転生令嬢は最強の侍女!

キノン

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15.兄上からの手紙

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 レティシアが15歳になり数ヶ月が経つが、今だに王宮から手紙が届かない。
 シナリオ通りなら、今頃届いても良い時期なのだけれど、寧ろこのまま手紙なんて届かずに、第一王子殿下はこのまま適当にレティシア以外の他の誰かとくっ付いてくれれば、なお良い。
 そんな期待も虚しく、ルドウェル兄上から手紙が届いた。
《今度、第一王子の花嫁を決める為に、国中の花嫁候補達が集められ、後宮で一年間暮らしながら、第一王子に見合う者を花嫁に選ぶ話が出ている。その花嫁候補に、レティシアが選ばれてしまった。レイリー様が侯爵家であり、財務官長なので立場上から断れない。まだ花嫁候補達には手紙は届いていないが、ほぼ決定に近い。花嫁候補に選ばれた者は、侍女や従者を数名連れて行っても良いとの事だ》
 やっぱり、シナリオは簡単には変えられないのね。
 ルドウェル兄上から送られて来た手紙には、花嫁候補の話が簡単に書かれたいた。
 日取りはまだ決まっていないのだろう。ルドウェル兄上が今分かっている事だけを書いてくれているなら、手紙の最後の文面は私の性格を考えての事かな?もう私がレティシアに着いて行く前提で教えてくれてるよね?
 兄上達同様、私もレティシアが大好きだからね。
 私が花嫁候補に選ばれていたとしても、父上や兄上、伯父上も全力で止めてくれるだろう。だけど、確実に侯爵家で身分が高く、王宮勤めをしている伯父上の娘であるレティシアが選ばれるのは目に見えている。然も、伯父上はかなりの重役だから下手に断る事が出来ない。
 そうなって来ると、必然的にレティシアの侍女として付いて行くのは、私とユラだろう。
 ユラは確実に決定だとしても、私は止められる可能性があるのよね。
 まっ、止められても行くけどね。
 さて、いつ日が決定するか分からないからね。悠長にしていられない。今の内に、ユラに報告してエイミーとディールにも手伝って貰って、準備しなくちゃ。
 早速、私はユラとディールを部屋に呼んだ。丁度、レティシアが泊まりに来ていたので、ユラは直ぐに来てくれた。
 その間は、エイミーにレティシアの護衛兼侍女をお願いした。

「早速、本題なのだけれど」
「ある程度の話は聞いております。レティシアお嬢様が行くのであれば、私は確実に専属侍女として、ご一緒に登城致します」
「ユラはそれで良いのだけれどね?私もレティシアの侍女として行こうと思っているのよ」
「えええええ!!!」
 ユラとディールは、既に話を聞いて居たのか、ユラに至ってはもう着いて行く予定の様だった。
 私も一緒に行くと伝えると、ユラは分かってたかの様に案外冷静だったけれど、ディールに至っては驚き過ぎて煩かった。

「ディール、煩いわ」
「正気ですか、お嬢様!!お嬢様のお嫌いな王都でそれも一年間、自由のない後宮ですよ?」
「そうですよ。ディールさんの仰る通り、後宮では日々の日課である筋トレ、剣術、その他等が出来なくなってしまいますよ。淑女として慎ましく、日々を過ごさなくてはいけません。常日頃から走り回っているお嬢様にはあの空間は耐えられないかと」
 そうなのよね。
 後宮へ行けば最後、滅多な事がない限り外へ出る事は許されない。後宮では、殆どレティシアと行動を共にする為、自由な時間は限られている。
 年中身体を鍛えている私にとって、後宮での一年は地獄でしかない。
 私はそれを打破する為にいろいろ考えているのよっ!筋トレ出来ない日々を過ごす気なんて更々ない。

「分かっているわ。でも、これもレティシアの為だと思えば、これくらい我慢出来る。例え、ユラが居たとしても後宮で何が起こるか分からないじゃない。只でさえ、レティシアは可愛いのだから、もし万が一の事を考えると、私も一緒に行く方が良いと思ってね」
 ユラ達の前では、大人しくしてますよアピールしておかないとね。

「まあ、お嬢様とユラが居れば、レティシアを外敵から確実にお守りする事が出来ますしね。向かうとこ敵なしですから」
「何を納得しているのですか、ディールさん」
「あははーーー…」
「まあ、ユラが何と言おうと私は行くからね!寧ろ、レティシアだって一緒に来て欲しいと言うに決まっているもの」
 ディールが納得して頷くと、すかさずユラがディールに突っ込みを入れていた。

「はぁ、分かりました。それで、お嬢様。此処に私とディールさんを呼んだのは、その話だけの為ではありませんよね?」
「え?そうなのですか?」
「そうよ。その為に二人を呼んだのだから。遠い国の言葉で、備えあれば憂いなしという言葉があってね。普段から準備をしておけば、いざというとき何も心配がないって意味なのだけれど、後宮へ登城するにあたって、いろいろと今から準備をしようと思っているの」
 乙女ゲームのシナリオが始まった時の為に、前世の知識をフル活用して、いろいろ考えていたら、日本にいた時の言葉を思い出したのよね。備えあれば憂いなし!やっぱり、心配ないのが一番だもの。

「準備とは?」
「嫌な予感しかしません」
「まず、私とユラの新しい侍女の衣服を作ろうと思っているの。侍女の衣服は、花嫁候補より目立たない物としか、決められてないらしいから、別にユラの着ている侍女の衣服でも良いのだけれど、いざって時にもう少し動きやすい物を作ろうと思ってね」
「はぁ。では、早速仕立て屋の手配を致します。レティシアお嬢様のドレスも新しく新調致しますので、早急に手配して参ります」
 ユラはとうとう諦めてくれたのか、早速仕立て屋の手配をする為に部屋から出て行くと、部屋に残ったのは私とディールの二人だけになった。
 私はディールの方を見てニッコリと微笑むと、ディールは引き攣った顔をしていた。 

「あとは武器ね、ディール」
「えっ?俺ですか!?」
「ええ、武器は持ち込み禁止らしいから、目立たない武器をいろいろと作ろうと思ってて、ローレンス領地にいる鍛冶屋の主人を呼んで来て欲しいの。大体の案はもう決めてあるから」
「早い…か、畏まりました」
 一応、持ち物検査があるみたいで、まあ武器類は後から陰の者に持って来てもらえばいいし、武器を隠しておく所も大体確保出来るだろうから問題ないのだけれど、やっぱり最低限は手元にある方が安心出来る。なので、新しく作る事にした。と言っても、大きな物はバレてしまうので化粧品やアクセサリーなど身に付けられる物にしようと考えた。
 ディールも早速、領地にいる鍛冶屋に当たってみると言って部屋を後にした。
 ちなみに、ローレンス領地にいる鍛冶屋は、陰の者で主に暗器などを中心に作っているらしいから、頼もしいね。期待が膨らむわ。
 誰も居なくなった部屋で、私は机の引き出しから紙とペンを取り出して、準備に取り掛かった。


***


「レティのドレスは、華やかにーーー…でも、あまり派手過ぎずにレティの髪と目の色に合うものを普段着と正装用に何着か作って頂戴。あの子、またドレスを作る時は私にデザイン全てを任せると言っていたから」
「畏まりました。では、リディアお嬢様から頂いたドレスのデザイン画を元に作っていきます」
 次の日、早速ローレンス家御用達の仕立て屋が来てくれて、レティシアのドレスと私とユラの侍女服の製作に取り掛かった。
 私の注文に仕立て屋はメモを取りながら、真剣な表情で話を聞いていた。
 今回もレティシアのドレスは、私がデザインしている。
 前回のドレスをレティシアは余程気に入ってくれたみたいで、またドレスを作る時は私にお願いすると言って来たのだ。
 勿論、可愛いレティシアの為だから断る理由もない。

「あと、私とユラの侍女服なのだけれど、このデザインでお願いね。分からない事があれば聞いてくれて構わないから」
「はい。畏まりました。それでは、すぐに作業に取り掛かります」
「ありがとう」
「はい。では、失礼致します」
 私とユラの侍女服は悩みに悩んでしまった。やっぱりスカートは着脱式にしたいし、私が持っているドレスみたいに外したスカートをマントに出来る様にしたい。
 暗器も沢山収納出来る様にしてと、あれもこれもと色々と考えていたら、珍しく夜更かししてしまった。
 仕立て屋が帰った後、レティシアが私の部屋にやって来て、何をしているか尋ねて来たので、適当に「レティシアの新しいドレスの案が浮かんで、忘れない内に作ってもらおうと思って、仕立て屋を呼んでいたのよ」って言ったら、飛び跳ねて喜んでくれました。可愛い。
 まあ、騙してる訳じゃないからね?ドレスの案は前から浮かんでいたのは本当の事だから。
 こうして、私は着実に準備を進めて行き、いつしか邸中の使用人達も協力してくれていて、思ったより早く事が進んで行った。
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