悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番

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コルネリウス ルート(兄ルート)

Ⅲ 貴族は優雅にごあいさつ(1)

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 発光しているかの如く輝く推しルジェク王子と、リオン王子が2人で祭壇に並ぶとかなり迫力がある。
 私と兄は、2人からはかなり離れた場所にいたにも関わらず、2人の王子と目が合って微笑まれた。
 私は王子殿下たちに笑顔を作りながら、兄の方を向かずに小声で言った。

「兄上……私、やっぱりあいさつに行った方がいいですか?」

 すると兄は前を向いたまま表情を崩さずに、小声で答えた。

「……私も……会わせたくはないが……こればかりは避けられない。……心配だが……今日は殿下たちが主催だ。次から次へと人々があいさつに来る。私たちに、あまり時間を取られることはないはずだ」

 確かに、王子殿下主催の夜会なら、2人は様々な人たちにあいさつをする必要がある。
 ほとんどあの場から動けないだろう。

「それもそうですね……」
「そうだ」

 私はほっとしながら、夜会で普段より気合の入った殿下たちを見ていたのだった。

☆==☆==☆==

「では、皆、今宵は楽しんでくれ!」

 推しのルジェク王子の言葉で、2人の王子の話が終わり、夜会が幕を開けた。私たちはまず、ルジェク王子にあいさつに行った。

「ルジェク王子殿下、ごきげんよう。本日はお招きありがとうございます」
「ルジェク王子殿下、お招き頂きありがとうございます」

 私があいさつをした後に、兄が殿下にあいさつをすると、ルジェク王子がまるで大型犬のように嬉しそうな顔をしながら言った。

「フォルトナ!! 今日も美しいな! 来てくれて嬉しい。ああ、フォルトナと会うのも久しぶりな気がするな。後で私と2人で……」

 夜会での推しの破壊力は抜群だった。本気でイケメンだ。顔が整い過ぎていて、近付かれると気持ち悪くなるくらい今日のルジェク王子殿下は美しい。

(カッコよさにお酒飲んでないけど、酔いそう……)

 私がルジェク王子殿下のイケメン度合にたじろいでいると、兄が慌てて、ルジェク王子殿下に話かけた。

「ゴホン!! ルジェク王子殿下。先日の議会でのことですが、先方に話を通しておきました」
「そうか!! だが、随分と早かったな!!」

 ルジェク王子はすぐに兄の話に乗ってきた。

 と言うのも……今、ルジェク王子殿下は、私とリオン王子殿下のダンスに乱入した件で、陛下から叱責を受けて、様々な課題を与えられているのだ。

 その課題というは――政務や社交などの分野のいわゆる面倒事を片付けるということだった。

 兄は、ルジェク王子殿下から泣き付かれて、ルジェク王子殿下の課題解決に手を貸しているのだ。
 まぁ、兄としても何か思惑があってルジェク王子殿下に手を貸しているようだが、きっと公爵家のことだろうから、私には兄の思惑まではわからない……。

 そういう訳で、ルジェク王子も、兄から課題の話題を振られれば無視はできないのだ。

「コルネリウス。その件に関しては、すでに終わりが見えていると考えてよいのか?」
「いえ。まだ数人に根回しが必要ですので、その辺りをもう少し………」

 私は、深刻そうに話をしている兄と、ルジェク王子をすぐ近くにまるで置物になった気分で立っていた。

(シャンデリア………大きいな……3メートルはさすがにない? いや……あるかも?)

 会場内のシャンデリアは、かなりの存在感があり、これだけ着飾った貴族がたくさんいるにも関わらずその大きさと明るさを誇示していた。

「それでは、殿下。後ほど……」
「ああ、フォルトナ! 絶対にまた後で話をしよう」

 私が現実感のまるでない豪華なシャンデリアに見とれているうちに、兄とルジェク王子の話は終わったようで、私と兄は「え、ええ」と曖昧に答えて、そそくさとルジェク王子殿下の側を離れた。
 振り向くと、すでにルジェク王子殿下の周りには人だかりができていたのだった。

「フォルトナ、次はリオン王子殿下にあいさつに行こうか」
「ええ」

 兄はそう言って、私の手を取って優雅に歩きながら、次の王子であるリオン王子の元にあいさつに向かったのだった。





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