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第三章 チームお飾りの王太子妃、隣国奪還

138.5 【戦闘シーン】

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※全て戦闘シーンです。
 読まなくても繋がりますので、興味のある方だけどうぞ。





 レイヴィンが夜の森を移動していたとは思えぬ速さで、西門に到着すると、門の見張りの兵はラウルの予想通り、二人だった。レイヴィンは、片方の見張りの兵の死角から近付き、剣を抜いて兵に向かって剣を振り上げた。
 レイヴィンの剣を受けた兵は地面に倒れたが、もう一人の兵が声を上げた。

「誰だ?! 近くに誰かいないか?!」

 もう一人の門番が叫んだ拍子に、近くに居た見回りの兵もレイヴィンに気づいて集まって来た。

「はは、誰だって……それに答えてくれた侵入者って……これまでいる?! 居たら、会いたい、か、も!!」

 レイヴィンは、もう一人の見張りの兵を剣を振り上げて、一撃で地面に倒すと、次に見張りの兵が三人で襲い掛かって来た。

「侵入者だ。捕らえろ!!」

 レイヴィンは、三人に向かって行きながら言った。

「そうだね~~。そっちのセリフの方が、誰だ、って言うより建設的かもね!!」

 レイヴィンは、襲い掛かってきた三人の内の一人を、今、持っている剣とは反対側の腰に差してある、もう一本の剣を抜いて払い飛ばして転ばせた。そしてもう片方の剣で、その頃ばせた兵に剣で衝撃を与えると兵は地面に倒れ込んだ。
 レイヴィンの両手には、それそれに剣が握られていた。レイヴィンの本来の戦いのスタイルは、短い剣を使った双剣使い、つまり二刀流だった。レイヴィンの利き手である左には、打撃力の高い分厚く強固な短剣が握られており、右手には切れ味の良い細身の短剣が握られていた。

「こいつ……双剣使いか……」

 残った見回りの兵が数歩下がり、レイヴィンを見ながら言った。
 レイヴィンは、舌で唇を舐め、口角を上げながら言った。

「ご明察」

 そう言うと、残りの二人が声を上げた。

「皆~~~!! 侵入者だ~~!!」

 すると裏口に居た兵や、室内に居た兵も集まってきた。その数は十人以上になりそうだった。
 レイヴィンは、数がこれ以上増える前に、終わらせることにした。

「お? 増えて来たか……じゃあ、行くよ?」

 レイヴィンは、残った見張りの兵を二人同時に双剣の右と左でそれぞれ攻撃した。
 左の剣で攻撃した方の兵が始めに地面に倒れた。
 そして、右の剣で攻撃した方の兵は、ヨロヨロと立っていた。そこを再び、左手の剣を振り下ろすと、立っていた方の兵もすぐに地面に倒れた。
 その後、集まってきた兵たちも、同じように次々を倒して行った。
 双剣使いで動きの速いレイヴィンには、迂闊に近づくことが出来ない。
 レイヴィンの剣は、まるで隙がない。

 気が付くとレイヴィンの周りには多くの兵が倒れていた。
 だが、またしてもこちらに向かって来る兵に向かってレイヴィンは低い声で言った。

「君たち、訓練サボってるでしょ? 動きにキレがないんだけど……こんな剣、わが軍だったら……兵とも名乗れないよ?」

 レイヴィンに近づいて来た兵士が、次々に倒れて行くので恐れた兵が、その場を走り出した。

「こいつ……強い……更なる応援を……」

 一人の兵が走り出したのを見たレイヴィンは、先ほどよりもさらに低い声を上げた。

「……逃がさないってっ!!」

 レイヴィンは、逃げようとした兵に、片方の袖口から飛び道具を出して、思いっきり投げた。
 レイヴィンの放った飛び道具は、逃げようとした兵の袖口と木に刺さり、兵は恐怖で腰が抜けて、袖口を木に止められたまましゃがみこみ動けなくなった。
 レイヴィンは、自分を囲んでいた兵を地面に倒すと、逃げようとした兵を見下ろしながら行った。

「俺に背中向けると、君……死ぬよ?」

 レイヴィンは、冷たい瞳で見下ろした後に、剣で逃げようとした兵を気絶させた。
 それからもレイヴィンは、次々に襲って来る兵を双剣で倒した。
 いつしかレイヴィンの周りには、兵が多く倒れていた。

 しばらくして新たな兵が途絶えた頃。レイヴィンの周りには三十人程の兵が倒れていた。
 
「さてと、捕獲、捕獲……」

 レイヴィンは慣れた手付きで、気絶している彼らを縛ると、目立たないように、屋敷内の木の影に兵を隠した。

「よし。これでいい。さてと、屋敷内に向かおう」

 レイヴィンは、意気揚々と屋敷内に入ったのだった。






 レイヴィンと別れて、百数えたガルドは静かに東門に近付くと、門の見張りの兵は二人だった。
 ガルドは二人に認識される前に、死角から気配を絶って近づき、剣でほとんど同時に二人の意識を失わせた。その剣はまるで風のようで、倒れた兵士はガルドの顔さえ認識出来ていなかった。
 ガルドは二人を縛ると、両肩に二人を担いで門の中に運び入れて、外から見えないようにした。
 それからガルドは、大きな笛を吹いて応援を呼ぶ、警笛兵を見つけた。
 別の場所から応援を呼ばれては、面倒なので、ガルドはこの男も認識される前に素早く剣を抜き意識を失わせると、笛を足で踏んで壊した。
 そしてこの兵士も縛ると、再び歩きだした。

 ガルドが屋敷の入り口まで歩いたが、見回りの兵はほとんど居なかった。不思議に思うと、遠くから声が聞こえた。どうやら外の見張りの兵の大半が、レイヴィンの方に行ったようだった。

 ガルドは、難なく屋敷の中に入ると、兵士に声を上げられる前に、次々に剣で意識を失わせて縛って進んで行った。さらに一階の奥から数十人の陽気な声が聞こえた。

 どうやらここは、交代の兵の待機場所なのかもしれない。
 ガルドが中に入ると、数人がガルドを見た。

「お~どうした……誰だ?」

 待機していた兵は、見知らぬ男の登場に戸惑っていたが、ガルドは「休憩のところ申し訳ございません」と言うと、いつものように軽やかな足取りで、兵たちを倒していく。

「敵か?!」

 ガルドをようやく認識して、剣を抜いた者たちも、次々に床に倒れていった。全ての者を縄で縛って、奥の部屋を開けると、三段ベッドがずらりと並ぶ部屋だった。まだ寝てる者はいないようで、ガルドは再び見張りの兵の待機場を見渡した。

「二十か……いい読みだな」

 レイヴィンが言った通り、待機場には二十ほどがいた。
 これで少なくとも明日の朝までは誰も来ないだろう。

 そして、ガルドは見張り兵の待機場だった部屋を出た。
 その後も、特に大きな騒ぎになることもなく、二階に上がり、兵士に出会ったらその都度、倒して進んでいたら、重厚な扉の前に着いた。
 扉の前には見張り兵が二人。

 恐らくここにベルン国の国王か、王妃が捕えられているだろう。

 ガルドは、素早くその部屋に近づき、見張り兵に声を上げることも、剣を抜かせることもなく、高速な剣技で見張りの廊下に倒した。一瞬、甲冑と剣の交わる金属音が響いたが、その音に反応する者はいなかった。
 ガルドは、倒れた兵を縛り終えると、周辺を確認した。
 どうやら、すでに二階部分には兵はいないようだった。
 それに、ここ以外に見張りの立っている部屋もなかった。

 ガルドはこの部屋に、国王も王妃も捕えられていると確信した。
 もし、ここに王族が居た場合、ガルドがいきなり踏み込むのは得策ではない。
 人質に取られたり、傷つけられては大問題だ。

 ガルドは、少しだけ考えて、コンコンと扉をノックした。
 すると中から「どうした?」と声が聞こえた。
 ガルドが、その声に何も答えないでいると、しばらくして扉が開いて、兵士が出て来た。ガルドは出て来た兵士を、一撃で気絶させると縄で縛った。そして再びコンコンとノックすると、またしても「なんだ!!」と少し苛立った様子で、中から兵が出て来た。
 ガルドはその兵も一撃で気絶させると、縄で縛ると再びノックをしたのだった。







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