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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還

お気に入り7000感謝SS

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※こちらは本編ではありません。
皆様への感謝を込めた番外編になりますので、気になる方だけお読み頂けると有難いです。



――舞台は、ベルン国の王太子に招待された夕食会。
本編ではさらりと流されてしまったパーティーの続きです。






【お気に入り7000感謝SS】

リリア&ジーニアス+ブラッド『sweet sweet』







どうぞ……。

――――――――――――



 

 アンドリューとの連弾が終わり、私はアンドリューに手を差し出されて立ち上がると、アンドリューとヒューゴと三人で手を繋いでみんなの前でお辞儀をした。そしてその後に、アンドリューとヒューゴとハグをした。
 みんなに拍手をしてもらいながら「よかった」「素晴らしかった」と言われて、私たちは「ありがとう」と答えた。すると、ベルン国の国王と王妃が私の前にやってきた。

「クローディア様、少しよろしいでしょうかな?」

 私は「はい」と言って、国王と王妃に向き合った。皆は自然と私たちを見て距離を取っていた。皆が私たちから距離を取ると、国王が私の前に手を差し出した。

「演奏、素晴らしかった。今日の演奏もそうだが、私を含め、ベルンの民の心を震わせた教会での演奏も……素晴らしかった。あなたには、本当に感謝している」

 私は国王の手を取ると、微笑みながら答えた。

「お褒め頂き光栄です、陛下。これからもよろしくお願いします」

 すると、今度は王妃様が私の手を取って顔を寄せた。

「クローディア様、演奏本当に素晴らしかったわ。わたくしは、国のこともだけど……アンドリューのことも感謝しているの」

 王妃の言葉の意図が汲み取れずに、私がじっと見つめていると、国王も小声で言った。

「私たちは、アンドリューが婚約者に裏切られて、女性不信になるのを懸念していた」

 あ……。
 
 アンドリューは、信頼していた婚約者に媚薬を盛られ、自分自身の体調を崩しただけではなく、国まで奪われ、さらにその女性は敵国の皇帝の妻になっている。
 これは確かに、相当なトラウマになるだろう。

 私が言葉を失っていると、王妃は嬉しそうに言った。

「クローディア様。アンドリューは、あなたとの連弾の曲を編曲しながらとても楽しそうだったのです。あなたと一緒に奏でるならと……本当に、とても楽しそうで……」

 王妃はそこで涙を流して言葉を詰まらせてしまった。
 私との連弾がアンドリューの心を少しでも明るく出来たのなら、こんなに嬉しいことはない。
 国王は王妃を支えながら私を見て優しく微笑んだ。

「あなたのような女性がいると知れて、あなたと出会えて、アンドリューは幸運でした」

 ――出会えたことが幸運だった。

 それは、私もよくわかる。本当に……。私もたくさんの大切な人に出会ったから……。
 私は「二人に御言葉感謝いたします」と答えたのだった。







 国王と王妃との話を終えると、ジーニアスがすぐに私の側に歩いて来た。

「クローディア様、演奏、とてもよかったです!! 感動しました!!」

 ジーニアスの心からの賞賛の言葉に触れて、私は自然に笑顔になった。

「ふふ、ありがとう。デザート、随分と待たせてしまってごめんなさい」

 ジーニアスが笑って私に手を差し伸べながら言った。

「いえ、後はゆっくりと過ごされて下さいね」

 私は「そうね」と答えると、ジーニアスの手を取った。ジーニアスの手はいつもあたたかい。ゆっくりと歩くジーニアスに案内されて三人がけの小さなテーブルに向かった。

 リリアは丁度飲み物を用意してくれていた。

「クローディア様、とても素敵な演奏でした!!」
「ありがとう、リリア」

 ジーニアスにエスコートされながらテーブルに座ると、私の座った後に、リリアとジーニアスも同じテーブルに座った。初めは、私と同席するのをためらっていた二人が迷いもせずに一緒にテーブルについてくれるのが、とても嬉しいと思えた。

 リリアは用意してくれていた三種類の飲み物を差し出しながら言った。

「こちらがもも、真ん中がずゆ、そしてこちらがごちいの果実水です。クローディア様、どれがよろしいでしょうか?」

 果実水というのはフレッシュジュースのことだ。
 どれもとても美味しそうだった。

「これにしようかしら」

 私がももの果実水を選ぶと、リリアがごちい、ジーニアスがずゆの果実水を手に持った。

 私は「二人ともありがとう」と言って少しだけグラスを上げた。すると、リリアもジーニアスもグラスを上げた。一応、これはこの世界の乾杯だ。グラスは合わせずに、グラスを少し高く上げる。
 そして、ゆっくりと口に入れた。
 自然な甘さのジュースが喉を通り超えると、乾いた喉を潤してくれた。
 
「美味しいわ……」

 アンドリューと即興で連弾をした後だったので、緊張していたようで、果実水がとても美味しく感じた。
 果実水を飲むと、ジーニアスが頼んでくれたカットされた三種類のケーキがデコレーションされて並べられた。一つのケーキが二口大くらいで丁度いい大きさだった。

「どれも美味しそうね~~」

 私の言葉にリリアも「本当に」と嬉しそうに頷いた。そして私は一つ目のケーキを半分に切って口に入れた。爽やかな酸味と甘さのバランス絶妙でとても美味しい!!

「本当ですね。しかも、クローディア様のその幸せそうなお顔でこちらまで幸せになります」

 ジーニアスが私をみながらにこにこしながら言った。そして嬉しそうに目を細めながら言った。

「本当に、私はクローディア様にお会いできてよかったと思います。記録書記官になって心からよかった」

 ジーニアスが本当に嬉しそうな顔でそんなことを言うので、私は思わず照れてしまった。でも嬉しくて、自然に笑顔になっていた。

「私も……ついさっき、同じことを思ったの。みんなに会えてよかったって……」

 私の言葉を聞いて、リリアも少し照れながら嬉しそうに言った。

「私もです。実は……クローディア様に結婚式で使ったネックレスをお借りした時、凄く恐れ多いし、怖ったのですが、同時にこんなに大切な物を私に預けて下さったことが……誇らしくもありました。大切な方から信頼して頂くことがこれほど嬉しく、誇らしいものだなんて、知りませんでした。私もクローディア様の専属侍女になって幸せです」

 どうしよう……嬉しい……。
 気が付くと私の目から涙が流れていた。
 ジーニアスやリリアの言葉が嬉しくて、嬉しくて……たまらない、と思った。

「本当に、二人に……みんなに会えてよかった! さぁ、ケーキを食べましょう!」

 照れ隠しもあってそう言うと、二人は「そうですね」と言ってケーキを食べ始めた。「美味しい」と言いながら二人と食べるケーキはとても美味しく感じた。

 私はお飾りの王妃になりたくないと思ったが、政治的な理由でどうしてもなる必要があった。
 自分の立場に何度も絶望して苦しんで、それでもみんなのおかげで今、こんなに幸せを感じている。
 私が嬉しくて目に涙を溜めていると、背後から影がテーブルを覆った。
 影を振り返るとブラッドが立っていた。

「ブラッド……どうしたの?」

 私がブラッドに尋ねると、ブラッドが心配そうに言った。

「あなたが、泣いていたように思ってな……」

 ブラッドはどこかからか、私を見て泣いていると思ってすぐに様子を見に来てくれたようだった。
 私は目に涙を溜めたまま笑顔で答えた。

「スイーツがとても甘くて……美味しくて……幸せを感じてたの」

 嘘ではない。
 私は今、このス美味しいイーツをリリアやジーニアスと分けて、一緒に食べられることがとても嬉しいのだ。
 するとブラッドが、柔らかく微笑んだ。

「そうか……そんなに美味しいのか?」

 私はブラッドに向かって笑顔で答えた。

「ええ。美味しいわ。ブラッドも一つ食べてみたら?」

 ブラッドはあまり甘い物は食べていないように思うが、全く食べないわけではない。だが、今日はきっと食べていないだろう。今食べているケーキはどれもとても美味しいので、ブラッドにも『美味しい』を感じてほしいと思った。
 ブラッドは珍しく素直に「どれが美味しいんだ?」と聞いたので、「これは爽やかで優しい甘さでブラッドも気に入ると思うわ」と、今食べていたケーキを見せた。するとブラッドは、自然に私の手を取ると、私の美味しいと言ったケーキの残り一口をフォークを使って、私の手を握ったままブラッドの口元に運んでケーキをパクリと口に含んだ。

 は?
 ちょっと……ブラッド?!
 それ、私のケーキ……じゃなくて!!
 私のフォークで、私の手から食べた?!
 私は、状況がわからなくて困惑していると、ブラッドが私の耳元で囁くように言った。

「甘いな……」

 そうして、席を離れて行った。
 
「な……何……今の……」

 私は真っ赤になってブラッドの背中を見ていたのだった。





――――――――――――

番外編第二弾、お楽しみ頂けたでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

番外編第三弾も計画中です。
また本編のキリのいいところで、番外編をお届けしたいと思います。


明日からは、また本編に戻ります。
また、明日お会いできることを楽しみにしております。

たぬきち25番



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