑うと、コンラッド君がまるで、大人びた笑みを浮かべた。
「いえ。それでしたら尚更、私は何度も乗っておりますので、ご案内致します」
「では、3人で行きましょう。サミュエル先生、コンラッド君、よろしくお願いいたします」
私が頭を下げると、2人と目が合った。
「(はい・・・まぁ、とりあえずは3人でも)」
コンラッド君が小声で呟いた。
「(2人にはさせませんが)」
サミュエル先生も何かを呟いたが、船の汽笛の音でよく聞こえなかった。
それから私たちは、船に用意されている客室に向かうことにした。
・
・
・
部屋は3人とも貴族専用の1等客室だったので必然的に近くだった。
荷物を置くと、私たちは3人で船の中を散策した。
船の中は、貴族エリアと平民エリアに別れていた。
お互いが気を遣うことなく自由に過ごせるようにということと、防犯上の理由だ。
入口も違えば、船に乗る時の待機場所も違ったが、中も壁があり、全く行き来はできない。
普通に船の旅を楽しむ分には、特に問題なさそうに見えた。
それから私たちは船の甲板に出た。
すると強い風が吹いてきた。
「風が強いですね」
「ええ。この時間は追い風になるので、船の速度もあがります。
危険ですので、一度戻りましょう」
コンラッド君の言葉で、私たちは甲板を後にした。
(あ~外見たかったな~~)
それから、散策を終えて部屋に戻った。
私たちは少し部屋で休憩することにした。
(はぁ~、何もしてないのに疲れたわ・・・ベット気持ちいい)
船の適度な揺れと、ふかふかのベットに横になると私はいつの間にか眠ってしまっていた。
・
・
・
ーーコンコンコン
控え目なノックの音で目を覚ました。
(あれ?私寝てた?)
急いで、鏡を見ておかしなところがないかをチェックして、扉を開けた。
「もしかして、お休みでしたか?」
扉を開けるとサミュエル先生が立っていた。
私は、髪や顔を押さえた。
「寝ていたのわかりますか?」
「ふふふ、大丈夫、綺麗ですよ、ベルナデット様」
(・・・・・綺麗///!!)
私は顔が赤くなるのを誤魔化すようにサミュエル先生に話しかけた。
「あの・・もしかして夕食ですか?」
「いえ。風が収まったようなので、行ってみますか?」
「え?」
私は驚いてサミュエル先生を見上げた。
サミュエル先生を優しく微笑んでくれた。
「甲板、行きたかったのでしょ?」
サミュエル先生はどうして私の思っていることがわかってしまうのだろう。
それが嬉しくて、思わずサミュエル先生の腕を取った。
「はい!」
サミュエル先生は少し驚いたが、私の手が離れないように腕を曲げて私の手を迎え入れてくれた。
「では行きましょうか?」
「はい」
そして、私たちは甲板に向かった。
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