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【クリストフ】(王妃ルート)

10 穏やかな時間

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「ベルナデット様。お疲れ様でした。本日はこれで終わりですよ。」

私の補佐をしてくれているエミリが嬉しそうに言った。

「ふふふ。ありがとう。
あ~よかった~!!これなら騎士団の演習が終わるのに間に合うでしょ?」

私はエミリを見て笑った。
するとエミリが真っ赤な顔をした。

「はい。今日は絶対に彼に昇進したお祝いを渡したくて!!
ベルナデット様、ご尽力ありがとうございました。」
「ほら、もういいわよ。早く行かなきゃ!!」
「でも・・。」
「いいから。あとはクリスの部屋に行くだけだから大丈夫よ。」
「いえ!!ベルナデット様になにかあっては・・。」

エミリと言い合っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

「ベルのことは私に任せてもらってかまわないよ?」

振り向くと、クリスとローベルが立っていた。
エミリは困った顔をした。

「ほら。クリスとローベルも一緒だから大丈夫よ。
また、明日お願いね。」

私はもう一度エミリを見た。

「はい!!それでは、ベルナデット様、殿下、ローベル様、失礼致します。」

エミリが頭を下げると足早に去っていった。

「ふふふ。」
「嬉しそうな顔。」

私が笑っていると、クリスがいたずらっ子のような笑顔を向けてきた。

「はい。嬉しいですから。」
「そっか。」
「妬きます?」
「妬かないよ!!・・・そのくらいじゃね。」

そして、私たちはクリスの部屋に向かった。
最近ではクリスの部屋で話をしてから、自室に戻っていた。

ローベルが去って2人になると、クリスに後ろから抱きしめられた。

「あ~今日も長かった。」
「お疲れ様でした。」
「ありがとう。ベルもお疲れ様。」
「ありがとうございます。」

クリスが満足するまで抱きしめられていると、クリスが身体を離して、手を引いてきた。

「疲れてるのにごめん。座ろう。」
「はい。」

ソファーに座った途端にクリスが嬉しそうに笑った。

「休みが取れそうなんだ!しかも丸1日!!」
「え?」

私は比較的休みをもらっていたのだが、クリスはかなり忙しそうで、午前だけや、午後だけの休みは取れていたが、1日も休みもらえることは滅多になかった。

「よかったですね!クリス様!!」
「ああ!!ねぇ、ベル。どこ行きたい?」

私は少し戸惑ってしまった。

「あの・・折角のお休みなのに・・お出かけしてもいいのですか?
お部屋でゆっくりと過ごされたらどうですか?」

私は休みのないクリスを連れまわすのは申し訳なかった。
すると、クリスがニヤリと笑った。

「ベルと結婚して、部屋でないと出来ないことができたらそうする。
でも、今は君とどこかへ出かけたい。どこ行く?」



私の頭の中に選択肢が浮かんだ。




▶城下


▶湖




城下・・。まだ小さい頃、私は兄と一緒に城下に行ってしまった。
だから、今度はクリスと一緒に行ってもいいかもしれない。

湖・・。私たちが王立音楽芸術学院に入学する前、2人で湖で子供用のボートに乗った。
そこで大人になったら大人用のボートに乗ろうと約束した。


「そうですね・・。城下か、湖でしょうか?」

そういうと、クリスが懐かしそうに目を細めた。

「湖か・・。そういえば、大人用のボートにベルと一緒に乗る約束だったね。」
「はい!!」

そして、今度は少し不機嫌になった。

「城下も、本当は私と行くはずだったのに・・エリックと行ったんだよね。」
「・・はい。そうですね。」
「そういえば、欲しい本があるんじゃなかった?」
「すみません。それはすでに買いました。」
「あはは。そうか・・あれから随分と時間が経っちゃったしな~~。」

私はクリスを見つめた。

「どうされます?」

クリスが目をつぶって考えた。

「う~~~~ん!!」






しばらくしてクリスが目を開いた。

「よし!!両方行こう!!」
「え?両方ですか?」

クリスが楽しそうに笑った。

「そう!!午前中は湖でボートに乗ろう!
そのままそこで昼食をとる。」
「はい。」

私は頷いた。

「そして、午後から戻ってきて城下を見て回った後に、城下で夕食にしよう。
どうかな?」
「私は嬉しいですが、クリス様はそれでいいのですか?
疲れませんか?」

するとクリスが溜息をついた。

「あのね、ベル。
私は騎士団の演習に参加した後、深夜まで貴族会議に出席したりしてるんだよ?
私の心配なんて必要ないよ。」
「クリス様・・大変ですね・・。」
「まぁ。・・で?どう?」

クリスが顔を覗き込んできた。

「嬉しいです。すごく楽しみです!!」

クリスが私の耳元に唇を寄せた。

「ベル・・。お願い。」

私は体温が上がるを感じながら、クリスを見つめた。

「クリス様好きです。」

クリスが無邪気な笑顔を見せた。

「私も、ベルが好きだよ。大好きだ・・。」

そう言って唇を寄せた。

まだ少しぎこちないキスはくすぐったくて、でもとても甘くて不思議な気分だった。






※【エリック】(真相ルート)  ROUTE OPEN ♪

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