我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番

文字の大きさ
上 下
90 / 145
【エリック】(真相ルート)

1 選んだ人

しおりを挟む
私は覚悟を決めて、2人を見据えた。

「お父様、父上、もし叶うのならば、私はこれからもお兄様の傍にいたいです。」


ドンッ!!!!!

その瞬間、ドアが激しい音を立てて開け放たれた。

(え?何?)

視線を向けると、兄が凄い形相でつかつかと歩み寄ってきた。

(え?何?何なの?怖いんだけど・・。)

私が数歩後ろに下がると、兄に真剣な顔で肩を掴まれた。

「今の話は本当か?」
「え?」

私は一瞬なんのことかわからずに戸惑ってしまった。
エリックは、焦れたように口を開いた。

「ベルが生涯のパートナーに私を選ぶという話だ!!」

(え?生涯のパートナー?)

戸惑っていると、兄がすがりつくような視線を向けてきた。

「どうなのだ?」

その顔をとても愛しいと思ってしまった。
きっと私は兄の傍を離れることは出来ないかもしれない。
それならばきっと生涯のパートナーということなのだろう。

「はい。お兄様の傍にいたいです。」

その瞬間、私は唇に体温を感じた。


・・・。

・・・・・。

・・・・・・・え??


気づいたら、兄にキスをされていた。

父と、実父が息をのんだのがわかった。


兄が名残惜しそうに私の唇から口を離した。


(!?!?!?・・・父2人の前で、キス?!
なんで?どうして?
初めてだったのに~~~~!!!!)


驚いて兄を見ると、まるでとろけそうな顔で見つめられた。


(うっ!!)

私は思わず口をパクパクさせていた。

(いつも厳しい顔しか見せないのにこんな時にそんな顔・・・反則だよ・・・。)

真っ赤な顔で俯いていると、兄が私の腰を抱き寄せた。
そして、呆然としている父と、実父の方を向いた。

「聞きましたか?
ベルは私を選びました。
私はベルと生涯を共にします!!」



・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。



なんのことかわからずに呆然としていると、実父が抱きついてきた。
実父に抱きつかれている時も兄は私から離れようとはしなかった。

「う~~~。ベル~~~。
嬉しいはずなのに・・。
エリックに殺意さえ感じるこの感情はなんなのだ~~~!!
あ~~ん。ベル~~。
私のベル~~~!!」

すると、お父様がお兄様の方を向いた。

「はぁ~、エリック。今のくらいなら構わないが、わかっているな!」

すると兄が真剣な顔をした。

「もちろんです。
そこまで愚かではありません。
それに後たった数か月。
問題ありません。」

お父様が溜息をついた。

「そうか・・。」


すると、今度は実父が顔を真っ青にして、泣きそうな顔でエリックを見た。


「な!!数ヵ月って・・・。
なにもそんなに急がなくてもいいんじゃない?
私はまだそんなに急いで孫の顔を見なくても大丈夫だよ。
もうすこしゆっくりでいいよ。
ゆっくりで!!」

それを聞いたお父様が溜息をついた。

「お前にその言葉を言う権利はないな・・。」
「ううう~~~~。」
「因果応報だな、トリスタン・・。」
「あ~~~ベル~~~。」

私は思わず頭を抱えてしまった。
すると兄が、実父に抱きしめられている私の顔を見て小さく笑った。

「ベルは混乱しているようなので、今日は部屋で休ませます。
詳しくは明日にでも。」
「う・・そうだね・・・決めたのなら早い方がいいしね。
明日からは忙しくなりそうだ。」

兄の言葉で、実父が私から離れた。

「そうだね。今日はゆっくりお休み。いい夢を。」

父が優しく微笑んだ。

「はい、おやすみなさい。」

私は2人の父にあいさつをした。

「それでは私たちはこれで、失礼致します。」

私が兄に手を引かれて、部屋を出ようとすると、お父様に呼び止められた。

「エリック!!わかっているな。」
「わかっています。」

そう言って部屋を出た。
部屋を出る時、顔を真っ青にしてる実父と、心配そうな父の顔が見えた。






ーー………チュ…………。


サロンの扉を閉めた途端、兄に口付けをされた。

(え?・・・う?!)

息ができなくて空気を求めてもがいていると、兄が、一度口を離し妖艶に笑った。

「ベル。鼻で息をするんだ。やってみろ。」

そう言ってまた口付けられた。

(うう~~。鼻、鼻、鼻・・・)

私はまるで何かの呪文のように鼻、鼻と唱えた。
すると、鼻で息ができるようになった。


兄はゆっくりと私から唇を離すと目を細めた。


「最後の方は少し出来たようだが、口を閉じているんだ。鼻で息をしないと苦しいぞ?」
「そ・・それはなんとなく理解できますが・・。」

私は真っ赤な顔で睨むように兄を見た。

「そんなことより、ひどいです。
初めてのキスだったのに・・。
あんなみんなの前で・・。」

すると兄がニヤリと笑った。

「だから今、2人だけでやり直しをしただろう?」
「廊下でなど!!誰に見られるかわからないじゃないですか?」

すると兄が呆れた顔をした。

「これはまだ入門編のキスといったところだ。」

(入門編?!キスにそんなものがあるの?!)

私が驚いていると、兄は淡々と話を続けた。

「この程度、人に見られたところで特に問題はない。
むしろ今後、私たちは人前で、行う必要がある。」
「え?!人前で?!」

(キスって人前でもしなければいけないの???
愛情表現以外に、パフォーマンスの役割もあるなんて!!!
公爵家って大変なのね!!)

私は恐る恐る兄に尋ねた。

「ちなみに入門編以外にはどんな段階があるのですか?」

兄が「ん~。」と呟いた。

「初級編、中級編、上級編といったところだろうな・・。」
「え?そんなに・・・!!」

私は思わず眩暈を起こしそうになった。
すると、兄がいつもの様子でしれっと答えた。

「心配するな。私が全て教えてやるから楽しみに待ってろ。」

「・・・・。」

私が黙っていると、兄は美しく笑った。
そして、思い出したように口を開いた。

「ああ。そういえば、ベルの初めてのキスは先ほどのキスではないぞ?」
「え?!」

兄は突然、爆弾を落としてきた。

「え?私のファーストキスはいつなのですか?」

すると兄が眉を上げた。

「ん~。想像に任せる。
だが相手は私だということだけは言っておこう。」
「え~~~。
私のファーストキスを奪っておいて、酷いです。」
「そうだな・・。中級編のキスをマスターしたら教えよう。
どうだ?今日にでも聞きたいか?」

私はおもいっきり首を横に振った。

「いえ・・。いいデス。遠慮します。」

そして、兄が楽しそうに笑った。

「まぁ。いずれな。」
「・・・・・わかりました。」


私がこれからのことを思って心臓をバクバクさせていると、兄に抱きしめられた。
そして、兄が切なそうに呟いた。

「夢を見ているようだ。・・・ベル・・・好きだ」


ずっと厳しくて、無口な兄の甘い言葉と、優しさは、破壊力抜群だ。
兄の変わりように思わず、腰に力が入らなくなってしまった。

すると、兄は「ふふ」と笑って目を細めると、私を抱き上げた。

「とりあえず部屋に着いたら、また先ほどの続きをする。
折角鼻で少し息が出来るようになったんだ。
このまま習得してしまおう。」

・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・習得?

兄の言葉に私は思わず大きな声を上げてしまった。

「え?!習得?!鼻での息継ぎをですか?」
「そうだ。最低限これが出来なくては、初級編に移行できないからな。」

私は思わず首を傾けた。

「あの~お兄様はキスの話をしているんですよね?」
「そうだが?何事も鍛錬を欠かすことはできない」

(あれ?キスってもっとこう甘い雰囲気になるものなんじゃないのかな?
いや、良く知らないけど・・。
でもそうか・・。
私が知らないだけで、みんな初めは息継ぎから練習してたんだ・・。
キスっていうのも大変なんだな・・。)



すると、兄が声にならないように呟いた。

「(まぁ、このくらいで音を上げてられたら困るからな。)」




私が怪訝な顔で見つめていると、兄が優しく微笑んだ。

「さぁ、部屋で続きをするか。
今日中に息継ぎをマスターすることが目標だ。」


兄はこれまでのような厳しい顔に戻っていた。

(さっき一瞬別人みたいに溺愛みたいにならなかった??え~~気のせい??)


私は力なくうなだれた。

「善処します・・。」

(ああ、やっぱり兄は兄だった)


こうして夜は更けていった。

その日・・実父の雄叫びのような泣き声が屋敷に響いていたらしいが、私は息継ぎをマスターするこことにいっぱいいっぱいで、その声は聞こえなかった。
結局、私は兄の意向で、しばらく入門編で訓練することになったのだった。











※【エリック】(真相ルート)は続きは、とあるエピソード後です。しばらくお待ち下さい<(_ _)>
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

処理中です...