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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還

お気に入り5000感謝SS

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※こちらは本編ではありません。
皆様への感謝を込めた番外編になりますので、気になる方だけお読み頂けると有難いです。



――舞台は、ベルン国の王太子に招待された夕食会。
本編ではさらりと流されてしまったパーティーの続きです。




【お気に入り5000感謝SS】

 ラウル&レイヴィン『さらなる高みへ』






どうぞ……。

――――――――――――
 



 ラウルとレイヴィンに手を取られると、レイヴィンが私の手を取ったまま首を傾けて私の顔を覗き込みながら言った。

「クローディア様。少し別室に移動しませんか? うちの陛下が、クローディア様の髪を撫でまわしたので、御髪が乱れてしまいました」

 そういえば、さっきレオンに頭を撫でられて、髪が乱れている。パーティー会場には身なりを簡単に整えることのできる部屋もあるので、もしかしたらそこに侍女がいるのかもしれない。

「わかったわ」

 私は、ラウルを見ながら言った。

「ラウルも来てくれる?」

 するとラウルはふわりと優しい笑顔で私の手の甲にキスをしながら答えてくれた。

「もちろんです、私も同行しますよ」
「ありがとう、ラウル」

 普段ならパーティー会場を出る場合は、アドラーかガルドかリリアに同行をお願いしているが、ラウルが同行してくれるなら問題ないだろう。
 私たちはパーティー会場のすぐ近くの部屋に入った。部屋には、髪を整えるための道具は揃っていたが、侍女はいなかった。

「侍女を呼びましょう」

 ラウルがベルで侍女を呼び出そうとすると、レイヴィンが止めた。

「いえ、侍女は呼ばなくて結構です」

 そう言って、レイヴィンが鏡台の上に置かれていた櫛を手に持ちながら決め顔で言った。

「うちの陛下が乱したのですから、私が責任をもってお直しいたします」

 えええ~~? レイヴィンが髪を直すの??

 私はレイヴィンが直してくれると聞いて不安と驚きに目を丸くしてレイヴィンを見つめた。だが、不安に思ったのはラウルも同じようで、慌てて声を上げた。 

「レイヴィン殿がですか?! いや、いくら個人的なパーティーと言えども、クローディア様の御髪を、レイヴィン殿が……直されるのは考え直した方がよいのでは?」

 レイヴィンは私に鏡台の前に座るように促すと、櫛を持って鋭い顔でラウルを見ながら言った。

「仕上がりが不満でしたら、どうぞお呼び下さい」

 そして、レイヴィンは鏡越しに真剣な顔で言った。

「クローディア様、どうか、私に任せて頂けませんか?」

 私は、レイヴィンのあまりに真剣な顔に「では……レイヴィン、お願いね」と頷いたのだった。







「美しい……」

 ラウルは鏡ではなく、私の斜め前に立ち完成した私の髪を見て呆然としながら呟いた。
 そして、レイヴィンに向かって困惑した表情で尋ねた。

「レイヴィン殿は……参謀になられる前は……何をされていたのですか?」

 あまりの完成度の高さに思わず聞きたくなる。それは私も同じ気持ちだ。レイヴィンは私の髪をサイドでまとめただけではなく、複雑な編み込みを駆使したハーフアップをしていた。こんなの公式な夜会でも充分通用するというか、注目されるレベルだ。完全にプロの仕事だ。
 私も完成した髪に見とれていると、レイヴィンがラウルの問いかけに答えた。

「私の前職は盗賊です」

 そうだったね、レイヴィンって、ガルドに壊滅された盗賊団の頭だったね?!

 私がレイヴィンの前職を思い出していると、レイヴィンが胸を張って答え、私を鏡越しに見ながら言った。
 
「クローディア様、いかがです?」

 私は鏡越しではなく、振り返ってレイヴィンを直接見ながら答えた。

「レイヴィン、凄いわ。ありがとう!!」

 するとレイヴィンがこれまで見たこともないような、少し困ったような顔で首元や顔を赤くしながら「そ、そんなに……喜んで貰えてよかった」と小声で答えた。

「レイヴィン殿、先程はすまなかった。こんなに美しくなるんて……クローディア様の良さを存分に引き立てていて……言葉にならないほど可憐だ……」

 ラウルの顔が少し赤くなっているように思えた。
 レイヴィンが頷きながら言った。

「ええ。以前より私はクローディア様のこの首元から鎖骨にかけての美しさに魅入っておりました。ガサツな陛下のおかげでクローディア様を私の好みに仕上げることが出来ました。本当はドレスや装飾品にもこだわって、私が選びたいほどです。クローディア様のさらなる魅力を追求したい!!」

 え?
 レイヴィンって、女の子を自分色に染めたい願望でもあるの??

「クローディア様の更なる魅力……ゴクリ……」

 ラウルが私を瞬きもせずに見ながら息を飲んだ。

 あれ? ラウルの顔、なんだか怖くない?
 え?
 
 ラウルの雰囲気が変った気がして、戸惑っていると、レイヴィンが頷きながら言った。

「そうです。今でも充分美しい彼女の新たな魅力を自分の手で発見し、更なる高みへと押し上げ、そしてその姿を見て絶賛する。これこそ、至高です!!」

 レイヴィンが、なんだか自分の世界に入って陶酔してる~~~!!
 これ、止めるべき?!

「クローディア様の新たな魅力の発見……素晴らしいですね!! レイヴィン殿」

 待って、ラウルまでレイヴィンと同意見なの?!

 私が意気投合する二人を見てどうしようかと思っていると、扉がノックされてリリアの声が聞こえた。

「クローディア様、いらっしゃいますか?」

 私はすぐに声を上げた。

「いるわよ~~~どうぞ~~」

 私の声でリリアとジーニアスが入って来た。二人は、「クローディア様、スイーツがたくさん並んでいますよ!! 行きましょう」と言いながら、私を呼びに来てくれた。

「クローディア様、髪型を変えたのですね。本当にクローディア様はどのようなお姿でもお美しいですね」

 ジーニアスが私を見ながらいつもの笑顔で言った。レイヴィンが「え? それだけですか?」と言って唖然としていた。

「本当に、素敵ですね」

 リリアが嬉しそうに微笑みながら言った。
 リリアとジーニアスは私の髪を見て褒めてくれた。そして、ジーニアスが私を椅子から立たせながら言った。

「クローディア様、さきほど少しだけパティシエの方がいらっしゃって、説明も聞いて参りましたので、私がご説明いたします!」

 ジーニアスが嬉しそうに言ったので、私も「うん。行きたい」と言った。
 するとリリアがラウルとレイヴィンに向かって言った。

「クローディア様は私がお連れします。付き添いありがとうございました。さぁ、クローディア様。行きましょう」

 ラウルとレイヴィンは何も言えずに、佇み私はリリアとジーニアスをスイーツを選びに向かったのだった。
 残されたラウルと、レイヴィンが唖然としていたが、私はスイーツの事で頭が一杯だったのだった。




――――――――――――



明日は、ガルド&レガード『青年の悩み相談』、
ヒューゴ&アンドリュー『感謝と願い』です。




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