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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(37)バイセクシャル。
しおりを挟む村椿和樹がリング上からNOZOMIに対する思いを告白したことは大変な話題になった。それが、壮絶な戦いの末、倒された直後だっただけに、尚更、村椿和樹の熱い思いが伝わった。
“ 殺したいほど愛している”
そんな物騒な言葉が流行語になりそうなほどだった。
正直、NOZOMIにしても嬉しくないはずがない。あれだけストレートに愛を告白されたことは初めてだった。
美形で有名なNOZOMIは、中学、高校とラブレターをもらうことも少なくはなかった。しかし、それは同性からのもので愛というより憧れの対象でありファンレターのようなもの。
モデルもやっているNOZOMIはその手のファンは全国に大勢いる。
これだけ美しいNOZOMIなのに、異性から愛を告白されることのなかった理由は、彼女があまりにも美しかったからだろう。その美しきに男性は恐れをなし近付いてさえこない。
しかも、NOZOMIは強いのだから...。
村椿和樹は「こんな、女に倒されるような弱い男がNOZOMIに告白しても無理だけど」なんて言ってたけど、そんなことはない。NOZOMIの恋愛観に強い男も弱い男も関係ない。
恋愛観?
(私は恋については何も知らない...)
村椿和樹からの求愛は心を揺り動かされ嬉しくはあったけど、どうしてもそれに応えられない理由があった。
好き???な相手がいるからだ。
NOZOMIの恋愛対象は男性でも女性でもない。所謂、彼女はバイセクシャルであり現在の相手は同性なのだ。
ピンポーン!
部屋のチャイムが鳴った。
NOZOMIは解錠すると声をかけた。
「シルヴィア、入りなさい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
年が明けると正月も3日になった。
堂島兄妹は兄龍太はこの春から高校生になり、妹麻美は中学生になる。
麻美はこの一年間でまた成長すると、
身長も166cmに達し、レスリングや空手で鍛えられ身体も精悍さが増してきた。しかし、この頃は反抗期なのか?
粗暴になってきたようでもある。
男子と取っ組み合いをして、泣かすこともしばしばだった。
この元旦。
母と今井が結婚すると知らされた。
麻美には今井が自分の父親になることが受け入れられない。
(私のお父さんは源太郎だけなの...)
麻美には「NLFS」に入校することは許してくれないのに、自分は好きな男と一緒になりたいだなんて勝手だ。
それ以来、母とは口を利いていない。
そんな反抗的な麻美に兄の龍太が叱りつけてきたので言い合いになった。
兄は母と今井のことには理解があり、母の幸せを祝ってあげようと言う。
「お兄ちゃんはパパがかわいそうだと思わないの? 裏切るの?」
「そんなことはない!お父さんはもういないんだ。お父さんだって、お母さんの幸福を願ってるはずさ...」
麻美はあまりにも悲しかったので、プイと家を飛び出してきた。
清美ちゃんの家に遊びに行った。
彼女とは小学校入学以来からの友達で親友と言ってもいい間柄だ。
清美ちゃんの家は、その母親が離婚して新しい父親(継父)とは当然血が繋がっていない複雑な家庭なのだ。
(自分の母が今井と結婚すると、この家と同じになるんだわ...)
両親は二人とも出かけて不在ということで、麻美はそのリビングで、清美ちゃんと小学校生活の思い出、中学生活への期待等楽しくお喋りしていた。
すると、玄関の方でガサゴソ音がしたようだ。誰か帰ってきたのか?
「お~~い、清美、帰ったぞ!」
パチンコに出かけているはずの清美ちゃんのお父さんだった。
幾分酔っているように見える。
清美ちゃんはそんな継父をビクビクしながら見ている。怖がっているのは明らかだった。
「お! 友達か? ずいぶん大きいな。大人の女かと思ったよ。おねえちゃん、将来美人になるよ。ワハハ!」
麻美は何度かこの男を見ている。唾棄したいほど嫌な奴。清美ちゃんも日頃から暴力、セクハラを受け実の母もそれを見ても見ぬふりをするらしい?
(清美ちゃん、なんてかわいそうなの)
麻美はこの男の嫌な視線を感じた。
この目は良からぬことを考えている目だ。エッチなこと? まだ小学生であってもそのぐらいのことは分かる。
「清美ちゃん、外へ行って遊ばない?
何処か楽しいところあるかな?」
清美ちゃんの継父の目が光った。
「ここでお話しでもして遊んでいけばいいだろ? おねえちゃん...」
男はそう言うと麻美の花柄ワンピースの中の脚に触れた。
酒臭い匂いが不快でたまらない。
カーッと頭に血が上った麻美が立ち上がろうとした時だ。
「お父さん! 麻美ちゃんになんてことするの? やめてよ!」
清美ちゃんが、涙目になりながら継父に抗議した。
「なんだと! 子どものくせに生意気だな。親に向かって説教しようっていうのか? このおねえちゃんがあまりにもかわいいんで、ちょっと触っただけだろう? 大人に逆らうんじゃねえ!」
男はそう言うと清美ちゃんの頬を数発張ると髪を引っ張った。
鬼畜だと麻美は思った。
「おじさん、清美ちゃんを虐めるのはやめなよ。かわいい自分の娘なんでしょ? それって虐待だよ 」
男はキョトンとした表情で麻美を見ていたが、その顔が怒りでみるみる赤くなり立ち上がった。
麻美も立ち上がり二人は対峙した。
「まだ子どものくせに、そんなスケベそうな丈の短いワンピースなんか着ちゃって、将来が思いやられるな」
男は麻美に近寄りその頭を小突いた。
麻美は小学生女子ながら身長166もあり、おそらく170そこそこであろう男とそんなに身長差はなさそうだ。
それでも37才の男であり、その顔つきは血の気が多そうでコワモテだ。
頭を小突かれた麻美は、即座に男の左太腿にローキックを叩き込んだ。
男は太腿を抑えソファーに倒れ込みしばらく苦痛に耐えていた。
「清美!お前の友達はなんて不良娘なんだ。大人の男を蹴るなんて...」
男は麻美の方に向き直ると、その顔が怒りに満ち震えている。尋常ではない凶暴そうな顔で近寄ってきた。
身の危険を感じる。
「大の男にこんなことをしやがって、ただじゃ済まさないぞ。これから、おじさんがお仕置きしてやる」
ドスッ!
麻美は迫ってきた男の腹部に正拳突きをかました。男は苦しそうにその場に膝を着いた。
「お父さんも、麻美ちゃんも、どっちもケンカはやめて!」
清美ちゃんが泣きながら叫んでいる。
腹部を抑えて屈んでいた男が立ち上がると麻美に飛びかかってきた。
継子とはいえ、娘の前で小学生の女の子に受けた屈辱で怒りに震えている。
男は麻美がレスリングや空手をやっていることを知らないのだ。
清美ちゃんが暴れようとする継父の腰にしがみつき止めようとした。男は振り返るとグーパンチで娘の顔を殴打した。後方に倒れた清美ちゃんは口を切ったのか? 血が滲んでいる。
麻美はキレた。完全にキレた。
男の下半身に狙いを定め組み付くと、そのまま男の身体を肩に担いだ。男は小学生女子に担がれ足をジタバタさせている。その暴れっぷりがあまりに激しいので、この狭いリビングでは危険と判断、男を担いだままやや広い隣の和室に運んだ。
清美ちゃんが泣きながら追ってくる。
麻美は男を畳の上に放り投げると、その上に飛び乗り馬乗りになった。そして、男の両手首を取るとそれを畳に押し付けた。37才の男が、ワンピース姿の小学生女子に馬乗りになられ、両手首を畳に押し付けられ完全に組み伏せられたかっこうは何とも哀れである。
麻美は母と今井のこともあり、ムシャクシャしていた。継父?... 目の前の男が一瞬今井に見えた。
勿論、麻美とてこの男が今井とは全然タイプの違う人間であることは分かっている。今井宗平はとてもやさしく信用出来る人間なのだ。
それでも、釈然としないものがある。
男は小学生の女の子にやられているのが悔しいのか、恥ずかしいのか?幾分涙を流しているようだが、それでも必死に暴れ下から唾を吐きかけてきた。
その異臭に麻美は冷静さを失った。
男の顔面に拳を叩きつけた。
無意識に目と鼻は避けたが、その拳で右頬と左頬を一発ずつ殴打した。
男は口から血を吐いた。
麻美は男の左頬に自分の右拳を当て、そのまま男の顔を畳にグリグリと押し付けた。男は抵抗しなくなった。
「やめてー、やめてー!」
そう叫んでいる清美ちゃんの背後の襖がススーッと開いた。
麻美も顔を知る、清美ちゃんの母親が入ってくると呆然と立ち尽くす。
清美ちゃんの母親からすれば、自分の夫がワンピース姿の小学生女子に馬乗りに組み伏せられ口から血を流しているのだからどんなに驚いたことか? しかも、女の子は娘の同級生なのだ。
どうなる?
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