我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

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【エリック】(真相ルート)

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私は覚悟を決めて、2人を見据えた。

「お父様、父上、もし叶うのならば、私はこれからもお兄様の傍にいたいです。」


ドンッ!!!!!

その瞬間、ドアが激しい音を立てて開け放たれた。

(え?何?)

視線を向けると、兄が凄い形相でつかつかと歩み寄ってきた。

(え?何?何なの?怖いんだけど・・。)

私が数歩後ろに下がると、兄に真剣な顔で肩を掴まれた。

「今の話は本当か?」
「え?」

私は一瞬なんのことかわからずに戸惑ってしまった。
エリックは、焦れたように口を開いた。

「ベルが生涯のパートナーに私を選ぶという話だ!!」

(え?生涯のパートナー?)

戸惑っていると、兄がすがりつくような視線を向けてきた。

「どうなのだ?」

その顔をとても愛しいと思ってしまった。
きっと私は兄の傍を離れることは出来ないかもしれない。
それならばきっと生涯のパートナーということなのだろう。

「はい。お兄様の傍にいたいです。」

その瞬間、私は唇に体温を感じた。


・・・。

・・・・・。

・・・・・・・え??


気づいたら、兄にキスをされていた。

父と、実父が息をのんだのがわかった。


兄が名残惜しそうに私の唇から口を離した。


(!?!?!?・・・父2人の前で、キス?!
なんで?どうして?
初めてだったのに~~~~!!!!)


驚いて兄を見ると、まるでとろけそうな顔で見つめられた。


(うっ!!)

私は思わず口をパクパクさせていた。

(いつも厳しい顔しか見せないのにこんな時にそんな顔・・・反則だよ・・・。)

真っ赤な顔で俯いていると、兄が私の腰を抱き寄せた。
そして、呆然としている父と、実父の方を向いた。

「聞きましたか?
ベルは私を選びました。
私はベルと生涯を共にします!!」



・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。



なんのことかわからずに呆然としていると、実父が抱きついてきた。
実父に抱きつかれている時も兄は私から離れようとはしなかった。

「う~~~。ベル~~~。
嬉しいはずなのに・・。
エリックに殺意さえ感じるこの感情はなんなのだ~~~!!
あ~~ん。ベル~~。
私のベル~~~!!」

すると、お父様がお兄様の方を向いた。

「はぁ~、エリック。今のくらいなら構わないが、わかっているな!」

すると兄が真剣な顔をした。

「もちろんです。
そこまで愚かではありません。
それに後たった数か月。
問題ありません。」

お父様が溜息をついた。

「そうか・・。」


すると、今度は実父が顔を真っ青にして、泣きそうな顔でエリックを見た。


「な!!数ヵ月って・・・。
なにもそんなに急がなくてもいいんじゃない?
私はまだそんなに急いで孫の顔を見なくても大丈夫だよ。
もうすこしゆっくりでいいよ。
ゆっくりで!!」

それを聞いたお父様が溜息をついた。

「お前にその言葉を言う権利はないな・・。」
「ううう~~~~。」
「因果応報だな、トリスタン・・。」
「あ~~~ベル~~~。」

私は思わず頭を抱えてしまった。
すると兄が、実父に抱きしめられている私の顔を見て小さく笑った。

「ベルは混乱しているようなので、今日は部屋で休ませます。
詳しくは明日にでも。」
「う・・そうだね・・・決めたのなら早い方がいいしね。
明日からは忙しくなりそうだ。」

兄の言葉で、実父が私から離れた。

「そうだね。今日はゆっくりお休み。いい夢を。」

父が優しく微笑んだ。

「はい、おやすみなさい。」

私は2人の父にあいさつをした。

「それでは私たちはこれで、失礼致します。」

私が兄に手を引かれて、部屋を出ようとすると、お父様に呼び止められた。

「エリック!!わかっているな。」
「わかっています。」

そう言って部屋を出た。
部屋を出る時、顔を真っ青にしてる実父と、心配そうな父の顔が見えた。






ーー………チュ…………。


サロンの扉を閉めた途端、兄に口付けをされた。

(え?・・・う?!)

息ができなくて空気を求めてもがいていると、兄が、一度口を離し妖艶に笑った。

「ベル。鼻で息をするんだ。やってみろ。」

そう言ってまた口付けられた。

(うう~~。鼻、鼻、鼻・・・)

私はまるで何かの呪文のように鼻、鼻と唱えた。
すると、鼻で息ができるようになった。


兄はゆっくりと私から唇を離すと目を細めた。


「最後の方は少し出来たようだが、口を閉じているんだ。鼻で息をしないと苦しいぞ?」
「そ・・それはなんとなく理解できますが・・。」

私は真っ赤な顔で睨むように兄を見た。

「そんなことより、ひどいです。
初めてのキスだったのに・・。
あんなみんなの前で・・。」

すると兄がニヤリと笑った。

「だから今、2人だけでやり直しをしただろう?」
「廊下でなど!!誰に見られるかわからないじゃないですか?」

すると兄が呆れた顔をした。

「これはまだ入門編のキスといったところだ。」

(入門編?!キスにそんなものがあるの?!)

私が驚いていると、兄は淡々と話を続けた。

「この程度、人に見られたところで特に問題はない。
むしろ今後、私たちは人前で、行う必要がある。」
「え?!人前で?!」

(キスって人前でもしなければいけないの???
愛情表現以外に、パフォーマンスの役割もあるなんて!!!
公爵家って大変なのね!!)

私は恐る恐る兄に尋ねた。

「ちなみに入門編以外にはどんな段階があるのですか?」

兄が「ん~。」と呟いた。

「初級編、中級編、上級編といったところだろうな・・。」
「え?そんなに・・・!!」

私は思わず眩暈を起こしそうになった。
すると、兄がいつもの様子でしれっと答えた。

「心配するな。私が全て教えてやるから楽しみに待ってろ。」

「・・・・。」

私が黙っていると、兄は美しく笑った。
そして、思い出したように口を開いた。

「ああ。そういえば、ベルの初めてのキスは先ほどのキスではないぞ?」
「え?!」

兄は突然、爆弾を落としてきた。

「え?私のファーストキスはいつなのですか?」

すると兄が眉を上げた。

「ん~。想像に任せる。
だが相手は私だということだけは言っておこう。」
「え~~~。
私のファーストキスを奪っておいて、酷いです。」
「そうだな・・。中級編のキスをマスターしたら教えよう。
どうだ?今日にでも聞きたいか?」

私はおもいっきり首を横に振った。

「いえ・・。いいデス。遠慮します。」

そして、兄が楽しそうに笑った。

「まぁ。いずれな。」
「・・・・・わかりました。」


私がこれからのことを思って心臓をバクバクさせていると、兄に抱きしめられた。
そして、兄が切なそうに呟いた。

「夢を見ているようだ。・・・ベル・・・好きだ」


ずっと厳しくて、無口な兄の甘い言葉と、優しさは、破壊力抜群だ。
兄の変わりように思わず、腰に力が入らなくなってしまった。

すると、兄は「ふふ」と笑って目を細めると、私を抱き上げた。

「とりあえず部屋に着いたら、また先ほどの続きをする。
折角鼻で少し息が出来るようになったんだ。
このまま習得してしまおう。」

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・習得?

兄の言葉に私は思わず大きな声を上げてしまった。

「え?!習得?!鼻での息継ぎをですか?」
「そうだ。最低限これが出来なくては、初級編に移行できないからな。」

私は思わず首を傾けた。

「あの~お兄様はキスの話をしているんですよね?」
「そうだが?何事も鍛錬を欠かすことはできない」

(あれ?キスってもっとこう甘い雰囲気になるものなんじゃないのかな?
いや、良く知らないけど・・。
でもそうか・・。
私が知らないだけで、みんな初めは息継ぎから練習してたんだ・・。
キスっていうのも大変なんだな・・。)



すると、兄が声にならないように呟いた。

「(まぁ、このくらいで音を上げてられたら困るからな。)」




私が怪訝な顔で見つめていると、兄が優しく微笑んだ。

「さぁ、部屋で続きをするか。
今日中に息継ぎをマスターすることが目標だ。」


兄はこれまでのような厳しい顔に戻っていた。

(さっき一瞬別人みたいに溺愛みたいにならなかった??え~~気のせい??)


私は力なくうなだれた。

「善処します・・。」

(ああ、やっぱり兄は兄だった)


こうして夜は更けていった。

その日・・実父の雄叫びのような泣き声が屋敷に響いていたらしいが、私は息継ぎをマスターするこことにいっぱいいっぱいで、その声は聞こえなかった。
結局、私は兄の意向で、しばらく入門編で訓練することになったのだった。











※【エリック】(真相ルート)は続きは、とあるエピソード後です。しばらくお待ち下さい<(_ _)>
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お忙しい中、お読み頂きましてありがとうございました!!
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