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アイク ルート(先生ルート)
おまけ:変調シンデレラ
しおりを挟むこれより、王立学園の遊戯会特別公演、有志による演劇を上演いたします。
どうぞ、ごゆっくりとご覧くださいませ。
それでは『変調シンデレラ』です。どうぞ……
ダイアンのナレーションで舞台の幕が開く。
舞台にはシンデレラの父アイク、そして彼の腕に腕を絡ませて身を寄せる女性、義母フォルトナ。そして二人の前に立つ青年ダイアン。三人はシンデレラクレアの前に立った。
そして、シンデレラの父がシンデレラに向かって言った。
「シンデレラ、この人が新しいお母さんだよ。どうだい? 綺麗な人だろう? 私はこの人のことがとても好きなんだ。愛しているんだ。ずっとずっと一緒にいたいと思っている。どうか仲良くしてくれ」
継母フォルトナは扇を広げながら言った。
「シンデレラ、私のことは今日からお母さんと呼んで頂戴」
父アイクは陶酔するように継母フォルトナを見ながら言った。
「ああ、本当に美しい人と結婚出来て幸せだな」
「私もですわ」
見つめ合い二人の世界が出来上がっている横で、義兄ダイアンが言った。
「私もいますが……今日から私が兄になる。基本、私の言うことを聞くように」
そしてシンデレラクレアが礼をした後に言った。
「はい。お母様、お兄様。どうぞよろしくお願いいたします」
そして場面は変わり、シンデレラは床を掃除していた。
そこに兄ダイアンが現れて言った。
「シンデレラ、今日はお城で舞踏会がある。だが、お前が誰かに見染められて、家からいなくなっては私は一人であの二人のイチャイチャする空間に耐えなければならない。そんなのはつらい。しばらく家にいるように」
シンデレラは言った。
「……なるほど……」
兄がいなくなり、掃除を続けるシンデレラの前に魔法使いコルネリウスが現れた。
「何をしている、早くパーティーに行け!!」
「ええ? なぜですか?」
「……大人の事情だが……聞きたいのか?」
「いえ……行ってきます。ですが……ドレスや靴も何もありません」
「心配するな!!」
魔法使いコルネリウスは「いいか? いくぞ」と言うと、シンデレラクレアのローブを剥ぎ取った。
「まぁ、素敵!!」
「よし、成功した。ではこれが靴で、馬車は呼んでおいた。そうだ、9時には戻れよ。義母が心配するからな」
「はい!!」
そして魔法使いコルネリウスは去って行った。
シンデレラクレアは、靴を履き替えると馬車に乗ったのだった。
そしてゆっくりと幕が下りたのだった。
◇
再び幕が上がると、シンデレラクレアはお城のパーティーにいた。
「ここが舞踏会なのね……誰か踊ってくれるかしら?」
シンデレラの言葉を聞いた騎士ルジェクが声を上げた。
「ダンスがしたいのですね。ぜひ踊りましょう、ところで腕前は?」
「ありがとうございます、一通り踊れますわ」
シンデレラクレアの言葉に騎士ルジェクが眉を上げた。
「ほう、ではこれも踊れますかな?」
ホールに流れていたのはとても難解な曲で、ホールにはほとんど踊っている人はいなかった。
シンデレラクレアはにっこりと微笑んだ。
「もちろんですわ!!」
「では、お手をどうぞ」
シンデレラクレアは騎士ルジェクの手を取って、招待客が本気で引くほど高度なステップを連発した。
二人のガチダンスを見て、一般人は震えていたが、一人喜んでいる人がいた。
王子カイルだった。
王子は目を輝かせながら言った。
「今、踊っている方は誰だ!? なんて素晴らしい身体能力だ!! ぜひ妻に!!」
ダンスが終わり、シンデレラクレアと騎士ルジェクは「ありがとうございました!!」とまるで戦いの後のような熱い握手をした。
「今度は私と……」
王子カイルがシンデレラクレアに近づこうとした時だった。
会場に鐘の音が聞こえた。
「いけない!! 9時になってしまったわ。フォルトナ義母様が心配するわ、帰らなきゃ!!」
シンデレラクレアは、階段を駆け下りる時に靴が片方脱げてしまった。
「いけない!!」
戻ろうとしたが、誰かが追って来た。
「待ってくれ!!」
「大変、うっかり高貴な人に掴まったら長くなるわ!!」
シンデレラクレアは靴を片方あきらめて、馬車に乗り込み家に戻ったのだった。
そしてゆっくりと幕が下りたのだった。
◇
再び幕が上がると、場面はシンデレラクレアの自宅だった。
「シンデレラ、こっちの服とこっちの服はどっちがいいかしら?」
「そうですね~~継母様ならどちらも似合います」
「そんなこと言わないで、お揃いで着ましょうよ……」
「え!? 私と!? そうですね~~どっちでしょうか? 悩みます」
シンデレラクレアは継母フォルトナと一緒に服を選んでいた。
「女性が服を選ぶと長いな……」
兄ダイアンがうんざりしていると、誰かが訪ねて来た。
「はい」
服に夢中な二人は置いて、兄ダイアンは扉を開けた。
「これは、騎士様、どうされました?」
「私は、先日の舞踏会で高度なダンスを踊った令嬢を探しています」
騎士ルジェクは、家に入ろうとすると、そこに魔法使いコルネリウスがシンデレラと共に現れた。
「騎士殿、ほら、シンデレラを連れて行くのだろう?」
騎士ルジェクの背中を押しながら言った。
「あ、ああ。シンデレラ行こう!!」
「……はぁ、フォルトナを見られなくてよかった……」
こうして、シンデレラクレアはお城に行って王子カイルと幸せに暮らしました。
めでたしめでたし……?
皆様、本日はご覧頂き誠にありがとうございました。
出演者全員、しばらく舞台下に立っておりますのでその間にお声がけ下さい。
握手なども受け付けます。
しかし命の危険があるため、決して『フォルトナ様』にはお手を触れないようにお願い致します。
なお、遊戯会はまだまだ続きますのでゆっくりとお楽しみ下さい。
ダイアンのナレーションで演劇は幕を閉じたのだった。
――――――――――
最後までお読み頂きまして、本当にありがとうございました!!
またどこかで皆様にお会いできますことを楽しみにしております!!
たぬきち25番
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