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第一章 幸せが約束された未来

10 初恋の人との出会い(2)

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「凄い……本当にキレイ……」

 ハンスに連れて来られた場所は、大きな噴水の隣につるバラのアーチがあり、様々な種類のバラが咲き乱れる美しい場所だった。

 噴水の水が常に七色に反射していると思ったら、この噴水は町の広場にあるような、ただの石ではなく、見たこともない石が使われていた。

「気に入った?」

「はい」

 ハンスが嬉しそうに笑うと、「僕たち結婚するんだから、普段の言葉でいいよ」と言った。
 優しい瞳で見つめらるのたとても嬉しいと思って、私も笑顔で答えた。

「うん、じゃあ、ハンス。よろしくね」

「ああ、そっちの方がシャルに近づけたみたいで嬉しいな。実は、僕、お茶会でシャルを見た時から、ずっと君の事を考えてたんだ」

「お茶会?」

 どういうことだろうか?
 私は、お茶会ではハンスに会っていないはずだが……。

「本当は君をお茶会で見つけた時にすぐ、君のところに行きたかったんだけど、動けなくて……声をかけなかったことを、後悔したんだ」

 そういえば、エカテリーナがずっと、『あいさつがしたいけど、囲まれれて近づけないわね……』と言っていたが、ハンスのことだったのだろうか?
 もしかして、私はあの時、のんきにお茶を楽しんでいる場合ではなかったのだろうか?
 私は、急いでハンスに謝罪した。

「ごめんなさい、ハンス。私の方こそあいさつに行くべきだったのに」

「いや、僕は君たちが、楽しそうにお茶会を楽しんでくれたことが嬉しかったんだ。
 お菓子を食べて、楽しそうに話をしていたシャルはとても可愛かったから」

 可愛い……。
 両親や、エマやエイドは、よく私のことを可愛いと言ってくれる。
 それはとても、嬉しいが、ハンスに言われると、なんだか頬が熱くなってきて自分でも戸惑ってしまった。

「ハンス……そんな風に言ってくれて、ありがとう」

「ふふふ、あの後、すぐにおじい様が『ホフマン伯爵家に相応しい娘を見つけた』って、おっしゃっていたから、もうシャルには会えないかと思っていたんだ」

 つまり、ホフマン伯爵が家に来た時、ハンスは私が相手だと知らなかったということだ。
 ということは、私がもし、あの時、マッローネダイアの原石を選ばなければ、ハンスとは会っていなかったということだろうか?

 私が考えていると、ハンスが嬉しそうに笑った。

「だから、シャルが来てくれた時、夢かと思った!! また、君に会えて嬉しい。しかも僕のお嫁さんになってくれるなんて!! ねぇ。あの時言えなかったことを言ってもいいかな? シャルが着ていた、深い紫水晶のようなドレス、良く似合ってて素敵だったよ」

 顔が熱いと思ったが、熱いのは顔だけじゃなかった。
 身体中の体温が上がって、心臓の音が大きく聞こえる。それだけじゃなく、普段は聞こえない耳の中まで脈を打つ音が聞こえる。

 ハンスと繋いだ手が、とても恥ずかしいのに嬉しくて……。
 初めての感情に戸惑いながら答えた。

「……ありがとう」

 それから、私たちはハンスに案内されて、庭を見て回った。伯爵家の庭はとても広くて、今日だけでは、回れそうになったので、また今度見ることにした。

 ハンスと手を繋いで、お父様たちのサロンに戻った。
 すると、心配そうな顔のお父様と、エイドの顔が見えた。
 そんな中、ホフマン伯爵が私たちを見て真剣な顔をした。

「2人ともどうかな? 婚約してもいいだろうか?」

 すると、ハンスが私を見て頷いたので、私も頷き返した。

「おじい様、僕はシャルと婚約したいです!!」

 私も、ホフマン伯爵を見て言った。

「私も、ハンスと婚約したいです」

 その瞬間、お父様はなんとも言えない顔をしたが、ホフマン伯爵は、嬉しそうに笑った。

「はっはっは!! そうか、ウェーバー嬢がお相手なら、我がホフマン伯爵家も安泰だな」

 そう言った後に、父の前に書類と羽ペンを差し出した。

「よろしいでしょうかな? ウェーバー子爵殿」

 お父様は、私を見て、真剣な顔をした。

「シャル。本当にいいんだね」

「はい」

 私はお父様をじっと見つめた。視線がぶつかって、数秒。
 お父様がフワリと笑って「そうか」と言った後に、ホフマン伯爵と、ハンスの方を見て頭を下げた。

「娘をどうぞ、よろしくお願い致します」

 すると伯爵が力強く言った。

「ホフマン伯爵家の誇りにかけて、ウェーバー嬢の幸多い未来に尽力致します」

 ハンスも真っすぐにお父様に向かった言った。

「必ず、シャルを幸せにします」

 お父様は、少し笑うと迷わず、婚約誓約書にサインした。 
 こうして、私はハンスの婚約者になったのだった。





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